★5−4★



(〜〜どうして邪魔するの?私はただおうちを守りたいだけなのに…)

お札の力が強くなり、苦しむ少女の霊を心配し、すり寄る犬の霊。

『〜〜大丈夫よ…。いつもみたいに追い払えば…〜〜うぅ…っ!!』

うずくまる少女の霊を見つけ、駆け寄る大神達。

「大丈夫か…!?」

『〜〜放っといて…!!早くここから出てってよぉ…っ!』


息苦しく犬を抱え、涙を流す少女の霊。光るお札を見つけるすみれ。

「このお札から邪悪な力を感じますわ…」

「それ、さっき脇侍が貼ってたやつだよな?」

「きっとそれがこの子を苦しめてる原因だ。手分けして剥がして回ろう!」

「了解!」「了解!」


各所のお札を斬ったり剥がしていく大神、すみれ、カンナを驚いて見る少女の霊、息苦しさが消える。再び集まる大神達。

「どうだ!?まだ苦しいか…!?」

『…ううん。……何で助けてくれたの…?』

「俺達は正義の味方だからね。君は安全な場所に隠れててくれないか?」

「後はお姉さん達に任せなさいな。必ず屋敷を守ってみせますわ」

「あたい達が来たからにはもう大丈夫だ!だからもう泣くな、な?」


カンナに頭をなでられ、嬉しそうに微笑む少女の霊。

『――うんっ!』

「よし、良い子だ。――行くぞ!黒之巣会を屋敷から追い払うんだ!!」

「了解!」「了解!」


★            ★


屋敷を見て回る大神、すみれ、カンナ。

「奴らはどこにいるんだろう…?」

「邪悪な波動からして、近くにいることは間違いなさそうですわね」

「あ…!そういや、さっき変な扉を見つけたんだ。――こっちだ!」


古びたドアの鍵穴を発見し、マスターキーを差し込むが、開かない。

「〜〜マスターキーでも開かない…!壊れてるのかな…?」

「あ…、先程の鍵は…!?」


古びた長い鍵を大神に渡すすみれ。ドアが開く。

「よし、開いたぞ!」

ハイタッチし合うすみれとカンナ。はしごを降り、ゆっくりマンホールを開ける大神達、庭で脇侍達を連れたミロクを発見。

「いましたわね…!」

「どうする?強襲かけるか?」

「…待て。今回は奴らの動きの調査も兼ねてるんだ。少し様子を見よう」

「オンキリキリバサラウンバッタ、オンキリキリバサラウンバッタ…!!」


楔を地中に打ち込むミロク。

「何だ、あれ…?工事でもしようってのか…?」

気配を感じて振り返る脇侍、大神達を見つけて銃を放つ。伏せる大神達。

「おやおや、いつの間にネズミが三匹かかってたんだい?」

「〜〜く…っ、やっぱ力ずくで行くか?」

「むやみに飛び出せば体力を消耗するだけだ。時間稼ぎしながら、隙をついて本部に連絡するんだ」

「了解ですわ…!」

「ん?…あー、そうか。お前らが帝国華撃団だね?」

「あぁ、そうさ!てめぇも黒之巣会の一味だな!?」

「そうとも。わらわは紅のミロク、黒之巣死天王の幹部さ。刹那と羅刹を倒した奴らだから、どんなにたくましい男の集団かと思ってたが…、フフン、何だい、ただの小僧と小娘じゃないさ」

「まぁ、ご自分に若さがなくなったので、妬んでらっしゃいますのね?」

「〜〜何だってぇっ!?もう一ぺん言ってみなっ!!」

「あらまぁ、ホホホ…、歳取って耳まで悪くなってしまわれたのかしら?」

「〜〜き〜っ!!いちいち腹の立つ小娘だねぇっ!!」


キネマトロンで連絡を試みるカンナ。通じず。

「〜〜くそっ、繋がらねぇよ…!」

「フフン、無駄だよ。ここは磁場が定まってないんだ。助けは呼べないよ?」


紅蜂隊を召喚し、孔雀に搭乗するミロク。周りでひざまずく紅蜂隊。

「〜〜光武…!?黒之巣会も人型蒸気を使うのか…!?」

「あら、私のはあんなにセンス悪くありませんわ」

「ホホ…、怖気づいたかい?こっちはもう目的を果たせたから、ここには用ないんでねぇ。――屋敷共々、焼き払ってやるよっ!!」


襲ってくる紅蜂隊の先陣がロケットランチャーで撃たれ、爆発。

「〜〜な…っ、何者だいっ!?」

戦車の上からロケットランチャーを構えている薔薇組。菊之丞に驚く大神。

「きっ、君は…!」

「知らなければ教えてあげましょう。私達は愛と美の秘密部隊、その名も帝国華撃団・薔薇組よ!!」


決めポーズする薔薇組に苦笑する大神達とミロク。

「…あんたらの知り合いかい?」

「〜〜知りませんわよ、あんな変人集団っ!」

「――破邪剣征・桜花放神!!」


桜吹雪で消えていく紅蜂隊。翔鯨丸から降り立つさくら達の光武。

「翔鯨丸ですわ…!」

『お待たせ、大神君!さぁ、光武に乗って反撃よ!』

「了解しました!――よし、一気に駆け抜けるぞ!!」

「了解!」「了解!」


マンホールから飛び出し、駆け抜ける大神、すみれ、カンナ。

「〜〜させるか…っ!!――いよおおお…!雷破あああっ!!」

雷をよけながら走る大神達。足がもつれ、転ぶすみれ。

「すみれ君…っ!!」

「あっはははは…!わらわの雷で黒コゲになっておしまい!!」

「きゃああああっ!!」


雷を落とされそうになったすみれをかばうマリアと紅蘭。

「スネグーラチカ!!」

「行っけ〜っ!!ちびロボ軍団!!」


足元を凍らせ、ちびロボ達に動きを封じられる孔雀。

「ここは任せて、早く翔鯨丸に向かいなさい!」

「あ、あなた達…」

「〜〜すみれぇぇぇっ!!」


すみれを肩に担ぎ、走るカンナ。

「〜〜ちょ、ちょいとカンナさん…っ!?」

「どうだ?仲間っていいもんだろ〜!」

「〜〜あ、あれぐらいの攻撃、一人でよけられましたわ…」

「あ〜、そうかい。へへっ、しっかりつかまってろよ!――どりゃあああ!!」


すみれを担ぎながら脇侍達に回転蹴りしていくカンナ。目が回るすみれ。脇侍達を斬りながら走る大神に爪を振り下ろす紅蜂隊を攻撃する薔薇組。

「頑張って〜!私達がついてるわ〜!!」

(〜〜い…、一体何なんだ、あの人達は…?)

「お兄ちゃ〜ん、こっちこっち〜!!」


手を振るアイリスの元へ着き、ダストシュートに飛び込んで戦闘服になる大神、すみれ、カンナ、光武に搭乗。

「三機とも起動しました!」

「よし、――帝国華撃団、出撃だ!」

「了解!」「了解!」


翔鯨丸から飛び出していく大神達の光武。既に紅蜂隊を倒し終えている。

「何だ、もう倒しちまったのか?」

「えぇ。…でも、簡単すぎるわ。何か裏があるのかも…」

「――お〜っほほほほ…!その通り!!」


紅蜂隊の残骸から霊力を吸収し、霊力が増加する孔雀。

「〜〜れ…っ、霊力が増えてってるよ…!?」

「ホホホ…!馬鹿な小娘共だねぇ!紅蜂隊は最期まで女王蜂に尽くすものなのさ!――さぁて、一気にケリをつけるとしようかねぇ…!!」


強力な雷を花組の周囲に落としていくミロク。

「きゃああああっ!!」

「うわああああっ!!」

「お〜っほほほほ…!!トドメだぁっ!!」


胸に雷をためる孔雀。少女の霊がオーラを飛ばし、動かなくなる孔雀。

「な、何…!?〜〜く…っ、動け!動かんか、孔雀っ!!」

「ど、どうしちゃったんでしょう…?」

『――今のうちに早く…!』


少女の霊の声が聞こえる大神、すみれ、カンナ。

「ありがとう…!――すみれ君、カンナ!」

「おうよ!――行くぞ、すみれ…!」

「私の足を引っ張らないで下さいましね…!」

「〜〜なっ、何で動かないんだよぉ!?……あ」


走ってくるすみれとカンナに慌てるミロク。

「神崎風塵流・桐島流合体奥技・一百胡蝶撃!!」「神崎風塵流・桐島流合体奥技・一百胡蝶撃!!」

「ちょ、ちょっと待――!〜〜きゃあああああ〜っ!!」


すみれとカンナの合体攻撃で爆発する孔雀。傷だらけで出てくるミロク。

「〜〜これで勝ったと思わないことだねぇ!?次こそは必ずわらわの前にひざまずかせてやる…っ!!」

瞬間移動するミロク。カンナが持つ宝石が光り、少女の両親の霊が現れる。ビビり、抱き合うさくらとアイリス。現れ、両親に抱きつく少女と犬の霊。

『〜〜パパ、ママ…!!』

「よかったな」

「ご両親と仲良くね」

『――うんっ!ありがとう…』


微笑み、両親と犬と共に消えていく少女の霊。

「成仏…できたのかな?」

「あぁ、きっと大丈夫さ。あ〜、一件落着だ!く〜っ、まだまだ暴れ足りないぜ〜!」

「その…、カンナさん、〜〜先程は…」

「あぁ、気にすんなよ。あたい達は仲間だ!助け合うのは当然だろ?」

「カンナさん…」

「見てみぃ!今まででいっちゃん良い雰囲気やでぇ〜!」

「えへへっ、これで今度の舞台も大成功だねっ!」


背中に触られる感触がし、恐る恐る振り返る大神。抱きついてる菊之丞。

「大神さんの背中…、あったかいです…!」

「〜〜う…っ、うわああ〜っ!!出たあああ〜っ!!」

「――出たとは失敬ですねぇ」


米田と共に来る琴音と斧彦。大神を抱きしめ、頬にキスする斧彦。

「きゃ〜ん!一郎ちゃ〜ん、無事でよかったわ〜ん!!」

「〜〜う…っ、うわああああっ!?」

「斧彦!気持ちはわかるけど、まずはきちんとご挨拶なさい」

「あらやだ、ごめんなさいねぇ、私としたことが…。私、薔薇組隊員・太田斧彦よ〜ん!よろしくね〜、一郎ちゃ〜ん!!」

「〜〜うわあああっ!!だから、くっつかないで下さああ〜いっ!!」

「〜〜斧彦さんばっかりズルいです!大神さんを返して下さいよぉ…!」

「〜〜じゃ、じゃあ…、君は幽霊じゃないんだね…?」


実体のある菊之丞の頭に恐る恐る触れる大神。

「きゃっ!そ、そんな…!皆さんの見ている前で大胆な…!」

「ほぉら菊ちゃん、あなたもご挨拶なさい!」

「は、はい…!丘菊之丞と申します。以後、お見知りおきを、大神さん!」

「〜〜あ…、こ、こちらこそ…。その…、さっきはありがとう…!」


引きつりながら微笑む大神の笑顔に真っ赤になり、よろめく菊之丞。

「どう、菊之丞?憧れの大神少尉に会えた感想は?」

「はふぅ…、素敵すぎですぅ…!」

「〜〜な…っ、何なんですの、この一風変わった方々は…?」

「こいつらは薔薇組と言って、れっきとした帝国華撃団の一員さ。少々変わった奴らだが、武道の腕や情報収集の手際は大したもんなんだぜ?」

「こう見えても陸軍が誇るエリート達なのよ。磁場が狂って通信できない代わりに、彼らがあなた達の様子を逐一報告してくれてたってわけ」

「そうか…!だから、連絡しなくても翔鯨丸が来たんですね?」

「そういうこった。ほれ大神、ぼけーっとしてねぇで、挨拶はどうした?」

「あ…、申し遅れました。自分は海軍少尉・大神一郎です。これからよろしくお願い致します…!」

「んまぁ〜っ!んも…、もう好きにして〜!!」

「格好良いです、大神さん!ますます惚れ直しちゃいました!」

「さすがは海軍少尉殿。その洗練された物腰と優しさ、そして、乙女なら誰でもときめいてしまうその笑顔…。――男でも惚れるわぁ…!」


扇子を大神の顔に当て、見つめる琴音。青ざめる大神と花組。

「ねぇ〜、この人達、男の人…?それとも女の人なの?」

「アイリス、世の中にはな、いろんなタイプの人間がおるもんなんやで」

「――なぁなぁ隊長、早くいつものアレ、やろうぜ!」

「〜〜そ、そうだな…。じゃあ、すみれ君とカンナ、頼むよ」

「お任せ下さいまし。では、参りますわよ!せーの…っ!」

「勝利のポーズ、決めっ!」「勝利のポーズ、決めっ!」


ポーズを取る花組。抱きついてくる薔薇組に青ざめる大神。屋敷の屋根の上から見て笑い、屋敷を飛び越えていく叉丹を隠れて見つめる加山。

★            ★


大帝国劇場・食堂。料理ができるのを待つ米田、あやめ、三人娘。幽霊屋敷の記事を新聞で読む米田。

「あれ以来、幽霊騒ぎはなくなったようだな」

「えぇ、無事に成仏してくれたみたいですね」

「わ、私までいいのかしら…?」

「いいのよ!かすみだってたまにはゆっくりしなくっちゃ!」

「う〜、楽しみですねぇ〜、花組さんのお料理!あ、マリアさんのはぜ〜んぶ私のですからねぇ〜!」

「〜〜はいはい…」

「――お〜い、できたぜ〜!」


厨房から出てくるエプロン姿の花組。カレー鍋を持って来る大神。

「わぁ、美味しそぉ〜!」

「お待ちどう様。さぁ、召し上がれ」

「うん、なかなかうめぇじゃねぇか!皆、良い嫁さんになれるぞ」

「あははははっ!お世辞がうまいねぇ、支配人も!」


ムッとなり、突き飛ばして自分の料理を出すすみれ。

「カレーだけじゃなく、こちらのサラダも召し上がれ!新鮮なお野菜をたっぷり使いましたのよ!」

ドロドロしたサラダに青ざめる米田達。

「〜〜こ、このドロドロしたものは…?」

「納豆をミキサーにかけましたの。栄養満点でしょう?おっほほほほ…!!」

「それじゃあ、私達も頂きましょうよ!」

「皆で食べたら、おいしさも2倍だもんね〜!」

「皆で食べたら…か。あはは、ええこと言うなぁ、アイリス」

「えへへっ、だって、本当だもん、ね〜!」


楽しく食べるさくら達を眺め、微笑んで食べるすみれ。

★            ★


舞台。『愛はダイヤ』初日で上演中。

「『――今月今夜のこの月をきっと僕の涙で曇らせてみせる!』」

「『あぁ、貫一さん…!』」

「『宮さん!』」


すみれとカンナの熱演に袖で見守る大神とさくら達。満足に頷く江戸川。

中央の客席に座る忠義と重樹に気づくも、芝居を続けるすみれ。上演終了し、拍手に包まれる舞台。来賓玄関から帰る忠義と重樹を追いかけるすみれ。

「〜〜待って下さいまし…!」

「おぉ、すみれ。素晴らしい舞台じゃったぞ!さすがはわしの孫じゃ」

「ふふっ、もう、おじい様ったら…」


すみれを抱きしめる忠義。重樹を見つめ、目を伏せるすみれ。

「……あの…」

「…良い芝居だった。これからも頑張れよ」

「…!――はい…!」


涙ぐみ、微笑むすみれをテラスから見守る大神とさくら達。

「めでたしめでたし…ですね!」

「だな!――お〜い、すみれの父ちゃ〜ん!!」


テラスから身を乗り出して叫ぶカンナに振り返る重樹。

「すみれもあんたのこと、大好きだからな〜!安心して仕事頑張れよ〜!!」

「〜〜ちょっ、ちょいとカンナさん!?」

「ハハハ…、すみれも良い友達を持ったな」


微笑み、乗車する重樹と忠義。遠くなっていく車を見つめるすみれの隣に来るカンナ、大神、さくら達。

「な、呼んでよかったろ?」

「〜〜まっ、まさかカンナさんがお父様達を…!?」

「おう!娘の晴れ舞台を父ちゃんが見なくてどうすんだ!なぁ、隊長!」

「ハハハ…、そうだな」

「その…、――あ…、ありがとうございました…」

「え…?い、今、何て言った!?」

「〜〜あ〜もう、二度は言いませんっ!!私のお父様は神崎グループの社長なのですから、庶民が馴れ馴れしく話しかけないで下さいましっ!」

「〜〜何だとぉっ!?人の親切心を踏みにじりやがって…!!」

「あら、別に誰も頼んでませんもの」

「〜〜く〜っ、この冷血蛇女めぇっ!!」

「…あーあ、また始まっちゃったね」

「ふふっ、でも、いいじゃない、すみれさんとカンナさんらしくて」


喧嘩し続けるすみれとカンナを笑って見守るさくら達を照らす夕日。

第5話、終わり

次回予告

やってきました、夏休み!
今度、花組皆で熱海に温泉旅行に出かけるんですよ!
え?花組に新入隊員が来るんですか!?
えぇっ!?だけど、花組が解散っ!?
い、一体どういうことなんでしょう…?
次回、サクラ大戦『孤高のクレオパトラ』!太正桜に浪漫の嵐!
ラチェット・アルタイル。そんなわけだから、よろしくね!


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