サイト設立1周年記念・連続長編小説
「サクラ大戦×コラボ小説
〜時空を超えた英雄達〜」

第1章「狭間を繋ぐ者〜『テイルズ・オブ・シンフォニア』×『サクラ大戦』〜」その1



「――う…ん…」

ミカエルから託された女王討伐の使命を果たすべく異世界に向かった大神とかえでは、気がつくと遺跡らしき場所に立っていた。

「ここはどこなんだ…?」

目が覚めて一瞬、全ては夢ではないかと思ったが、自分達は確かに違う世界の地面を踏みしめている。

少し埃っぽい見知らぬ景色に夢うつつだった大神とかえでは現実に引き戻され、辺りを見回した。

「どうやら無事、異世界に着けたようね。見た感じ、ここは遺跡みたいだけど…」

「う〜ん、何て書いてあるんだろう…?平仮名でも漢字でもない不思議な文字ですが…」


不思議な文字が彫られた石版をかえでと見ていた大神は、この遺跡の発掘品と思われる青銅の短剣や杯がシートに大切そうに置かれていることに気づいた。

「綺麗な文様ですね…!まるで世界史の参考書に出てきそうな…」

「本当にね…!ここに置かれたままということは、発掘調査の最中なのかしら?」

「近くに考古学者がいるかもしれませんね。探してみましょうか」

「そうね。この世界について詳しく聞けるかもしれないし――」


――ゴトッ!

「あ…」「あ…」

立ち上がろうとした大神の膝が壺に軽く当たり、その衝撃で壺が倒れ、美しくて細かい装飾が一部欠けてしまった。

「〜〜あぁ〜っ!?」

「〜〜何やってるのよ、大神君…!?」

「す、すみません…!〜〜あぁ、どうしよう…!?」

「酸化が起こってるんだわ…。発掘されて間もないから、空気に触れて脆くなってるのよ…」

「とりあえず、くっつけないと――!?」

「――そこで何をしているのかしら?」

「〜〜ギクッ!?」「〜〜ギクッ!?」


恐る恐る大神とかえでが振り向くと、オレンジ色の魔導服を着た銀髪の女性が、髪を立たせた赤い服の青年を従えて仁王立ちしていた。

「見かけない顔だな…。トリエットの住人か?」

「えっ?〜〜いや、俺達はその…」

「…今、後ろに何を隠したのかしら?」

「〜〜いぃっ!?」

「〜〜な、何のことかしら…?おほほほ…」

「怪しい奴らだな…。まさか最近出没するという遺跡荒らしか…!?」

「かもしれないわね。そうでなくても、彼らを役人に突き出すのは可能よ。この遺跡は魔物が多い為に一般人の立ち入りは禁止されているのだから」

「〜〜こ…、この人が例の考古学者でしょうか…?」

「多分…ね。〜〜とんずらするのも気が引けるし、素直に謝った方がよさそうだわ…」

「…何をブツブツ話しているの?言いたいことがあるなら、はっきり言って頂戴」

「〜〜は、はい!――実はこれを…」

「〜〜こ…っ、これは…!!」


大神が見せた欠けた壺を銀髪の女性は手袋をはめた手で慌てて奪い返した。

「〜〜あぁ〜っ!!リフィルの発掘品が…!!」

「〜〜なんてこと…っ!!貴重なバラクラフ王朝時代の壺がぁぁ…!!」

「〜〜誠に申し訳ございませんでした!きちんと弁償させて頂きます…!!」

「彼もわざとやったわけではなくてですね――!」

「〜〜貴様らが弁償したところで、この壺はもう美しいフォルムに戻りはしないっ!!一体どうしてくれるのだ…!?この壺は本来ならば、バラクラフ王廟でしか発掘できない代物!それがこの旧トリエット跡から発掘されたということは、旧トリエットとアスカード間に何らかの関係があったということだ!!数多くの考古学者が長年追究してきたその謎を解明できるやもしれぬ貴重な発掘品を貴様らは壊したのだぞ!?」

「〜〜きゅ、急に口調が変わった…!?」

「リフィル、落ち着けって!ちょっと欠けてるぐらいだから大丈夫だよ」

「何を言うか、ロイド!?これは後世へ遺すべき人類の貴重な遺産!!それを侮辱し、歴史を闇へ葬ろうと企む輩はこの私が容赦せんぞっ!!――光よ…!フォトン!!」

「きゃあああっ!!」


リフィルがロッドから放った光の玉が大神とかえでを容赦なく襲った。

「〜〜誤解だ…!わざと壊したわけでは――!」

「ふははははは〜!!命乞いをしても無駄だぞ、遺跡荒らしめ!!神聖な遺跡を荒らす不逞な輩は徹底的に排除してくれるわっ!!」

「〜〜俺達は遺跡荒らしじゃないんですって…!!」

「〜〜こんな所でくたばるわけにはいかないわ…!逃げるわよ、大神君!」

「了解です!」

「逃がすかぁぁっ!!――追うぞ、ロイドっ!!」

「おう!――エクスフィア、今だけ力を借りるぞ…!!」


落ち着いた大人の女性という第一印象からは想像もつかないリフィルの怪しい高笑いから逃れるべく、大神とかえでは一目散に逃げていく…!

「ハァハァ…、しょっぱなから何なのよ、もう…!?」

「あの人は二重人格なんでしょうか…!?普通にしてれば美人なのにな…」

「〜〜お・お・が・み・く〜ん?」

「〜〜いてててて…っ!!冗談ですってば…!!」


かえでが走りながら大神の頭をグリグリしている間に、EXジェムレベル2を装備して俊足になったロイドと遺跡への執念に燃えるリフィルが猛スピードで追いついてきた…!

「――待ぁぁぁぁてぇぇぇぇぇっ!!」

「〜〜ひいいっ!!もう来た…!?」

「遺跡の構造を知っている分、向こうが有利ね…。外に出てしまえばこっちのものよ…!」

「逃がすかぁっ!!――魔神双破斬!!」

「きゃ…!?」

「かえでさん…!!」


ロイドの二刀流の奥義を大神は真刀滅却と光刀無形の同じく二刀流で受け止めた…!

「〜〜俺の剣技を受け止めただと…!?」

「大丈夫、大神君…!?」

「えぇ、なんとか…。こいつ、できますね…」

「でかしたぞ、ロイド!――セイクリッド・シャイン!!」

「えぇっ!?初戦から秘奥義かよ!?」

「ふはははは…!!遺跡の恨みは怖ろしいのだぁ〜!!」

「うわああ〜っ!!」「きゃああ〜っ!!」


――ちゅど〜ん…!!

怒れるリフィルの秘奥義は大神とかえでだけでなく、恋人のロイドをも巻き込み、旧トリエット跡内で炸裂したのだった…!

★            ★


「――よっし、これで逃げられないだろ」

「助かったわ。さすがはロイドね」

「へへ、思いっ切り巻き添え食っちまったけど、護衛の役目を果たせてよかったよ」


遺跡モードが解かれたリフィルの微笑みに傷だらけのロイドは苦笑しながらも、照れて微笑み返した。

「〜〜壺を少し壊したぐらいで、ここまでひどい目に遭うとは…」

「仕方ないわ。大切なものを壊されたら、誰だって怒るわよ…」


ボロボロの状態で捕まった大神とかえではロープでぐるぐる巻きにされ、遺跡の入口でロイドとリフィルに問い出されることになった。

「――それで、何故あなた達はあそこにいたのかしら?持ち物を調べたところ、遺跡荒らしには見えないけれど…?」

「目が覚めたら、あそこにいたんだ…」

「私と彼は世界と世界の狭間からこの世界にワープしてきたの。崩壊して欠片になってしまった異世界を元に戻す為にね」

「異世界だって…?じゃあ、お前らはシルヴァラント人でもテセアラ人でもないって言うのか?」

「あぁ、俺達のいた世界は日本の帝都東京だからね」

「ニッポン…?テイトトーキョー…?聞いたことないわね…」

「リフィル先生でも知らない世界があるなんてな…」

「…罪から逃れようと、でたらめを言ってるんじゃないでしょうね?」

「いいえ、これは紛れもない真実よ。私達の世界は根源の世界・マナ=エルフィーの女王・アンジュによって滅ぼされてしまったの…」

「この世界も俺達の世界と同じ運命を辿り、欠片だけになってしまってるんだ…。侵食する悪を一刻も早く倒さないと、この世界は完全に滅びてしまう…!!」

「〜〜そんな…!?」

「最近、この世界で妙な異変が起こらなかった?」

「う〜ん…、クルシスもヴァンガードも倒したばっかりだしなぁ…」

「その世界の欠片というのは今、持っているのかしら?」

「あぁ、そのお陰でこの世界に来られたからね」

「…見せてもらっても構わなくて?」

「えぇ、どうぞ」


ロイドとリフィルは大神とかえでがミカエルからもらった世界の欠片を太陽にかざし、じっくり眺めてみた。

太陽光を通してキラキラ輝いて、まるで宝石やガラスのように美しい。

「これが世界の欠片かぁ…!鏡の欠片にしか見えないけどなぁ」

「確かにマナエネルギーとは違う別のエネルギーを感じるわね…」

「…信じてもらえたかしら?」

「証拠や科学的根拠がないから今のところは何とも言えないけれど、興味深い話なのは確かね。しかも導かれるように私達のいる遺跡にテレポートしてくるなんて…」

「俺達、見えない何かで繋がってるのかもな」

「はは、そうかもしれないな」

「――姉さ〜ん!ロイド〜!」


そこへ、リフィルとお揃いの銀髪の少年と、おっとりした金髪少女が駆け寄ってきた。

「ジーニアス…!コレットも来てくれたのか」

「えへへ、待ちくたびれたから来ちゃった♪」

「〜〜まだいたの〜?もう夕方の4時だよ?」

「ゲッ!?もうそんな時間かよ…!?」

「――あれ…?そっちの人達は?」

「貴重な発掘品を壊した極悪人よ」

「逃げようとしたから捕まえたんだ!えっへん♪」

「〜〜壺を少し壊しただけなのにな…」

「あはは、遺跡モードの姉さんに逆らうなんて度胸あるね〜」

「あのねロイド、人手が足りないから早く帰ってこいって村長さんが言ってたよ」

「あ、そっか。今日は世界統合記念祭だしな。――そろそろ帰ろうぜ、リフィル先生」

「何故だ!?未調査の箇所はまだ山ほどあるのだぞ!?」

「…こんな風に遺跡モードが暴走しっぱなしでさ」

「〜〜そんなことだろうと思ったよ…。イセリア村の名誉をかけた大事な行事なんだから、姉さんも手伝ってよね!」

「調査なら明日また手伝ってやるからさ。今日は一緒に準備しようぜ!」

「〜〜不本意だが仕方あるまい…。くぅぅ…、今この瞬間にも貴重な発掘品が風化されているかもしれんのに…!!」

「なるほど…。遺跡モードになると、ああいう口調になるんだな」

「ふふふっ、リフィルさんって面白い方ね」


クスクス笑っているかえでをコレットがニコニコしながら覗き込んできた。

「…?何かしら?」

「えへへ、あなたの声、ジーニアスにそっくりだなぁ〜って♪」

「ジーニアスってこの子…?」

「はは、まっさか〜!僕の美声をおばさんの声なんかと一緒にしないでよ」

「〜〜誰がおばさんよっ!?」

「あははは…!よ〜し、日が暮れる前にイセリア村へ帰ろうぜ♪」

「お〜っ!」「お〜っ!」

「〜〜うぅ…、名残惜しい…」


★            ★


大神とかえではロイド達と一緒に旧トリエット跡を後にした。

「――ロープ、解いてくれて助かったわ」

「話してみて、悪い奴らじゃないってわかったしな。俺達の方こそ、突然襲いかかったりしてごめんな?」

「いいんだ。故意にではないといえ、壺を壊したのは事実なんだし…」

「よかったら、私達の村に寄っていきませんか?記念祭に是非、招待させて下さい♪」

「まぁ、いいの?」

「もちろんです!」

「ありがとう、喜んで参加させてもらうよ。――そういえば君達の名前、まだ聞いてなかったよな?よかったら、教えてくれないかな?」

「チッチッチ!人に名前を尋ねる前に、まず自分も名乗るべきだぜ♪」

「あはは、ロイドの十八番、久々だね〜♪」

「おう!俺も感無量だぜ♪」

「はは、それもそうだな。俺は大神一郎」

「藤枝かえでよ。よろしくね」

「おう、よろしくな!俺はロイド・アーヴィング」

「コレット・ブルーネルです」

「リフィル・セイジよ。この子は弟のジーニアス」

「よろしくね、一郎、かえで!」

「あぁ、皆よろしくな」

「ふふっ、最初はどうなることかと思ったけど、良い人達に出会えてよかったわね」

「そうですね。さっきの戦いを見る限りでは、ロイドとリフィルさんなら女王討伐隊の頼もしい仲間になってくれそうな気がしますし…」

「そうね…。その為にも早くこの世界を救わないと…!」

「――あら、ノイシュはどこに行ったのかしら?」

「おっかしいなぁ…。黙って俺から離れるような奴じゃないんだけど…」

「――クゥ〜ン、クゥ〜ン…」

「あ、あそこにいるみたいだよ!」


鳴き声がした方へ行ってみると、ピンクのツインテールの女の子が、犬のような姿かたちで馬のように大きい不思議な緑色の動物の肉球を熱心に触っていた。

「ぷにぷにぷに…。ノイシュの肉球、コリンに次いで素晴らしい感触です」

「〜〜キュゥ〜ン…」

「プ…ッ、ププププププレセア…!!」

「よぉ、プレセアじゃないか!」

「お久し振りです…」

「来てくれてありがと〜♪着くの早かったね」

「私も記念祭のお手伝いをしようと思って…。ぷにぷにぷに…」

「〜〜クゥ〜ン…」

「〜〜遺跡マニアの次は肉球マニアか…」

「ひ、久し振りだね…、プレセア!」

「お久し振りです、ジーニアス。大きくなりましたね」

「そ、そうかな?その…プレセアもますます可愛くなったよ…!あははは」

「ふふっ、ジーニアスのガールフレンド?」

「えっ?ガ、ガールフレンドなんて…!あはははっ、やだなぁ〜、もう♪」

「…彼女の声、ジーニアスにそっくりですね」

「やっぱり!?プレセアもそう思うよね〜♪」

「プレセアが言うなら、そうかもしれないね〜♪あははっ」

「あら、こんなガキんちょの声なんかと一緒にしないでもらいたいわね」

「〜〜誰がガキんちょだよっ!?」

「やっぱり、そっくりです…」

「言われてみれば確かにな…」

「んもう、大神君まで…」

「はは…、すみません」


★            ★


トリエット砂漠を抜け、緑輝く街道を大神とかえではノイシュに揺られながら通っていく。

自分達の世界が消滅し、異世界を冒険する羽目になるなんて昨日までは想像すらしていなかった。

だが、こうして今、自分達の世界では体験できないこと、見ることのできなかった世界、出会うことのなかった仲間達に触れることができて、不謹慎と思いながらも喜びを感じていた。

「あなた達の世界は自然に囲まれた美しい世界なのね…」

「ここらへんは田舎だからね〜。王都に行けばメルトキオっていう大きな城下町があるよ」

「今度、レアバードで案内しますね♪」

「レアバードって何なの?」

「…雷のマナを動力にマッハで空を飛ぶ乗り物です」

「へぇ、俺達の世界でいう飛行機みたいなものかな」


ロイド達と仲良く喋っていると、すれ違った荷馬車に乗る人がプレセアを見て、ひそひそ話すのが目に入った。

「――見て、あの子でしょ…?」

「世界を救った英雄だか知らないけど、テセアラの出身なんでしょ?ほら、オゼット病とかいう病が流行ってる所の…」

「怖いわねぇ。病原菌を持ち込まないでもらいたいわ」

「シルヴァラント領に入り込むなんて図々しいにも程があるぜ…」

「……」

「〜〜ひどい…!なんてことを言うの…!?」

「〜〜ちきしょう、叩きのめしてやる…!!――おい!その荷馬車、止まれ!!」

「俺も行く…!」

「僕も!プレセアの悪口言う奴なんかこてんぱんに――!!」

「――いいんです…。……テセアラ人もシルヴァラント人を同じように嫌ってますから…」

「プレセア…」

「シルヴァラントとテセアラってそんなに仲が悪いの?」

「話せば長くなるのだけれど、今もあちこちでいざこざが起こっているのは確かね…」

「〜〜どうして皆、仲良くできないのかな…?同じ人間同士じゃないか…」

「…新たな環境や慣習を受け入れようとせず、自分達と違う者を差別し、排除したがる…。……それが人間の弱さなのよ…」

「〜〜ちきしょう…!せっかく同じ世界の住人になったっていうのに…」

「〜〜ごめんね、プレセア…。気にしないでね…?」

「はい…。もう慣れましたから…」


二度の戦が終わり、平和になったように見えた世界だが、未だに悩みの種は尽きないようだ。

大神とかえでのいた世界でも霊力のある者が怖れられていたように、差別や対立があるのはどこの世界も同じらしい…。

悲しいことだが、どの世界の人間の本質も根本的には同じなのだろう…。


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