★9−1★
打ち上げ。『愛はダイヤ』をどつきながら、歌うすみれとカンナ。『えんかいくん』を操作する紅蘭。扇子で踊る『えんかいくん』。喜ぶさくら、アイリス、三人娘。酒を飲む大神とマリア。
「初日はどうなることかと思ったけど、西遊記も大好評で千秋楽か…!これも皆の努力の賜物だな」
「えぇ。でも、ほどほどにしないと明日に差し支えます」
「相変わらずかってぇなぁ、マリアは」
「打ち上げは楽しくなきゃあかん!遠慮せんとパーッといきまひょー!!」
大食いするカンナ。皿回しする紅蘭に盛り上がる一同。ため息のマリア。
「まぁまぁ。今夜ぐらいいいじゃないか」
「…治において乱を忘れず」
「〜〜う…!」
「ふふ、冗談です。でも、確かにそうですね。こうやって皆で騒いでいると、戦いのさなかだなんて嘘みたいです…」
「あぁ。君も本当に楽しそうだね。よかったよ」
「え?〜〜そ、それはその…!今は隊長と一緒ですから、余計に…」
真っ赤で大神を見つめるマリア。大神に抱きつくすみれ。
「少尉ぃ〜ん」
「〜〜うわ!酒くさっ…!」
「〜〜あなた、お酒飲んだの!?まだ未成年でしょう!?」
「んふふ〜!だぁって今夜は楽し〜い打ち上げですものぉ!」
ウォッカの瓶を持つすみれ。
「ウォッカ…!?しかもこんな度の高い…」
「ちょっと誰!?お酒なんか買ってきたの!?」
「マリアさんでしょ?支配人の為に買ってこいって」
「う…!そ、そうだけど、ウォッカまで買えなんて言ってないわよ…!?」
「私が注文したんですぅ。ウォッカってロシアのお酒なんですよね?ふふっ、マリアさんに喜んでもらえるかなぁと思って…!」
マリアに甘える椿。ビビるマリア。
「〜〜つ、椿!!あなたも飲んでるわね!?」
「いやですねぇ、私は一滴も飲んでませんよぉ…?それよりマリアさぁん、この後、お部屋に行ってもいいですかぁ…?」
顔が引きつるマリア。
「〜〜な、何だかお邪魔みたいだね…」
「〜〜た、隊長っ!!待って下さい!!〜〜裏切り者ぉっ!!」
マリアにキスしようとする椿。移動する大神。引きずられるすみれ。
「〜〜す、すみれ君、重いんだけど…」
「いや〜ん、少尉ぃ〜…」
「――大神さん!」
「〜〜ふぎゃっ!!」
取り皿を持ってきて、すみれの背中を踏むさくら。
「あ、すみれさんもご一緒だったんですか!このボルシチっていうお料理、とってもおいしいですよ!」
「どれどれ…?――お!本当だ!」
「マリアさんが作って下さったんです。すみれさんもいかがですか?」
さくらを睨むすみれ。ビビるさくら。
「な…、何か怒ってます?〜〜怒ってますよねぇ…?」
「……おかげで酔いが覚めましたわ。失礼!」
出ていくすみれ。
「すみれさんが作ったあんかけお煎餅をよけたからでしょうか…!?」
「〜〜あれはドリアですっ!!」
戻ってきて、出口から叫び、また出ていくすみれ。
「……俺もぬれせんかと思った…」
「――まったく、失礼にも程がありますわ!」
廊下で前回の戦闘のさくらを思い出すすみれ。立ち止まり、唇を噛む。
(〜〜あんな田舎娘にあれ程の力があったなんて…)
「……行ってしまいました…」
「参ったなぁ…。俺が連れ戻してくるよ」
「あんなサボテン、放っとけって!それより隊長、あたいの料理も食べてくれよ!ほら、沖縄の家庭料理さ。ゴーヤチャンプルーっていうんだぜ」
「アイリスのも食べてぇ!あやめお姉ちゃんと一緒に作ったんだよ?」
「あ、あやめさんと…!?ぜ、是非、俺にそのコロッケを…!!」
「あっ!!卑怯だぞ、アイリス!!あやめさんの名前を出すなんて…!」
「きゃはは!いっぱい食べてね!アイリスねぇ、おジャガつぶしたの〜」
「隊長!このゴーヤチャンプルーの卵と豆腐はな、あやめさんが買いに行ってくれたんだぜ!?」
「お!せやったらうちの中華粥も食べてーな!あやめはんが味見してくれはったんやで?」
「大神さん、このおはぎも食べて下さいね!私の母直伝です!」
「わ、若菜さんの…!?〜〜じゃなくて!皆、順番にな!仲良く…!」
座って食べている米田、かすみ、由里。
「わははは…!やっぱり打ち上げはこうでなくっちゃなぁ!大神ぃ、もっと酒持ってこーい!」
「もう、飲みすぎですよ、支配人!」
「また副司令におしおきされますよ?…ってあら、その副司令は何処へ?」
「夜風にあたってくるとよ。…酔い回るんが早ぇんだろ」
酒を飲み干す米田。徳利を持ち、うつむくかすみ。
★ ★
テラス。夜空を見る和服のあやめ。十字架のペンダントを見つめる。回想。幼いあやめに十字架のペンダントをかけてやる母。
『――いつかあなたにも将来を誓う人ができるでしょう。その人にこのペンダントをお渡しなさい。神が未来永劫あなた達を守って下さるでしょう』
山崎とキスし、抱かれる若きあやめ。十字架が揺れる。裸でベッドで目覚めるあやめ。ペンダントを出して渡そうとするが、山崎がいない。
(――少佐…?)
軍服で廊下に出るあやめ。指令室で話す米田と一馬を見つける。
『どこ行きやがったんだ、山崎の野郎…!?』
『駐屯所にも戻っていませんし…。〜〜まさか…!?』
目を見開くあやめ。走り、寛延寺で山崎を見つける。
『少佐、何をなさ――!?』
封印石を斬り、黒い光に飲み込まれ、危険な目つきで笑う山崎。天海の雄叫び。闇のゲルが溢れ、姿を消す山崎。駆け寄るが、近づけないあやめ。
『少佐…!〜〜山崎少佐あああっ!!』
ペンダントを落とすあやめ。回想終了。ペンダントを握るあやめ。
「――冷えませんか?」
「大神君…!」
隣に来る大神。ペンダントを懐に隠すあやめ。
「だいぶ涼しくなってきましたね。もう秋なんですね…」
「そうね…」
「何かあったんですか?」
「少し飲みすぎちゃって…。打ち上げ、楽しんでる?」
「はい!俺も皆も楽しませてもらってます」
「そう、よかった…。あ、そうだわ。ちょっと来てくれる?」
★ ★
「えぇと、確かここに…」
「し、失礼します…」
あやめの部屋に緊張して入る大神。伏せてある写真立てを発見。机から台本を出すあやめ。
「はい、次回作の台本よ。後で皆に渡しておいてくれる?」
「了解しました。わぁ、シンデレラですか…!」
「ふふ、大神君も好き?」
「はい、素敵な話ですよね。おばあさんの魔法は12時で消えてしまうけど、王子の愛の魔法は永遠に解けないんだと思うと何だか感動して…!〜〜あ、すみません…、男なのに変ですよね…」
「そんなことないわ。ふふっ、大神君ってロマンチストなのね」
「はは…、昔、姉によく絵本を読んでもらったんで…」
「そう。私もシンデレラ、好きよ。灰かぶりと言われ続けた少女が王子様と幸せになる…。こういうハッピーエンド、大好き…」
台本を抱きしめ、ひざまずき、王子になりきるあやめ。
「『何と美しい方でしょう。是非私と踊って頂けませんか?』」
大神を見つめるあやめ。慌てて台本を読む大神。
「あ…、も…『もちろんですわ、王子様』…!」
微笑み、大神と踊り始めるあやめ。照れる大神。
「あ、あの…、普通逆じゃありません?」
「いいじゃない、楽しければ。舞台に男も女も関係ないわ。役になりきって楽しめれば、それでいいと思わない?」
「はは…、確かにそうですね」
離れ、お辞儀し合う二人。吹き出し、笑い合う。
「ふふふ…、結構上手ねぇ。王子役で出てみたら?」
「えぇっ!?〜〜か、勘弁して下さいっ!マリアファンに袋叩きですよ…」
「まぁ、ふふ…!うん、決めた!大神君、シンデレラ役はあなたが決めて?」
「え…?お、俺がですか…!?」
「普段は支配人と私で考えるんだけど、誰にするか迷ってたのよ。花組のことを一番にわかってくれてるあなたなら、良い人選してくれるかなって」
「い、いいんですか…?俺、もぎりですけど…?」
「ふふっ、しっかりしなさい、大神君!花組の隊長でしょ?」
大神の額を小突くあやめ。
「大丈夫よ。あなたが決めたって言えば、誰も文句は言わないわ」
「そ、そうでしょうか…?」
ドアに耳を当て、聞いてるさくら達。
「…聞いた?」
「しっかり…!」
「シンデレラ…!」
「…顔がにやけとるで、マリアはん」
「〜〜き、気のせいよ。それよりエンフィールドの手入れがまだだったわ」「〜〜わ、私も剣術のお稽古、まだでした…」
「〜〜あ、あたいは小腹がすいてきたな…」
「〜〜アイリス、もう寝〜よっと!」
ダッシュで散っていくさくら達。
「み〜んな考えることは一緒なんやね…。うちも負けてられへんで!」
走っていく紅蘭。階段で聞いてたすみれ、顔を上げる。
★ ★
格納庫。あやめの光武から出てくる式神。本拠地から水晶玉で見るミロク。
「天海様、奴らの本拠地がわかりました…!」
「おぉ、そうか!よくやった、ミロクよ…!」
黒い炎を出す天海。炎に大帝国劇場とさくら達の映像。
「ほぉ。くくく…、帝都一の劇場がなぁ…」
「すぐに出陣さないますか?」
「まぁ待て。我々の目的はあくまで六破星降魔陣の完成…。――叉丹?」
「天照の最終調整、完了致しました」
「そうか!これで準備は全て整った…!」
「して、発動は…?」
「明後日の晩…、――新月の夜じゃ…!」
★ ★
食堂。台本を読み、椅子にもたれる大神。
「うーん…、イメージ的にはやっぱりさくら君かな?でも、マリアやカンナがやっても面白いかもしれないな。アイリスはダンスシーンが大変か…。紅蘭じゃコントみたくなるだろうし、すみれ君は継母って感じだよなぁ…」
「――大神さん…!」
振り返り、ぎょっとなる大神。ドレスを着たさくらが立っている。
「可愛いですか?私、張り切って縫ってみたんです…!」
「あ…、よ、良く似合ってるよ。でも、何でそんな格好を…?」
「たまには洋装もいいかなって…。えへへ…!」
回ってアピールするさくら。絵本を持ってくるアイリス。
「お兄ちゃ〜ん!お兄ちゃんはどのお話が一番好き?」
「え…?」
「あ、やっぱりシンデレラなんだ〜!アイリスもなんだぁ!あのね、アイリス、シンデレラのお話、全部言えるんだよ!すごいでしょ〜?」
「あ、そ、そう…。すごいね…」
「――隊長…」
ロシア料理をたくさん持ってくるマリア。
「どうぞ。隊長への敬意と恩返しのつもりで作ってみました」
「こ、これ、全部マリアが…!?」
「はい。やはり女たるもの料理はうまくないと。ましてや継母にいびられる立場の人間など、できて当然ですよね?」
「は、はぁ…。〜〜わっ!?」
大神の足元でいきなり踊り出す姫と王子のロボット二体。
「どや?うちの発明品、その名も『シンデレラと王子はハッピーフォーエバーくん』や!よく見ててや、こ〜んなことも…、ほりゃ!」
キスする姫と王子のロボット。感激するさくらとアイリス。
「きゃ〜!可愛い〜!!」
「きゃ〜!可愛い〜!!」
「さらに…、ほいっと!」
キスしながら超高速回転するロボット。慌てて足を上げる大神。
「うわああ!?」
「どや?なかなかのダンスやろ?うちも加わろ〜っと!」
アクロバットを交えたダンスを披露する紅蘭。拍手する大神達。姫と王子のロボットと共に決めポーズする紅蘭。
「なははは!これでシンデレラはうちのもんや〜!!」
「――そいつはどうかな?」
体の線がくっきり見えるドレスを着たカンナが登場。
「それはあたいの超ナイスバディを見てからにしな!あっははは…!!」
「〜〜うぅ〜…、体もでかいが、乳もでかい…」
「だろ?シンデレラはあたいに決まりだよな〜、隊長?」
「……皆、立ち聞きしてたな…?」
「え〜?何のことぉ?アイリス、わかんな〜い」
「そうです!決して大神さんとあやめさんが部屋でダンスしてたのなんて見てませんからね!?」
「〜〜思いっきりなボケするなぁ、さくらはんも」
「すみませんでした…。でも私達、皆シンデレラをやりたくて…」
「そうか…。わかった。今のを踏まえてもう一度考えてみるよ。でも、誰が主役になろうとうらみっこはなしだからな?」
「はーい!」
「ありがとうございます!さぁ、もう寝ましょう。おやすみなさい、隊長」
戻っていくさくら達。見送る大神。
「やっぱり皆も好きなんだな、シンデレラ。…でも、マリアまでやりたがってるとは意外だったな」
「――少尉」
すみれが扇子を持って階段を下りてくる。
「すみれ君…!」
「少尉は今のところ、誰をシンデレラになさるおつもりですの?」
「うーん…。まだよく決めてないけど、さくら君かな…?」
扇子をきつく閉じるすみれ。
「……一つ質問してもよろしいかしら?毎回の公演の資金援助、どこから出てるかご存じ?」
「え?それは君の神崎重工――」
「その神崎重工の取り締まり、私のおじい様とお父様も今回の『シンデレラ』を見に来ますの。でしたら主役は、誰にすべきかおわかりですわよね?」
「え…?」
「楽しみにしてますわ」
去るすみれ。
「〜〜う〜ん…、そんなこと言われてもなぁ…」
「――大神さん」
振り返る大神。かすみが立っていて、少しお辞儀。
★ ★
「――以上が前回の戦闘報告です。日比谷公園の被害拡大は、現場を離れていた私の責任です。大変申し訳ありませんでした…!」
賢人会議。頭を下げるあやめ。顔を見合わせる総理達。黙る米田。
「ですが、大神少尉以下花組は我々の予想以上の働きぶりです。彼の迅速で冷静な判断は目を見張るものがあり、隊員達からも深く信頼されています!どうか今回の花組再編成の件、白紙にして頂けないでしょうか!?」
「…どう思われます、総理?」
「うむ…。だがね藤枝少佐、大神少尉達はまだ若い…。若さ故に苦悩や挫折も多い。時には信頼関係が崩れることだってあるだろう。それで、今回はチームワークが乱れたから、守れなかったじゃ済まされんのだよ?」
「〜〜ですが、あの子達は――!!」
「熟練の軍人で再編成すべきでは?探せば霊力の高い者もいるでしょう」
「それより、より強力な霊子甲冑を開発するのはいかがでしょう?」
「そうやって簡単に言うがねぇ、日本の経済状態がどれほどかわかっているだろう?ただでさえ、帝国華撃団は金食い虫なんだから…」
「確かにおっしゃる通りです。ですが、これも帝都防衛の為。維持費は神崎重工に任せております故、現在のまま私共に任せては頂けませんか?」
「お願い致します…!!私もこれまで以上に精進致しますので…!!」
頭を下げるあやめを見つめる花小路。
「……藤枝君がそこまで言うのなら…な」
「うむ…。いいだろう。君達を信頼して、今後とも任せるとしよう」
「ありがとうございます…!!」
「決定でよろしいですね?――では、本日の賢人会議を終了致します」
電気がつき、帰っていく総理達。安堵し、座るあやめ。
「お疲れ」
「お疲れ様です、米田司令。先程はありがとうございました」
「はは、礼には及ばねぇよ。俺ぁ、これから総理と会食することになってるからよ、先帰っててくんな」
「あ…、了解しました!」
「――よかったな」
あやめの肩を叩き、笑って出ていく米田。敬礼して見送るあやめ。
「ご苦労だったね、藤枝君」
「花小路伯爵…!会議、お疲れ様でした」
「君こそお疲れ様。いやぁあそこまで熱くなった君を見たのは初めてだよ」
「生意気を言って申し訳ありませんでした。私、花組を守るのに必死で…」
「…立ち直ったようだね」
「え…?」
「大神君によろしく伝えといてくれ。仲人の依頼はいつでも構わんよ」
笑って出ていく花小路。赤くなるあやめ。
★ ★
上野公園。車の助手席であんパンを食べ、空を見るあやめ。大神を想う。
(――そう、私は大神君が好き…。他の男の人が私の中でこんなにも大きな存在になるなんて、昔じゃ考えられなかった…)
窓を突く鳥。窓を開け、パンをやる。食べる鳥。微笑むあやめ。子鴨二羽を見つける通りすがりの姉妹。
「――見て見て、お姉ちゃん!可愛い〜!」
「本当。私達みたいに仲良しね」
笑う姉妹を見つめるあやめ。回想。長屋。頬を腫らして泣く幼いかえで。
『またおばちゃんにぶたれたよぉ…。お煎餅頂戴って言っただけなのに…』
かえでの頭をなでる幼いあやめ。
『もう少しの辛抱よ。お姉ちゃんが軍人さんになって偉くなったら、新しいおうち建ててあげるから、ね?それまで我慢して?』
『お姉ちゃん…、〜〜かえで、お母様に会いたいよぉ……』
うつむくあやめ。姉妹の首に十字架のペンダント。
『――愛する人にそのペンダントをお渡しなさい』
『――お前のおかげだ、ありがとう』
『――貴様に私は撃てまい』
(〜〜でも、私は…)
ペンダントを握るあやめ。雄叫びと揺れ。フロントガラスに張りつき、車を揺らす降魔。降魔戦争を思い出すあやめ。
「〜〜あれは…!降魔…!?」
(〜〜そんな馬鹿な…!?確かにあの時、真宮寺大佐が…)
撃つあやめ。怯み、飛び去る降魔。刀を後部座席から取って追いかける。
「待ちなさい…!!」
アイスクリンを二つ持ってスキップしてくる由里。
「副司令〜、チョコ味でいいんですよね……って、あれ…?」
空席の助手席。
★ ★
逃げる降魔を撃つあやめ。よけ、叉丹の元に着地する降魔。
「無駄だ。私が作った幻にすぎぬ…」
降魔がお札になる。
「〜〜罠だったのね…」
「会いに来てくれたのか。嬉しいぞ」
あやめにキスしようとする叉丹。拒み、刀を突きつけるあやめ。
「〜〜やめて…!あなたはもう…」
「山崎ではない…か。だが、悪の手先となった今でも覚えているぞ。少佐として無駄な努力をしたことも、お前と愛し合ったあの夜も…」
叉丹の頬を叩き、涙を流すあやめ。
「ふざけないで!!なら、何故行方をくらましたのですか!?〜〜ずっと傍にいてくれるって言ってたのに…!〜〜信じて待っていたのに…!!」
「だから、こうして迎えに来たのではないか。私の元へ来い。共にこの腐った世を改めようではないか」
叉丹の背中から闇のゲルが現れ、あやめを捕える。
「〜〜この世界は腐ってなどいません!!一体何があったのですか!?帝都を守る為、あんなに必死に光武の設計に携わっていたあなたが何故…!?」
ゲルから大量の電流。
「きゃあああああっ!!」
「くくく…、知りたいか?私の右腕となれば全て教えてやろう」
「う…、も、もしかして…、大和…に……?」
眉をひそめ、電流を強くする叉丹。剣を落とすあやめ。
「いやああああ…!!」
「黙って従えばよいのだ。所詮、貴様など道具にすぎぬ」
「――あやめさんっ!!」
駆けつける大神。朦朧と気がつくあやめ。
「お…、大神…く…ん……」
「〜〜貴様、何故ここが…!?」
「花組隊長をなめてもらっては困るな…!」
キネマトロンを見せる大神。あやめの襟に発信器。悔しく投げ捨てる叉丹。
「〜〜だが、一足遅かったな。あやめは私の手の中だ」
「お前なんかに渡すものか…!はあああああっ!!」
あやめの刀を拾い、叉丹に斬りかかる大神。衝撃波に飛ばされる大神。
「ぐあ…っ!!」
「大神君…!!」
「ははは…!貴様のような小僧がこの私に勝てると思ったか?」
攻撃する叉丹。劣勢になる大神。
「やめてぇっ!!〜〜きゃあああーっ!!」
あやめの体に電流を流す叉丹。
「あやめさん…!!〜〜狼虎滅却・快刀乱麻!!」
剣で防ぐ叉丹。少し肩を負傷。
「…少しは成長したようだな。今日はここまでにしておいてやろう。次こそは、そこの姫君をもらいうけるからな…!」
消える叉丹とゲル。倒れるあやめを抱きとめる大神。
「あやめさん…!!大丈夫ですか!?」
「お…がみ…く……」
意識を失うあやめ。
「あやめさん!?あやめさん、しっかりして下さい!!〜〜あやめさん…!!」
大神の声がエコーに。深い眠りに落ちるあやめ。
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