★5−2★



黒之巣会・本拠地。イラついて玉座に座る天海に頭を下げる叉丹とミロク。

「〜〜ええい!!一体このザマは何だ!?」

「申し訳ございません。刹那も羅刹もあの小娘共を侮っていたようで…」

「〜〜死んだ奴らはどうでもよいっ!!これは死天王の連帯責任じゃぞ!?これ以上失態を繰り返せば、わし自ら貴様らの首をはねてくれるわっ!!」


鋭いブーメランを飛ばす天海。慌てて伏せるミロクの後ろで切れる柱。

「〜〜こっ、この紅のミロクにお任せ下さい!!黒之巣会きっての式神使いと言われた実力をとくとご覧頂きましょう…!!」

「ほぉ、式神か。くくっ、では、今回こそ期待していいのだな?」

「もちろんでございます!このミロク、天海様の御為に必ずや帝国華撃団を葬ってみせましょう…!!」

「よく言った、ミロクよ。我にどれ程忠誠を誓っているか見せてもらおう」


高笑いする天海にひざまずきながら鼻で笑う叉丹。

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深夜。深川の屋敷。脇侍達を連れて屋敷を見上げるミロク。

「フフッ、このゾクゾクするような波動…。――ここみたいだねぇ」

楔を出現し、埋め込もうとするミロクだが、屋敷からの光に弾かれ、失敗。

「チッ、厄介な屋敷だねぇ…。――脇侍!」

屋敷を取り囲み、壊そうとする脇侍達、屋敷からの光に機能停止していく。

「〜〜フン、この私に抵抗しようだなんて面白いじゃないか!…まずはこのオンボロ屋敷を甚振ろうとしようかねぇ…」

妖しく笑うミロクを屋敷から不安に見下ろす少女の霊。

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支配人室。酒を飲む米田。カーテンから月光が差し込み、現れる加山。

「――ご苦労さん。んで、何かわかったか?」

「はっきりとしませんが、おそらく何らかの準備を進めているのでしょう」


部屋に入り、今までの襲撃地点が印された地図を米田に渡す加山。

「なるほど…。確かに無作為に襲撃してるとは思えんな…」

「えぇ…。引き続き、調査にあたります」


月が暗くなると同時に音なく立ち去る加山。地図を真剣に見つめる米田。

「……今度は深川…か」

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翌朝。鍛練室。サンドバッグを叩くカンナ。プールから出た大神と会う。

「オッス!水練かい?朝早くからご苦労さん」

「カンナこそ朝から精が出るね。いつもやってるのかい?」

「あぁ、朝の鍛練をやらないだけで一日の動きが違ってきちまうんだ。舞台も戦闘も体力作りは基本だからな!」

「ハハハ…、そうだな」

「隊長も一緒にどうだ?組み手、付き合うぜ!」


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柔道室。道着を着て空手で戦う大神とカンナ。

「――チェストオオ〜ッ!!」

カンナの後ろ回し蹴りを防御する大神だが、足を払われ、倒れる。

「ハハハ…!これぐらいでだらしねぇなぁ」

「〜〜カ…、カンナが強すぎるんだよぉ…」

「あたいなんかまだまださ。牛殺しマスターしてねぇもん」

「牛殺し…!?〜〜何だかすごそうな名前だな…」

「琉球空手桐島流に伝わる奥技さ。歴代継承者の中でマスターできたのは親父だけなんだぜ?」

「へぇ、カンナのお父様はすごいんだな」

「だろ?親父はもう死んじまったけどさ、鍛練していると、未だに親父の怒鳴り声が聞こえてくるんだ、『カンナ、男の意地を見せてみろ』って。ったく、あたいは女だっつーのによ!あっはははは…!」

「良いお父様だったんだな」

「どうかな?親父は本当は息子が欲しかったみてぇだし、女のあたいに桐島流を継承するのも、最初はためらってたみたいだからな…」

「継承者に男も女も関係ないさ。カンナはこうやって立派に継承してるんだし、男顔負けの強さだって――」

「あぁ!?あたいが女じゃねぇみたいってことか?」

「〜〜い、いや、そうじゃなくて…。カンナが一生懸命鍛錬を頑張る姿は、きっと天国のお父様を安心させてると思うよ」

「ハハ、そっか。ありがとな、隊長。…よし、飯までもうひと踏ん張りだ!」

「朝食、食べてなかったのか?」

「食ったよ?あたいが言ってるのは朝と昼の間の飯さ!」

「〜〜な、何食食べる気だよ…?」


視線を感じ、廊下を見る大神。目が合い、赤くなって隠れる菊之丞。青ざめ、廊下で探す大神だが、いない。あやめの言葉を回想し、青ざめる大神。

『――もしかして、幽霊じゃない?』

「〜〜まずい…。今度ははっきり見えた…」

「ん?どうした?」

「〜〜あ…、いや、何でもないよ。あははは…」


入ってくるさくら。

「あ、ここでしたか!司令がお呼びです。作戦指令室に集合だそうですよ」

「え〜?せっかく飯食おうと思ったのにぃ〜…」


外の茂みから見つめてくる菊之丞と目が合い、青ざめる大神。照れて隠れるが、再び顔を出し、うっとり見つめてくる菊之丞。頬を引っ張る大神。

「〜〜夢…じゃない…」

「…大神さん?」

「〜〜あ…、そ…、それじゃあ、行こうか…!」


★            ★


川崎・神崎重工工場。働く従業員達の仕事を見学するすみれ。

「――何の用だ?」

作業着を着た重樹がすみれの後ろに来る。

「…見学なら服装を考えろ。機械に巻き込まれるぞ」

離れ、従業員達に指示する重樹を見つめ、イライラして車に乗るすみれ。

「〜〜自分こそ社長のくせに、もっとマシな格好ができないのかしら?あれでは工場長にしか見えませんわっ!」

「社長とお食事でもなさったらいかがです?」

「…フン、どうせまた忙しいだの何だのと理由をつけてくるに決まってます。〜〜もう結構、車を出して頂戴!」


帽子を被り直し、車を発進させる岡村。遠くなっていく工場をガラス越しに見つめ、回想するすみれ。見学中に手をやけどし、泣く幼いすみれ。

『どうした…!?』

『あ、社長…!〜〜お嬢様が半だごてに触ってしまって…!!』


すみれを抱え、水で冷やして手当てする重樹。

『まったく、どうしてお前はおとなしくしてられないんだ!?』

『ぐす…っ、だって…、お父様と一緒にいたくて――』

『言い訳はいい!――もう家に帰りなさい。仕事の邪魔だ』


目を見開く幼いすみれ。離れ、離れていく重樹の背中。回想終了し、渡せなかった『愛はダイヤ』のチケットを寂しく見つめるすみれ。

★            ★


作戦指令室。モニターに幽霊屋敷の写真。青ざめる大神。

「お〜!いかにも出そうですなぁ!」

「ここを調査するんですか?」

「あぁ。ここ数日、この屋敷の周囲で不穏な妖力を感知している。それに深夜に脇侍が出現していたことも調査で明らかになったからな」


無言で入ってくるすみれ。

「すみれ、どこに行ってたの?」

「あら、プライベートなことまでいちいち報告しなければなりませんの?」

「収集がかかったらすぐ集まる。隊員として当然でしょう?」

「あらまぁ、お厳しいこと。これでは軍隊と変わりありませんわね」

「おめぇなぁ、少しは反省しろよ!」


マリアとカンナにつんとするすみれ。小声でさくらに話しかける紅蘭。

「…いつにも増してゴキゲンナナメやねぇ、すみれはん」

「何かあったのかしら…?」

「…あ〜、ゴホン。まぁとにかく、黒之巣会が何か企んでいるのは間違いないだろう。それを調査し、事前に潰してやろうってわけだ!」

「〜〜うぅ〜…、でも、そのお屋敷、良くない力を感じるよ?」

「えぇ。調査でもわかってるわ、ご近所でも評判の『幽霊屋敷』って」

「〜〜幽霊っ!?」

「…どうかしましたか、隊長?」

「〜〜いや…ははは…、な…、何でもないよ…」

「明治時代の有名な華族のお屋敷だったんだけど、事業に失敗した長男と妻は自殺。一人娘も両親を失ったショックのあまり、間もなく病死したそうよ。…それからみたいね、幽霊騒動が出るようになったのは」

「……何だか可哀相ですね…」

「幽霊か…。うちとしては知的好奇心くすぐられるけどなぁ…」

「え〜?アイリスは、やだぁ!〜〜お化け、怖いもぉん…」

「フン、馬鹿馬鹿しい。幽霊なんているわけありませんでしょう?」

「絶対いるよ〜っ!きっとお屋敷に近づく人間をみ〜んな殺しちゃうんだよ〜っ!?〜〜ああ〜ん、怖いよぉ〜っ!!」

「ホホホ…、お子ちゃまはいいですわねぇ、想像力が豊かで」

「〜〜アイリス、子供じゃないもんっ!」

「なら、お前一人で行けよ。ま、幽霊もお前が相手なら逃げ出すかもな〜」

「〜〜何ですってぇっ!?」

「ほれほれ、今は会議中だぞ。――大神、お前はどう思う?」

「〜〜ゆっ、幽霊が実在するかどうかですか…?」

「はぁ?何故、黒之巣会がそこをうろついてるかだ」

「あ、あぁ…。自分の推測では、屋敷に侵入しようとしているも何らかの理由で入ることができず、足踏み状態…ということではないでしょうか」

「なるほど、お前もそう考えたか」

「では、この中から3名、調査にあたってもらうわ。――大神君、すみれ、カンナ、やってくれるわね?」

「〜〜ハァ〜ッ!?」「〜〜ハァ〜ッ!?」


同時に立ち、あやめに詰め寄るすみれとカンナ。

「冗談じゃねぇ!!何でこんな嫌み女と一緒にやんなきゃなんねぇんだ!?」

「〜〜それはこちらの台詞ですわ!私は降ろさせてもらいます!代わりにさくらさん、お行きなさい!」

「え?あ、はい!真宮寺さくら、粉骨砕身の覚悟で――」

「さくらはいい!――すみれ、命令には従ってもらうぞ。帝撃のトップスタァと豪語するからには、これくらい朝飯前だろうからな」


悔しく米田を睨み、つんとするすみれ。青ざめる大神を覗き込むあやめ。

「大神君はやってくれるわよね?」

微笑み、見つめてくるあやめに赤くなり、立って敬礼する大神。

「りょ、了解しました…!大神一郎、必ずや任務を果たしてみせます!!」

「まぁ、さすがは隊長さんね!」

「あはは〜、大神はん、いいように乗せられとるなぁ?」

「…ああいう笑顔に弱いのね」

「…マリアはん?」


赤くなって紅蘭から目をそらすマリア。笑顔で大神と肩を組むカンナ。

「よろしくな、隊長!…これで誰かさんがいなきゃもっといいんだけどな」

「〜〜ですから、それはこ・ち・ら・の台詞ですわっ!!」

「〜〜二人ともっ!ちゃんと協力しないと命取りに――」

「〜〜少尉はお黙りになっててっ!」

「〜〜隊長は引っ込んでなっ!」


大神を突き飛ばし、喧嘩し続けるすみれとカンナにため息つく花組。

「〜〜本当に大丈夫でしょうか…?」

「ぶ〜、アイリス、お兄ちゃんとだったら行ってもよかったな〜」

「よし、決まりだな。では、本日の午後2時より早速――」

「〜〜司令、大変です…!」


米田とあやめに耳打ちするかすみ。話し合う3人に顔を見合わせる花組。

「――すまねぇ、調査は延期だ」

「え…っ!?な…、何でですか!?」

「なぁに、ちょいと緊急の会議が入っただけさ」

「私達は少し出かけるけど、あなた達はいつも通り稽古してて頂戴ね」

「え?あ、あの…」

「ごめんなさい。お昼の支度、まだなんですけど…」

「あぁ、いいって。あたい達で作るからさ!」

「私達のことはいいから、早く行ってらっしゃい」

「すみません。お願いします…!」


会釈し、あやめと米田と共に出ていくかすみ。顔を見合わせる花組。

★            ★


食堂。エプロンを着て料理する花組。食器を並べるさくらとアイリス。にんじんを切るマリア。スパイスを選ぶ紅蘭。カレーを煮込むカンナと大神。

「急に調査が延期だなんて…。何があったんでしょうね?」

「…やっぱり、あの屋敷と何か関係があるのかしら?」

「〜〜うわ〜ん!!絶対、幽霊の呪いだよぉ〜!!」

「米田はん達の反応、尋常やなかったしなぁ。マジでやばいんとちゃう?」

「でも、さっきの話聞いたろ?可哀相じゃねぇか、屋敷の人皆さ。きっと無念で成仏できねぇんだよ…。――隊長、味見してくれるか?」


皿を持ってボーッと青ざめている大神の顔を覗き込むカンナ。

「…隊長?……もしかして…幽霊、苦手なのか?」

動揺し、皿を割る大神。

「あ〜っ!お兄ちゃんがお皿割った〜!」

「もう、何やってるんですか…!!」


ほうきとちりとりで割れた皿を片づけるマリア。

「〜〜す、すまない…」

「ホホホ…、まさか皆さん、本気で信じてらっしゃいますの?無駄話してないで早く作って頂戴。稽古の時間が遅れてしまいますわ」

「へいへい、お待たせしました、お嬢様。ったく、少しは手伝えよなっ!」


一人手伝わず、イライラ待つすみれの前に乱暴にカレーの皿を置くカンナ。

「…何ですの、これ?」

「何って…、ライスカレーですけど?」

「んまぁ!ライスカレーなんて庶民が食べるものでしょう?それにこの見た目と彩りの無さ…。私の口には合いませんわ。作り直して頂戴」

「〜〜はぁ!?てんめぇ、もういっぺん言ってみろ…!!」

「あら、聞こえませんでした?――『こんな不味そうなライスカレーなんて私の食事にふさわしくありません!今すぐ作り直して頂戴!!』」

「〜〜何わけわかんねぇことぬかしてやがる、この超絶ワガママ蛇女ぁ!!」

「…あ〜あ、また始まっちゃった」

「すみれ!ワガママ言ってないで、食べちゃいなさい!」

「そうだ、食べ物を粗末にしちゃいけないぞ。このカレーは海軍仕込みなんだ。見た目は悪いかもしれないけど、味はなかなかいけると思うよ」

「フン、一流シェフが作ったものならともかく、普段料理を作らない方々が作った物なんて、とても口にできませんわ」


鍋をすみれの前に乱暴に置くカンナ。

「だったら、てめぇで作りな!人が真心込めて作った料理のありがたみもわからねぇ奴に料理を食う資格なんてねぇよ!!」

カンナを睨み、つんとして出ていくすみれ。

「あ、すみれさん――!」

「いいって、さくら。あんな奴、放っとけ」

「むぐむぐ…。こんなにおいしいのにね〜」


つまみ食いするアイリス。顔を見合わせ、ため息つく大神とマリア。

★            ★


花やしき支部。ベッドに横たわり、幻想に喚く月組隊員の治療をする夢組。ガラス越しに見守る米田、あやめ、加山。

「屋敷に入った途端にこれ…か」

「えぇ、あそこには想像以上に強い怨念があるようです…」

「ある意味、黒之巣会以上に厄介かもしれませんね…」

「そうだな…。奴らが手こずるのもわかる気がするぜ。――あやめ君は先に戻っててくんな。何かあったら連絡してくれ」

「了解しました」


一礼し、あやめが出ていくのを見届け、米田に話しかける加山。

「……司令、もう一つお伝えしたいことがあるのですが…」

叉丹が映った写真を見せる加山。驚き、目を見開く米田。

「黒之巣会の幹部と名乗る男です。しかし、本人かどうかはまだ…」

「……まだ…あやめ君には黙っててくれないか…?」

「…了解しました」

「……俺の勘違いならいいがな…」


写真の叉丹を眉を顰めて見つめる米田。

★            ★


作戦指令室。大神、すみれ、カンナに話す軍服のあやめ。

「当初の予定通り、明日の午前9時より屋敷の調査を開始します。しっかり準備しておくようにね」

「〜〜あの…、先程の会議は何だったんですか…?」

「ごめんなさい、まだ詳しくは教えられないの。(月組の)正体がバレたら任務に支障が出ちゃうから…」

「――!!〜〜し…っ、正体って…、変装して行かないと身元がわかって呪い殺されるってことですか…!?」

「え?」

「…もう戻ってよろしいかしら?私、今度の主役ですから、忙しいので」

「えぇ。それじゃあ、明日は頼んだわよ」

「へ〜い…」


冷めた顔で出ていくすみれとカンナ、左右別々に歩いていく。

「困ったわね…。口喧嘩もしなくなる程、仲が悪くなるなんて初めてだわ…」

「そうですね…。〜〜うわああっ!!」


大きな音がし、ビビってあやめに抱きつく大神。

「ふふっ、大丈夫よ。蒸気演算機が回転してるだけ」

「そ、そうか…。――あ…!〜〜す、すみません…!!」


赤くなり、慌ててあやめを離す大神。あやめも少し赤くなる。

「い、いいのよ…。隊長だって怖い物があって当然だわ。…昔から?」

「えぇ。小さい頃から姉が怪談や妖怪の話をしたり、足のない女がいるとか首がない子供がいるとか言うのをよく聞かされて…」

「そうなの…。じゃあ、お姉さんにも霊力が?」

「はい、俺の一族は皆、霊力が高いみたいです」

「へ〜ぇ、ふふっ、また大神君のことがわかっちゃった!」

「〜〜うぅ…、俺は知られたくなかったことですが…」

「ふふっ、でも、そういう恐怖心があったら、余計に霊を呼び寄せちゃうわよ?隊長さんならしっかりしなさい!男の子でしょ?」


大神の額を小突くあやめ。

「〜〜す、すみません…。努力はしてるんですが…」

「…ねぇ、何故、司令は大事な調査ですみれとカンナを組ませたと思う?」

「それは…、今度の舞台に向けて協調性を強化させたいから…ですか?」

「半分は正解ね。二人はああ見えて本当は誰よりお互いのことがわかってると思うの。生まれも育ちも違うけど、似た部分も多いと私は思うわ」

「あの二人が…ですか?一体どこが…?」

「ふふっ、それは自分で見つけなさい。隊長に必要なのは冷静な判断力と的確な指示能力、そして、常に隊員を思いやる温かい心よ。すみれとカンナの心が一つになれば幽霊だって逃げ出していくはずだわ。頑張ってね!」


大神の頭をなで、出ていくあやめ。赤くなって頭をさする大神。

★            ★


「『――今月今夜のこの月をきっと僕の涙で曇らせてみせる!』」

「『あぁ、貫一さん…!』」


舞台。稽古中のすみれとカンナの冷めた様子に頭を抱える江戸川。

「う〜ん…。それじゃあ10分、休憩にしようか」

離れて別行動をとるすみれとカンナを客席から見るさくら達。

「〜〜稽古以外、全く口きかんようになったな…」

「でも、今回の舞台はあの二人の息にかかってるわ。初日まで日もないし、何とか心を通わせてくれるといいんだけど…」

「でも、さっきのはすみれが悪いよ!アイリスもお手伝いしたのにさ〜」


見回りに来る大神。

「稽古、ご苦労様」

「あ、お兄ちゃん!アイリスも見回り行く〜!」

「ダ〜メ。他人の稽古を見るのも勉強よ?」

「ぶ〜。だって、すっごくつまんないんだも〜ん…」

「…二人の様子はどうだい?」

「〜〜相変わらず…」

「う〜ん、こりゃ今までで一番の大喧嘩やなぁ…」


顔を合わさず、会話しないすみれとカンナを心配に見つめる大神。


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