★1−4★
上野公園。暴れ、屋台を破壊する脇侍達。逃げる人々。赤ちゃんを抱いた母親が転んだのを見つけ、剣を振りかざす脇侍。
「〜〜きゃああーっ!!」
「――待てっ!!」
止まり、見上げる脇侍。池から飛び上がった轟雷号から発射され、着地する大神達。
「帝国華撃団、参上!」
「今のうちに早く…!」
「は、はい…!」
逃げる母親。怒り、蒸気を噴き出す脇侍。轟雷号から通信するあやめ。
「ここが腕の見せ所よ!指示を出して、華撃団を勝利に導いて頂戴!」
「了解です!よし、まず、カンナとすみれ君は…ってありゃ?」
すでに突進しているすみれとカンナ。
「どけどけどけぇ〜いっ!!」
「指示なんかなくても、私一人で十分ですわ!」
脇侍達を撃破していくすみれとカンナ。
「〜〜ま、待て!勝手に動くな!!」
「うるさいですわよ!?黙ってそこで見てらっしゃい!」
「あたいがいれば百人力なんだよ!」
「何をおっしゃって?このトップスタァ・神崎すみれこそが勝利の女神なのですわ!」
「何だと!?一人でかっこつけてんじゃねーぞ!!」
「カンナさんこそ、力押しだけで勝てると思って!?」
立ち止まり、喧嘩を始めるすみれとカンナ。
「君達、今は戦闘中だぞ!?」
「少尉はお黙りになっててっ!!」
「隊長は黙ってなっ!!」
「〜〜いや、だから…、――あ」
反撃を受け、吹き飛ぶすみれとカンナ。
「どえええっ!!」
「あ〜れぇ〜!!」
「カンナ!!すみれ君!!」
「大神さん、どうしましょう!?」
「しゃあないなぁ。うちが手本見せたるわ」
大きな爆弾を抱える紅蘭。
「〜〜お、おい!何をするつもりだ、紅蘭…!?」
「心配いらんて。あの子らを楽にさせたる発明品や!ほな、いくで〜!」
脇侍達に駆け寄る紅蘭。途中で転び、花火と一緒にうちあがる紅蘭。
「あ…、どわああ〜っ!!」
「紅蘭〜っ!!」
「た〜まや〜!きゃははは…!!」
轟雷号。モニターを見てはしゃぐアイリス。頭を抱える米田とあやめ。
「〜〜し、仕方ない…。マリア、後方から射撃を――」
銃弾が大神にギリギリでかすり、脇侍を撃破するマリア。
「〜〜何やってるんだ!?下手すれば俺に当たるとこだったぞ!?」
「射撃ポイントに突っ立てるのが悪いんです。それにちゃんと機動兵を撃破しました。文句を言われる筋合いはありませんが?」
大神を睨むマリア。ビビる大神。
「〜〜隊長は俺だぞ!?屁理屈言わずにちゃんと従え!」
「……何だか無性に腹が立ちました。――スネグーラチカ!!」
氷の銃弾を連射するマリア。慌ててよける大神。爆破する脇侍達。
「〜〜マリア!いい加減に――」
不機嫌で帰っていくマリア。
「〜〜ど、どこ行くんだ!?」
「…弾切れです。あとはご勝手に」
「マリアさ〜んっ!!喧嘩は駄目ですってば〜!!」
轟雷号。呆然の風組。
「〜〜最悪ですね…」
「〜〜まさか…、これほどとはね…」
「…仕方ない。――あやめ君」
「わかりました。……しょうがないわね、あの子達ったら…」
苦笑するあやめ。上野公園。力が抜けて倒れこむ大神。
「〜〜皆…、頼むから俺の指示に…」
「私は従います!何なりとご命令を!」
「さくら君…」
「私、大神さんの為なら頑張れます!この命だって惜しくありません!」
「ありがとう。だが、無理はするな!」
「はい!」
地面から現れる脇侍達。
「くそ、新手か…。まずは前方の機動兵を片っ端から斬り捨てるんだ!」
「了解!はああああっ!!」
(あとは私しかいない…!大神さんの期待に応えてみせるっ!!)
霊子水晶が金色に光り、火花が飛ぶ。脇侍を倒すさくら。
「よくやった!次は…あ?」
さくらの光武から蒸気が噴き出し、倒れて動かなくなる。
「あ、あれ?〜〜あれれっ!?」
「どうした、さくら君!?」
「な、何か動かなくなって…え、あ…〜〜きゃ〜っ!!」
コックピットから投げ出され、転げ落ちるさくら。
「まずいです!さくら機の霊子水晶反応に異常が…!」
「何…!?原因は!?」
「おそらく、一気に霊力を放出しすぎて水晶が狂ってしまったのでは…!?」
「参ったな、計算外だぜ…。さすがは一馬の血を引いているだけはあるな」
上野公園。さくらに駆け寄る大神。
「あいたた…」
「大丈夫か、さくら君!?」
「は、はい…。うぅ、またドジしちゃいました…」
さくらと大神に集まってくる脇侍達。
「〜〜く…っ、さくら君、君は轟雷号に逃げるんだ!俺が援護する!」
「そんなことしたら、大神さん一人に…!」
「これでも士官学校を首席で卒業した男だ。そう簡単に死にはしないよ」
「大神さん…」
「さぁ、早く逃げるんだ!」
走るさくら。襲ってくる脇侍を斬る大神、別の脇侍の砲撃を受ける。
「うわあっ!!」
「大神さんっ!!」
「〜〜止まるな!!君だけでも無事に戻ってくれ!それが隊長としての俺の責務だ!!」
「――!!…はい!」
赤くなり、頷くさくら。攻撃をよけ、轟雷号へ飛び込む。直後に閉まり、脇侍の刀が入口の扉に当たる。
「よかった…!」
苦戦する大神。入口から顔を出すさくら。
「大神さん…!!」
「〜〜早く入るんだ…!」
渋々入るさくら。攻撃を受け続け、刀で機体を支える大神。
(〜〜く…っ、多勢に無勢か…)
脇侍が刀を振り上げる。身構える大神。連射に爆破する脇侍達。
「――諦めるのは早いわよ、大神君!」
振り返る大神。あやめの乗った菖蒲色の光武が銃口を向けている。
「あやめさん…!?」
「諦めたらそこでおしまいよ。隊長なら最後まで正々堂々勝負しなさい!」
微笑む戦闘服のあやめが大神の光武のモニターに映る。
「あやめさん…」
凛々しく微笑み、周りの脇侍を撃破する大神。
「すみません…。俺、自分を見失うところでした!」
「ふふっ、しっかりしなさい、大神君!」
着地し、ウインクするあやめに赤くなる大神。
「私が手を貸すわ。あなたは私の指示に従い、機動兵を撃破すること。いいわね?」
「了解です!」
「良い返事ね。それじゃあ、行くわよ。帝国華撃団、出撃!」
同時に踏み切り、向かっていく大神とあやめ。
「まずは中央の集団をお願い!私は周りを排除するわ!」
「はいっ!はあああっ!!」
撃破する大神とあやめ。
「次は屋台の離れている敵よ!なるべく公共物は破壊しないようにね」
「了解!狼虎滅却…快刀乱麻!!」
剣圧に爆破する脇侍達。
「いい調子よ!今度は二手に分かれましょう。私は右側を撃破するから、大神君は左をお願いね!」
「はいっ!でりゃあああっ!!」
大神とあやめの戦闘をモニターで見る米田達。
「きゃ〜っ!お兄ちゃん、かっこいいーっ!!行っけ〜っ!!」
傷だらけのすみれ、カンナ、紅蘭を連れてくるかすみ。
「負傷隊員の保護、完了しました!」
「うむ、ご苦労!」
「ったく…、まだ八割力温存してたのによ…」
「フン、私の邪魔をするからですわ。〜〜あいたた…」
「んだとぉっ!?まだやる気か、この蛇女っ!?」
「もう!いい加減にしてくださいよぉっ!!」
「う〜ん…、まだまだ改良の余地があると…」
レポートにまとめる紅蘭。モニターを見てはしゃぐさくらとアイリス。
「すごいですね、大神さんとあやめさん!マリアさんもそう思いません?」
コーヒーを飲み、無視するマリア。
「〜〜あのぉ、マリアさん、無傷なら加勢なさった方が…」
「ほら、マリアさんってすっごくお強いですし…ね!」
「――弾切れだって言ってるでしょ?」
睨むマリア。怯える風組。
「やれやれ…。だが、さすがはあやめ君だな」
上野公園。戦う大神とあやめを見下ろし、笑う叉丹。撃破していく大神。
(すごい…!さすがは藤枝少佐だ。相手の動きを読んで、瞬時に的確な指示を出す…。初戦なのにこんなに俺の体が動くなんて…!)
「もう少しよ、頑張って!」
「はいっ!」
地震が起き、地面から新手が大量に現れる。
「〜〜またか…!」
「〜〜く…っ、数も倍近くね…。かすみ、応答して!」
「はい!」
「機動兵を生み出している根源を調べて。この公園のどこかにあるはずよ」
「了解しました!」
通信を切るかすみ。あやめを見て感激しながら、戦う大神。
(すごい…!こんな状況でも冷静さを欠かないなんて…)
「〜〜ごめんなさい…。思ったより苦戦してるわ。まだやれる?」
「はい!大神一郎、あやめさんにどこまでもついていきます!」
「ふふ、嬉しいこと言ってくれるわね。でも、調子に乗りすぎちゃだめよ?」
「わかってます…!」
「副司令、機動兵生産装置を発見しました!地図を転送するので、モニターをご覧になって下さい!」
モニターに映る赤い点が祠。
「あの中に邪悪な霊力値を示す水晶を確認しました!」
「それさえ壊せば、機動兵を全滅できるはずです!」
「あそこね…!ありがとう。――大神君、一気に行くわよ!」
「了解!」
脇侍を薙ぎ払い、祠まで走るあやめと大神。扉を開け、水晶が黒く光る。
「これだな…!でりゃあああっ!!」
邪悪な結界に弾かれる大神の刀。
「大神君っ!!大丈夫!?」
「ぐ…っ!な、何とか…。しかし、少しですが傷はつけられました。結界が張られていて時間はかかりそうですが、破壊は可能なようです!」
「わかったわ。私が機動兵を食い止めるから、水晶の破壊を頼んだわよ!」
「え?で、でも…!」
「大丈夫、私はこれでも少佐よ?」
「りょ、了解…!」
水晶を斬り続ける大神。近づく脇侍達を攻撃するあやめ。
「〜〜くっ、さすがに多いわね…」
銃で砲撃されるあやめ。
「きゃあっ!!」
「あやめさんっ!!」
「〜〜大丈夫よ。あなたは水晶に集中して…!」
「は、はい…」
複数の脇侍から攻撃を受けるあやめ。赤くなる大神。
「あっ!いやあっ!きゃはああんっ!!」
(何て色っぽい悲鳴…!〜〜これじゃあ逆に集中できないじゃないか…!!)
「ああんっ、来ないで!だ…っ、だめぇっ!」
(〜〜駄目だ、駄目だ!こんな時に何を考えているんだ、俺は…!!)
「やめてぇっ!きゃああっ!!ああ…あああああ〜んっ!!」
目を充血させ、水晶を斬る大神。感激するさくら達。
「すごいです!霊力値がどんどんアップしてますよ、大神さん!」
「わ〜い!お兄ちゃん、頑張れ〜っ!!」
「さすがは隊長!これぞ男の中の男だぜ!!」
「…確かに男ですわね、別の意味で」
「ひゃひゃひゃ!大神はんもドスケベやなぁ」
「……最低」
「ふっ、大神もかわいそうになぁ」
上野公園。
「あっ、だめ!そこは…!いやあん!!やめて!!お嫁に行けなくなっちゃう!」
興奮しながら斬り続ける大神。
「くはあっ!もうダメ…!あ、あああ〜んっ!!」
「〜〜うおおおお〜っ!!快刀乱麻、快刀乱麻、快刀乱麻ああ〜っ!!」
水晶が壊れ、散らばる破片。元の祠に。息を荒げ、振り返る大神。
「あやめさんっ!!大丈夫です――へ?」
微笑むあやめの周りに全ての脇侍が爆破した痕。
「終わった?」
「〜〜あ、あの…?」
「騙すつもりはなかったんだけど…。でも、霊力値は上がったでしょ?」
「〜〜は、はは…、演技だったんですか…」
肩を落とす大神を覗き込むあやめ。
「ごめんなさい…。もしかして、怒ってる?」
「いいえ、ご無事で何よりでした…!さすが帝国華撃団・副司令ですね!」
「あら、まだ終わってないわよ?」
指さす先に逃げていく脇侍一匹。
「最後、決めてみる?」
「はい、では、一緒に!」
「いいわね。じゃあ、行くわよ。1、2の…3っ!!」
飛び上がり、同時に斬る大神とあやめ。爆破する脇侍。喜ぶさくら達。
「よくやったわ、大神君!御苦労様」
「はい、ご指導、ありがとうございました!」
敬礼する大神。コックピットから出てきた大神とあやめを囲むさくら達。
「大神さん、格好良かったです!私、感動しちゃいました!」
「お兄ちゃんのこと気に入ったわ!アイリスの恋人にしてあげる〜!」
「あやめさんの指揮のおかげさ。俺一人では、とても成し遂げられなかったよ」
「フフ、大神君だって、初戦の割には良い動きしてたわよ」
「え…?いや、それほどでも…!」
「ぷくく…、愛の力は偉大ですなぁ!」
「へぇ、隊長ってああいう人が好みなのかい?」
「いや…、〜〜そ、それは…!」
むっとなるさくら。
「あ〜っ!!だめだよぉ!!お兄ちゃんはアイリスの恋人なんだからね!?」
「フフフ…、はいはい」
楽しく話す大神達を見るすみれとマリア。
「フン、あんなに鼻の下伸ばして…。これだから下郎は嫌ですわ」
無言で大神を睨むマリア。轟雷号から出てくる米田と三人娘。
「はぁ…、何とかなりましたね…。一時はどうなることかと思いました…」
「でも、終わりよければすべてよし、でしょ?」
「ですよね〜!帰ったら実家のおせんべい、お腹い〜っぱい食べちゃお!」
「あ、私にも頂戴!」
「あと、アイスクリンとカステイリャも用意して――」
大神を厳しく睨む米田。
(――大神…、お前はこれで本当に満足か…?)
気配がし、振り返る大神。無言で立ち去る米田。
「米田司令…?」
「どうかしましたか?」
「いや…、何でもないよ。すまない」
「じゃあ、大神君。帝国華撃団流のフィナーレで締めましょうか」
「フィナーレ?」
「えぇ、こうやるのよ。一緒にやってね。――勝利のポーズ…決めっ!」
大神とマリア以外ポーズを決めるあやめとさくら達。
「…へ?」
「ハハハ!ノリが悪いで、大神はん」
「わ〜い、初ポーズだね!」
「私、ずっと憧れてたんです〜!」
「おい、何ぼけっとしてんだよ?マリアも一緒にやろうぜ?」
「…水を差すようで悪いけど、私達、役に立った?」
隙間風が吹く。笑うあやめ。
「いいのよ。皆でやるから楽しいんじゃない」
「そ、そうですよね!そうですよ、皆さん!」
「〜〜でも、うち、脇侍一匹も倒しとらんし…」
「そんなの関係ないですよ!ね?大神さん」
「あぁ、これは帝国華撃団全員で勝ち取った勝利だからな。…ただ、皆がもっと俺の指示に従ってくれてれば、もっと気持ちよく……」
「〜〜あ〜もうっ!!何で皆さん、そうすぐ暗くなるんですかぁっ!?」
「あなたとカンナさんが騒がしすぎるんですのよ」
「〜〜今、あたいは関係ねーだろーがっ!!」
「もぉ皆、喧嘩は駄目!さ、もう一回いくよ〜!勝利のポーズ…決めっ!」
喧嘩をやめて笑うさくら達。ため息ついて立ち去るマリア。あやめを木の枝に立って見つめ、笑って去る叉丹。
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