サイト設立1周年記念・連続長編小説
「サクラ大戦×コラボ小説
〜時空を超えた英雄達〜」

第1章「狭間を繋ぐ者〜『テイルズ・オブ・シンフォニア』×『サクラ大戦』〜」その3



ロイドの家からアリスが逃げ出した頃、ジーニアスとプレセアの買い出しに付き合っていた大神はというと…?

「〜〜ぜぇぜぇ…。へ…へへへ…、大漁、大漁っと…」

「〜〜はぁはぁ…。やっぱり…、100人前の食材を運ぶのに3人だけってきつくないか…?」

「〜〜あっははは…、だらしないなぁ、一郎は…。僕は…ぜぇはぁ…まだまだいけるよ〜!はぁはぁ…、プレセア、重いだろう?僕が持ってあげ…――」


――グシャッ!!

「――ふぎゃっ!!」

「〜〜うわああっ!!ジーニアスがつぶされた〜!!」

「……私が持ちます」


プレセアはジーニアスをつぶしている袋と大神がひきずっている袋を軽々持ち上げると、また前を向いて歩き出した。

「うわぁ…。プレセアって小さいのに怪力なんだな…」

「エクスフィアを外してるのに…。やっぱりプレセアってすごいや♪」

「そのエクスフィアっていうのは何なんだい?確かロイドも同じことを言ってたような…」

「着けている人の身体能力を著しく向上させる鉱石だよ。……今は使用を禁止されてるけどね…」

「へぇ、この世界にはそんなすごいものがあるのか!俺も着けてみたいなぁ」

「確かに着ければ便利だろうけどさ…。〜〜あ〜っ!一郎は何も知らないから、そんな呑気なこと言ってられるんだよっ!!」

「え…?俺、何かまずいこと言ったかな…?」

「……大神さん、早く行きましょう。お祭りが始まってしまいます」

「あ…あぁ、そうだな。急ごうか――!」


大神がプレセアの荷物を持ってやろうとしたのを阻止すべく、ジーニアスは素早く二人の間に割って入った…!

「〜〜エクスフィアなんてなくても、僕は一郎に負けないからねっ!?」

「〜〜は、はぁ…?」


★            ★


「――ご苦労様。これでマーボーカレーが作れるよ」

大神とジーニアスとプレセアは、100人前超の食材をイセリア村の広場に集まっていた炊き出し係の主婦達に無事に渡すことができた。

「ありがとねぇ。これ、店の余り物だけど、よかったら使ってやっとくれ」

「わ〜い、アップルグミだ!ありがとう、道具屋のおばさん!」

「あんた達もお客さんなのに下準備まで手伝わせちまって悪かったねぇ」

「はは…、いえ」

「…皮むき、楽しいですから」

「あとは鍋を火にかけるだけだよね!味付けは任せてよ♪」

「そんなに働かなくても大丈夫だよ、ジーニアス」

「あとは私達でやっておくから、劇の練習に顔を出してきたらどうだい?」

「そうそう。せっかくの主役なんだしさぁ♪」

「へへっ、そう〜?じゃあ、お言葉に甘えちゃおっかな〜♪」

「劇?そういえば村のあちこちにポスターが貼ってあるな。えっと…?」

「『四英雄と二つの世界』記念祭一夜限りの特別公演さ。僕は炊き出し係をやるからいいって言ったのに、学校の皆がどうしても主役のミトスをやってくれってきかなくてさぁ。天才っていうのも困りものだよね〜♪」

「〜〜自分で言うなって…」


その時…!アリスを背中に乗せた怪鳥がイセリア村の上空を低空飛行で飛び去り、広場に突風が巻き起こった…!

「うわあああ…!!」

「〜〜く…っ、鍋は無事…!?」

「〜〜あぁ、なんとかね…」

「ホッ、よかったぁ…」

「……でも、ポスターが…」

「〜〜うわ〜んっ!!僕の顔がビリビリになってるぅ〜…!!」


ジーニアスが飛ばされた劇のポスターを慌てて回収している後ろで、プレセアは怪鳥を鋭く睨んでいる…。

「何だったんだ、あのでっかい鳥は…!?」

「……たぶん…アリスのペットです…」

「えっ!?アリスってあの魔物使いの…!?」


そこへ、かえでから大神のキネマトロンに通信が入った。

「かえでさんからだ…!この世界でもちゃんと繋がるんだな」

「何なの、それ?」

「離れた場所にいる相手と会話できる通信機だよ。――かえでさん、どうしました?」

『――今、ロイドの家をアリスという少女が奇襲をかけてきたの。記念祭のペンダントを奪われたから、その娘を追ってアスカードに向かっているところよ。応援を頼めるかしら?』

「アリスだって…!?」

「やはり、そうでしたか…。私達も向かいましょう」

「そうだな…!――では、また現地で…!」

「〜〜えぇっ!?ちょ…っ!まだポスター直してないのにぃ〜!!」


★            ★


その頃、ノイシュに乗ってアスカードを目指しているロイドとリフィルとかえではというと…?

「――ふぅ…。これで、ひとまず安心ね」

「すっげー!離れていても会話できる機械か〜♪」

「あなたの世界には珍しい物があるのね。できたら、分解して構造を調べてみたいけど…♪」

「〜〜気持ちはわかるけど、使えなくなっちゃうと困るから勘弁してくれる…?」

「おっ、アスカードが見えてきたぜ!しっかりつかまってろよ…!!――行っけー!ノイシュ!!」

「ハッハッハッ…!ワオーン…!!」


主人のロイドの命令でノイシュは雄たけびをあげながらスピードを上げ、アスカードまで駆けて行った…!

★            ★


風の街・アスカード。

バラクラフ王廟から吹いてくる風の影響で、この街には一年中風が吹いている。アスカード遺跡と呼ばれる石舞台がこの街の名物だ。

今日は世界統合記念祭の式典が行われる為、イセリア村と同じで賑わいを見せている。

「――ハァハァ…、アリスはどこだ…!?」

ロイドはアスカードに駆け込んだが、残念ながらアリスは見当たらない。

「〜〜ちくしょう…、逃がしたか…」

「でも、何故アリスは記念祭のペンダントを狙ってたのかしら…?」

「彼女がただのアクセサリーを欲しがるとも思えないしね…。――ロイド、あのペンダントはどんな鉱物から作ったの?」

「さぁな…?テセアラとの抗争でやっと手に入った鉱物だって親父は言ってたけど…」

「その鉱物って、もしかしたら…」

「――あっ、ロイドとリフィル先生だ〜!」

「わ〜い!リフィル先生が来たぞ〜♪」


すると、ロイドとリフィルに子供達がわあっと元気に駆け寄ってきた。

「こ、この子達は…?」

「私のクラスの生徒よ。今夜、この街の石舞台で劇を披露するから集まってもらったの」

「――ロイド〜!リフィル先生〜!待ってたよ〜♪」

「おっ、コレットも来てたのか!」

「うん。来てくれたってことは記念祭のペンダント、できあがったんだね?見せて見せて〜♪」

「あ…、〜〜ごめん…!ペンダントは盗まれちまったんだ…」

「え…?」

「なんかわかんねぇけど、マナエネルギーがどうたらこうたらでアリスが甦っちまって、ペンダントを狙ってきてさ…。でも、本番までに必ず取り返すから…!だから、頑張れよ!?」

「うんっ!ペンダントなんてなくても、ロイドがいてくれれば私、ちゃんと歌えるような気がするから…♪」

「コレット…」

「くすっ、いいの?いい雰囲気みたいだけど?」

「フフ、教師が生徒相手に嫉妬してどうするの?…それに、ロイド本人はコレットの気持ちに気づいていないみたいですし」

「ふふっ、確かにね。あの鈍感さは、うちの大神君といい勝負だわ♪」

「ロイド、ペンダントのことは記念祭の実行委員に私からうまく説明しておくわ。あなたはコレット達と劇のリハーサルをしてなさい」

「わかった…」

「皆、いよいよ今夜が本番よ。イセリア村の名誉にかけて頑張りましょう」

「は〜い!」


★            ★


そして、実際の石舞台を使っての最終リハーサルに突入した。

大帝国劇場副支配人のかえでは、演出のリフィルのアシスタント兼アドバイザー兼女優として、今回の劇に関わることとなった。

「へぇ、スモークと火の演出には魔物を使うのね」

「えぇ、終わったら野生に返してあげようと思うのだけれど…」

「〜〜プギ〜!!」


――ボオオッ!!

「きゃ…っ!?」

かごに入れられている鳥型モンスターのジャブジャブは可愛らしい容姿にも関わらず、猛烈な炎を吹いて、かえでとリフィルを威嚇している。

「〜〜なかなかやんちゃで手なずけられないのよね…。こんな時、しいなかエミルがいたら簡単に使役できるのでしょうけれど…」

「――あのー、この柱はどこに…?」

「あぁ、それは2本が対照的になるように上手と下手にそれぞれ置いてもらえる?――あ、照明はもっと上から当てるようにねー?まっすぐ顔に当てると、役者さんが目を傷めちゃうから」

「は〜い!」「は〜い!」

「さすが劇場の副支配人ね。舞台監督はお願いしちゃっていいかしら?」

「えぇ、皆で最高の舞台にしましょう!」

「――リフィル先生〜、一緒にお稽古やろ〜!」

「えぇ、よくってよ」


ふふっ、リフィルさんって生徒さん達から慕われてるのね。

「――ロイドッ!!いい加減に台詞を覚えなさい!!」

「〜〜だ〜って2行もあるんだぜ?長すぎて覚えらんねぇよぉ〜」

「うふふ…!ロイドったら、またリフィル先生に怒られてる〜」


――生徒のロイド君と教師のリフィルさんねぇ…。フフ、危険な香りがするカップルだわ…♪

★            ★


その頃、大神とジーニアスとプレセアはアスカードを目指して、港町・パルマコスタに到着していた。

「〜〜ハァ…、やっとパルマコスタまで着いたよ…。簡単に来いなんて言うけどさ、こっちはノイシュもレアバードもないんだから無理だって…」

「まぁまぁ、せっかく船まで乗ってはるばる来たんだし、小旅行と思えばいいじゃないか。――それで、アスカードまではどう行けばいいんだい?」

「時間はかかりますが、徒歩で行くしかありません」

「えっと、ワールドマップはっと…」


ジーニアスとプレセアが地図で確認している間、大神はレストランに入っていく気弱そうな少年と積極的な少女、彼らのペットと思われる人間の言葉を話す黒豹の謎の一行を目撃した。

「――エミル〜♪早くレストラン入ろっ!」

「〜〜マ、マルタぁ…。こんな所で腕組んだら恥ずかしいよぉ…」

「ヒュ〜ヒュ〜、アツアツで妬けますねぇ〜♪」

(〜〜黒豹が喋ってる…。帝都…いや、地球上ではまず見られない光景だな…)

「――どうしたの、一郎〜?置いてっちゃうよ〜?」

「あ…、今行くよー!」


ジーニアスとプレセアに案内され、大神は賑やかな街の中を歩いていく。

「このパルマコスタって街は大きくて活気があるんだね」

「シルヴァラント領が誇る港町だからね〜♪今は世界統合記念祭セールやってるから、余計繁盛してるんだよ」

「名産品はパルマコスタワインに海産物…。3年前の大樹の暴走により壊滅的被害を受けましたが、今は復興したみたいです」

「そうだね。本当よかった…」

「――やだねぇ。この前、酒場でテセアラ人が暴れたって言うじゃないか」

「あ〜、私も聞いたよ!いきなり札束持ってきたと思ったら、酒場の土地を買うとか言い出してさ、ご主人と大揉めになったんだろ?」

「テセアラなんて、苦労知らずの成金王国じゃないさ!王様がいて少し文明が発達してるからって、私達を見下して、いい気になってるんだよ!」

「見た目だけじゃ、シルヴァラント人とテセアラ人の区別はつきにくいものねぇ…。〜〜まだこの街にスパイでも潜り込んでるんじゃないかい…?」

「……」


主婦の井戸端会議にプレセアは無表情でうつむいた。

「〜〜またテセアラ人差別か…」

「…行こう、プレセア!」


ジーニアスが悔しさを浮かべてプレセアの手を引っ張っていると…、

――ドンッ!

「うわっ!あいたた…」

角を曲がって歩いてきた男子学生とぶつかり、尻もちをついた…!

「ゴメンよ…!大丈夫かい!?」

「その制服…!君、もしかしてパルマコスタ学問所の生徒?」

「そうだよ。1年前に再開したんだ。もしかして君、入学希望者かい?」

「う、ううん…。そうじゃないけど…」


すると、学生が持っていた機械がジーニアスに反応を示し、点滅した。

「僕のつくったマナエネルギー探知機が反応してる…!ということは君、エルフなんだね?」

「え?〜〜う、うん…、まぁね…」

「だったら、うちの学問所においでよ!エルフは賢い種族だから、入学したら、きっとすごい論文を…――!」


手を引いて起こしてやった時にジーニアスの尖っていない耳が神の隙間から見えて、男子学生はハッと息を呑んだ…!

「その耳…、もしかして、君は――!」

「…!!〜〜さ、さよなら…っ!!」

「あ…!ジーニアス…!?」


ジーニアスはプレセアの腕をまた引っ張り、急いでその場を後にした!そんなジーニアスを男子学生は驚いたように見つめていた。

「あの子がジーニアスだって…?」

★            ★


「――おい…!どうしたんだよ、ジーニアス…!?」

大神はパルマコスタを出て街道に出たジーニアスに追いつき、肩に手を乗せて引き寄せた。

「〜〜放っといてよっ!!異世界の人間には関係ないだろっ!?」

「いいや、今の俺は君と同じ世界にいる人間だ。友達が暗い顔してたら、心配するのは当たり前じゃないか…!」

「一郎…」

「ふふふ…。お節介なところがロイドさんに似ていますね…」

「そ、そうかい?」

「はは、プレセアの言う通りだね。――ごめんね、取り乱しちゃって…?」

「いや…。それより、そうなった理由を聞かせてくれないかな?俺で力になれることがあったら協力するからさ」

「ありがとう…。……一郎になら話してもいいかな…」


ジーニアスはアスカードへ続く道を歩きながら大神に重い口を開いた。

「――ハーフエルフ…?」

「うん…。僕と姉さんは人間とエルフのハーフなんだ」

「ハーフエルフは人間達から頭脳の高さを妬まれ、嫌いな人間の血が入っているという理由でエルフ達からも嫌われ…、世界中のあらゆる地域で差別されている種族です…。その為、普通は人里離れた地域で暮らす人が多いと聞きます…」

「けど、イセリア村は何も言わず、僕と姉さんを受け入れてくれたんだ…。〜〜でも、村の人達みたいに皆、世の中の人が優しいわけじゃない…。僕…、プレセアやテセアラの人が悪く言われるのが許せないんだ…。差別されたことのある人じゃないと、この痛みはわからないと思うよ…。〜〜僕もプレセアも悪いことなんてしてないのにさ…、どうしてこんな辛い思いをしなくちゃならないの…?」

「そうか…。それで、さっきも慌てて逃げてきたんだな…?」

「うん…。〜〜耳を見られたらおしまいさ…。僕達はエルフのように耳が尖ってないからね…」

「……ジーニアス、あなたはパルマコスタ学問所に入学したいと前に言っていました。今は入りたくはないのですか?」

「叶うものならそうしたいよ…。〜〜でも、無理だよ…。さっきの子に僕がハーフエルフだってこと知られちゃったしさ…」

「そんな簡単に諦めたら駄目だよ…!君の夢なんだろう?」

「でも、僕一人が努力してなんとかできる問題じゃないもん…。世界が生まれ変わらない限り、この無意味な差別は永久に続くんだろうしさ…」

「ジーニアス…」

「ごめんね、心配かけちゃって…?でも、自分のこと本気で気にかけてくれる人がいるっていいもんだよね…!あははは〜」

「ジーニアス…。……無理して笑わなくてもいいんだぞ…?」

「え?僕?あはは、全〜然無理してないよ〜♪それより早く行こうよ。遅れると姉さん、うるさいしさ〜…」

(――世界が生まれ変わらない限り…か。俺とかえでさんでこの世界を救えば、ジーニアスが望む世界に変えてやることもできるんだろうか…?)


大神は太陽の光にキラキラ輝く世界の欠片を見つめて、己の非力さに眉間にしわを寄せる顔を映し込むのだった…。

★            ★


一方、アスカードではシルヴァラントのお偉い方や式典の参加者、一般の観客が集まり、間もなく世界統合記念祭の式典が始まろうとしていた。

「――ふふっ、こんな感じでどう?」

かえでもマーテルの舞台衣装に着替え、準備万端だ。

「わぁ、とってもお似合いです〜♪マーテルさんにそっくり!」

「俺、知ってるぜ!『馬子にも衣装』ってやつだろ♪」

「…ムッ!〜〜どういう意味かしら〜?」

「〜〜あり…?な、何で怒ってるんだ?褒めてやったのに…」

「〜〜ハァ…。言葉だけじゃなくて、意味もセットで覚えるようにね、ロイド…?」

「――お〜い、かえでさ〜ん!」


そこへ、大神が手を振りながら、かえで達のいる石舞台へ駆け寄ってきた。

「大神君…!来てくれたのね」

「はい!この大神一郎、かえでさんの為なら火の中水の中、どこへでもズババババーンと駆けつけますよ!!」

「おぉ〜、ズババババーンかっ♪」

「格好良いね〜♪」

「〜〜こ、こら…!皆さんのいる前で恥ずかしいこと言うんじゃないの!」

「ごめんなさいね。結局、アリスは逃がしてしまったわ…」

「あー、いいんですよー。そういえば、ジーニアスとプレセアがバラクラフ王廟ですんごい歴史的遺産を発掘したみたいですよ?リフィルさんにすぐ来てもらいたいって♪」

「何っ!?それは本当か!?――こうしてはおれんっ!!すぐ向かうぞ、ロイド!!」

「〜〜な、何言ってんだよ、リフィル先生!?もうすぐ式典、始まるんだぞ!?」

「劇は後半だ!今から行けば間に合う!!」

「〜〜そんなこと言って、今日だって旧トリエット跡に半日近くいただろ!?――コレット、手伝ってくれ…!」

「う、うん…!リフィル先生、どーどー!!」

「ふはははは〜!!遺跡が私を呼んでいる〜!!」

「〜〜あぁ…、またリフィルさんが遺跡モードに…」

「――フッフッフ…、これで邪魔者はいなくなりましたね、かえでさん♪」

「え…?」


大神はニヤッと笑うと、かえでの首をギリギリと締め上げた…!

「――あぐぅ…っ!?」

かえでの喘ぎ声に石舞台から降りたロイド達は振り返り、驚愕した…!

「かえで…!?」

「〜〜う…ぅ…、お…、大神…君…?」

「――フフ…、今、楽にしてあげますからね、かえでさん…!!」

「〜〜ひ…っ!?いやああああーっ!!」


かえでの悲鳴を合図としたように石舞台の周囲に竜巻が起こり、式典参加者達は皆、我先にと逃げ始めた…!

「〜〜くっ、一体何が…!?」

舞っていた砂埃がやむと、かえでは黒い十字架に磔にされていた…!

「かえでさん…!!」

「一郎、何やってるんだ…!?早く降ろせ…!!」

「ふはははははっ!!まんまと引っかかったな!?バカどもめ!!」

「何ですって…!?」

「――かえでさーん!!」


すると、大神とジーニアスとプレセアがロイド達に駆け寄ってきた。

「えぇっ?お、大神さんが二人…!?」

「〜〜僕達が着いて早々、何なの、これ…!?誰か説明してよ〜」

「……まさか彼は…!」

「えぇ、変装能力だけは一人前のデクスの仕業ね…!」

「――フフフ…、そのと〜りだっ!」


デクスは大神の変装を解くと、元の姿に戻って高らかに笑い出した!

「ふはははは…!!再会を祝して、メロメロコウも2倍にしてきてやったぞ!!」

「〜〜変装を解いても、俺の声にそっくりなんだな…」

「〜〜そっくりというより…モロ同じだよね…」

「フフ…、俺の美声にうっとりしてるんだろう?おっと、サインは後にしてくれよな♪――まずは仕事を終わらせてからだ…!」

「う…、お…、大神…く…ん…」

「かえでさん…!!――くそ…っ!かえでさんから離れろぉぉっ!!」

「助太刀するぜ…!!――たああああああっ!!」


大神とロイドがそれぞれ二本の刀を手に階段を駆け上がり、石舞台に足を踏み込もうとしたその時…!

「――そうはさせないわよ…!」

アリスを乗せた魔獣が立ちはだかり、口から光線を出して、二人を階段から転げ落とした…!!

「うわああああーっ!!」「うわああああーっ!!」

「〜〜大神君…!!」

「〜〜ロイド…!!」

「うおおお〜っ!!さっすが俺のアリスちゃ〜ん♪」

「――ウザい!キモい!こっち来んな!3Kデクス!!」


――ビシビシビシッ!!

「あぁっ!もっと調教して〜!アリスちゃ〜ん!!」

デクスを鞭で叩いて足蹴にすると、アリスは磔にされているかえでの顎を押し上げた。

「フフ、かえでちゃん…だったかしら?イイ気味だわ〜♪アリスちゃんを馬鹿にしてくれた罰よ」

「〜〜く…っ、こんなことして何するつもり…?」

「ふふ、可愛い。すっかり怯えちゃって…♪光栄に思いなさい。あなたはマーテル様の器として選ばれたのよ」

「何ですって…!?」


すると、天上から目がつぶれそうなほどの強い光が降り注いできた…!

「いらしたぞ…!俺達を新世界へ導いて下さるあのお方が…!!」

「さぁ、降臨下さい!勇者ミトス様…!!」


アリスとデクスがひざまずくと、羽根を生やしたユグドラシルが石舞台に降り立ち、ゆっくり瞳を開け、口角を上げた…!

「〜〜そ、そんな…!?」

「お前は…ユグドラシル…!?」


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