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「大神と藤枝姉妹のセクシー旅行記〜ダブル・ハネムーン編〜」

〜2日目・午後
(かえでとデート編)・その3〜



どこまでも続く暗闇をただひたすら進んでいく。永遠に続くとも思えるような真っ暗闇…。太陽の光も海の音も全く聞こえない静寂の空間…。もし、一人でさまよう羽目になったら、誰でも最終的に頭がおかしくなってしまうだろう…。俺だったら、こんな場所に一日だっていたくない…!

その時、バサバサバサ…ッ!!

「きゃああっ!!」

「うわ…っ!!」


驚いて尻餅ついたかえでさんに引っ張られ、俺も尻をついた。俺達の上を大量の羽音が過ぎていく。どうやら、コウモリ達がランプの明かりに驚いて、逃げたらしい。

「何だ、コウモリか…」

「〜〜んもう、びっくりしたじゃない…」


かえでさんは後ろに体重をかけ、M字開脚の姿勢で座っていたので、ダオダボシャツからビキニの下がちらっと見えていた。かえでさんのパンチラなんてなかなか拝めないからな…。〜〜って、またもや何を言ってるんだ、俺は…!?

「ほら、行くわよ」

本人はささやかな男の楽しみなんて気づくわけもなく、さっさと立ち上がってしまった。

「〜〜はい…」

「う〜ん…、やっぱり、手を繋ぐだけじゃ限度があるわね…」


かえでさんはウエストバッグから普段は小道具で使用する縄を出すと、俺と自分の手首に巻いた。例えるなら、手錠を二人の左右反対の手に一つずつかけ、二人を離れられないようにするような縛り方だ。

「これで安心ね。こんな暗闇で離れたら大変ですもの」

と、かえでさんは満足そうに俺と腕を組んできた。

コウモリに驚いたせいか、Tシャツ越しにかえでさんの乳首が勃っているのがわかる。胸の柔らかい感触と乳首の突起が腕に当たる感触を、俺は暗闇で見えないことをいいことに思い切りデレデレした。さくら君がもしこの場にいれば、また背中をつねられていたことだろう…。

〜〜こんな時なのに、男って本当単純だよな…。それとも、俺の性欲が強いだけなんだろうか…?

「…どうかした?」

「〜〜い、いえ…。では、奥に進みましょうか」


縄で繋がった俺とかえでさんはランプを頼りに、また先に進み始める。

「――随分奥まで続いてるんですね…」

「そうね…。まるで闇に呑みこまれていっているみたい…」


奥に進むにつれ、闇の深さと邪悪な気配は増す一方だ。ここからは、もっと気を引き締めていかないと…!

すると、かえでさんが急にそわそわし出した。もじもじ体をくねらせ、落ち着かない様子だ。

「どうかしたんですか?」

「……自然が呼んでるの…」

「は…?」

「〜〜Nature calls me!!トイレよっ!」


トイレに行きたいというのは、英語で『Nature calls me=自然が呼んでいる』と言うらしい。サクラ大戦って本当に勉強になるなぁ〜(by カンナ)…って、呑気なこと言ってる場合じゃないか…。

「ト、トイレって…、洞窟にそんな場所ありませんよ…?」

「〜〜別にいいわよ、ここでするから…。恥ずかしいから、耳塞いでて…」

「わ、わかりました…」

「〜〜両方っ!」

「無理ですよ、これで縛られてるんですから…。平気ですよ、俺、こっち向いてますから」


かえでさんは不満気に背中を向けると、水着を下ろして、しゃがんだ。

シャアアアアア…。勢いよく水が岩にぶつかる音が洞窟内に響く。俺はちらっとかえでさんを見た。よほど我慢していたのか、尿意から解放され、とても気持ちよさそうだ。

「…そんなにしたかったんなら、もっと早く言えばよかったのに」

「〜〜言えるわけないでしょ?……好きな人の前でそんな恥ずかしいこと…。本当、女心がわかってないんだから…」

「ん?何か言いましたか?」

「〜〜何でもないわよっ!――終わったわ。ティッシュある?」

「はい。俺が拭いてあげますよ」

「え…?〜〜ちょ…っ!?きゃあああ…っ!!」

「片手だとうまくできないでしょう?ほら、ちゃんと足開いて下さい」

「あくうぅっ!!〜〜うぅ…、変態なんだから…」


俺はティッシュでかえでさんの股間を拭ってやると、ビキニを上げるのを手伝ってやった。

「〜〜こんなトイレも明かりもない所で生贄達は暮らしてたのね…」

「ひどい環境ですよね…。不衛生だから、病気も蔓延しそうですし…」

「……ノーマってね…、神なんて名ばかりで、本当は悪魔の如く、生贄の女達を延々と犯し続けたそうよ…。一度捕まったら最期…。休む間も与えず、その命が果てるまで、ずっと自分の玩具にしていたって…」


話しているうちに、かえでさんの顔色が悪くなった。もしかして、かえでさんも怖いのか…?…無理もない。どんなに毅然としているかえでさんも女性なのだ。もし、自分も生贄にされたらと想像するだけで怯えてしまうのは当然だろう。

「大丈夫ですよ。ノーマはもういません。マイアとメイミの姉妹が倒したんですから」

「でも、もし、何かのきっかけで地獄から甦っていたとしたら…?〜〜そうでもなければ、わざわざ幽霊の姿になってまで私達に訴えようとしないわよ…!」

「かえでさん…。用心するのはいいことですが、物事を悪い風に考えて、心を乱してはいけませんよ…。冷静でいないと、もっと悪いことが起きてしまうかもしれませんし…」

「ごめんなさい…。〜〜らしくないわよね…?でも、何だか妙な胸騒ぎがするのよ…。〜〜本当にこの洞窟に来てよかったのかしら…?」


神がかり的な力を持つ『藤』の名を連ねる藤枝家の人間である故、俺には感じられない何かを感じているのかもしれない…。いつもは男に負けないほど勝気なかえでさんも、今日ばかりは不安そうに瞳を潤ませている。

こういうギャップに男は弱いんだよな…。〜〜って、こんな時にまた俺は…。

「〜〜コホン…。――仮にノーマが生き返っていたとしても、俺があなたを守ります。生贄になんて絶対させませんから…!」

「大神君…。ふふっ、頼りにしてるわよ」


俺達は互いに寄り添い合い、奥に向かって歩みを進めた。

すると、ランプとは違う自然な光が前方から見えてきた。明るさに慣れなくて、目が眩みながら進んでいくと、地底湖のような広い水辺に出た。

「こんな所に湖が…!」

「向こうへ行くには、ここを突っ切るしかなさそうね」


俺はかえでさんに手を貸してやりながら、ゆっくり湖に入水した。俺は腰ぐらいまで水に浸かったが、かえでさんは胸のあたりまで浸かってしまった。

「〜〜シャツが濡れちゃうわ…」

「後で乾かせばいいですよ」


俺とかえでさんはゆっくり湖の中を歩いていく。

水は緑に濁っていて、中がよく見えない。これが活動写真だったら、ワニとかピラニアが出てきてもおかしくなさそうな感じだが…。

「――っ!?〜〜何かに足を触られた感じがするんだけど…」

「え…?」

「――あ…っ!〜〜ほら、また…。魚でもいるのかしら…?」

「早く向こう岸に渡ってしまいましょう…!」


俺は嫌な予感がして、かえでさんの手を引っ張り、水をかき分けて懸命に進んだ。だが、そこでできた波紋がかえって事態を悪化させることになった。今まで身を潜めていた無数の黒い影が一斉にかえでさんに向かってきたのだ…!

「きゃあああっ!!」

かえでさんは前屈みになって、ガクガク震えながら、俺にしがみついてきた。

「かえでさん…!?」

「〜〜な、何かぬるぬるしたものが下半身に纏わりついてきて…、〜〜いやああっ、中に…中に入ってきたぁぁ…っ!!」


俺は水中に手を入れ、手探りでかえでさんの前の穴に入った物体を掴もうとする。が、うなぎみたいにぬるぬるしていて、しかも体長が長く、思うように捕まえられない。そんな俺を嘲笑うかのように、同じ物体の別の奴がかえでさんの後ろの穴に潜り込んできた。

「かはああ…っ!!」

その一撃で、かえでさんは弓反りになって白目を剥き、足が止まってしまった。それを待っていたかのように、ウナギのような触手が何匹もかえでさんの周りで悪さし始めた。ある者は暴れないように足を広げさせて固定し、またある者は胸に巻きついて、弄ぼうとする。

「〜〜な、何なのよ、これ…!?あっ、あふぅっ、んあっ、んんんっ、ひぃぃっ、うひぃっ!!もうやめてぇ〜っ!!」

かえでさんが喘ぐ度に、同類の別の奴らが近づいてくる。奴らは俺には襲ってこない。どうやら、女性のフェロモンに惹かれて来るみたいだ。

「お…、大神…くぅ…ん、〜〜んはぁ…っ、助け…て…ぇ…っ」

このまま水中に居続けては、奴らの思うツボだ。奴らが活動できなくなる陸を目指そう…!

俺はかえでさんをお姫様抱っこの要領で抱え、バシャバシャ急いで走る。俺の動きに気づいたのか、かえでさんの前後の穴に刺さった触手は抵抗し、体を上下左右に激しく振って、暴れ始めた。

「いやああっ!!早く抜いてぇっ!!」

「もう少しですから、我慢して下さい…!」


泣き叫ぶかえでさんの気を少しでも和らげようと俺は手を強く握り、向こう岸へ上がった。そして、かえでさんを岸辺に寝かせ、彼女を苦しめている謎の物体の退治にかかる。

濃い紫色の、体長がうなぎやどじょうのように長い魚がかえでさんの前後の穴に頭を埋め、浜辺にうち上げられた魚のようにピチピチと体を震わせて暴れている。〜〜こんな気味の悪い魚、見たことがない…。この島にしか生息していないんだろうか…?

「お、お願い、早く…。はぁはぁ…、〜〜私…、おかしくなっちゃう…」

「大丈夫ですよ。今すぐに…!」


俺は魚の尾びれを掴み、引き抜こうとしたが、魚は抵抗をやめず、さらにかえでさんの奥へと侵入してしまった。

「あああああ〜っ!!〜〜何やってるのよぉっ!?」

「す、すみません…!」

「はぁはぁ…、〜〜あんっ、あっ、あっ、あっ…、――!!んああああ〜っ!!」


謎の魚に大事な穴を責められ、かえでさんは絶叫しながら喘いでいる。男としての本音を言えば、かえでさんの悶える姿をもっと見ていたい…!

――パシャッ!

「〜〜ちょ…っ!?何写真なんか撮ってるのよ…!?」

「〜〜その…、ノーマの洞窟に住む生物なら、調べれば何かわかるかと思って…」


〜〜『エッチなかえでさんを写真に収めておきたいから』なんて言ったら、殺されるからな…。

「〜〜そんなの抜いてからでも撮れるでしょ…!?〜〜お願い、早くしてぇ…!こんな魚なんかにイカされたくないのよぉ…」

かえでさんのセクシーピンチシーンをもっと見ていたいのは山々だが、仕方ない。早く先に進まないといけないしな…。

俺は小刀で魚の体をバッサリ斬り落とした。よほど新鮮なのか、そこまでされてもしばらく暴れていたが、やがておとなしくなったので、かえでさんの前と後ろの穴から奴らを抜いてやった。

――ヌポンッ!

「あうぅん…っ!〜〜はぁはぁ…。ありがとう、大神君。助かったわ…」

「〜〜ははは…、よかったですね…」


〜〜ハァ…、素直に喜べない俺って…。

湖を抜け、また暗闇をしばらく進んでいくと、今度は崖に出た。

今までの空間とは違って赤々と松明がともっており、風景がはっきり見える。俺達が今立っている崖と向こう側の崖の間に左側と右側それぞれ1本ずつ、計2本の鉄棒くらいの太さのロープがピンと張ってある。

恐る恐る崖の下を覗いてみると、風の音がかすかに聞こえてくるだけで、真っ暗で何も見えない。底なしの空間らしく、落ちたら一貫の終わりだ。これを渡れる曲芸師は、世界中のサーカスを探してもそういないだろう。

「今度はこれを渡れってわけね…」

「えぇ、行きましょうか」


俺は左の、かえでさんは右のロープを渡ることに決めた。立って渡るのは危険なので、ロープにまたがって進もうと思う。

幸いなことに、2本のロープの間はそんなに離れていなく、俺とかえでさんの手首を繋ぐ縄も足枷とはならない。逆にもし、どちらかが落ちたとしても、もう一人の方がロープ上で支えることができるだろう。

「下を見ちゃ駄目よ?ゆっくりね…」

「了解です…!」


ロープをしっかり握り、同じスピードで並行に並びながら、たぐって前に少しずつ進んでいく。何百年も前に張られたロープだろうに、俺達の体重がかかっても切れることなく、ピンと張られている。時間はかかりそうだが、慎重にいけば何とか行けそうだ…!

――ぐちゃ…っ!

手を伸ばした先のロープを掴んだ瞬間、俺は妙な感触を感じた。液体のようだが、納豆のような粘り気もある…。うまい例えが見つからないが、スライムをもっと気持ち悪くしたような感じだ。

「ロープに何か塗ってありませんか…?」

「えぇ、何かぐちゃってした緑色のものが…。〜〜毒だったらまずいわね…。早く渡っちゃいましょう」

「はい…!」


前方に向こうの崖が見えてきた。道のりはあと半分くらいだろうか…。それくらいの地点から、ロープの見た目が変わった。

今までは白くて汚れが目立つただのロープだったが、今度のは完全に緑色…。先程のスライムがロープ全体に塗り込まれていて、ロープとロープを繋ぐ結び目が一定の間隔であるものに変わっていたのだ。それにしても、何故こんなに結び目が…?老朽化して、何度も結び直すうちに増えていったのだろうか…?

ぐちゅっ、ぐちゃっ…。ロープをたぐっていく度にスライムの気色悪い感触がし、背中に悪寒が走る。生贄にされた一般人の女性なら、これだけでも気分が悪くなって、途中で落ちてしまうだろう。

〜〜かえでさんは大丈夫だろうか…?俺は隣で渡っているかえでさんに目を向けた。何だか様子が変だ…。真っ青…とは程遠い真っ赤な顔で体をぷるぷる震わせている。何かを必死に堪えているようにも見受けられるが…?

「大丈夫ですか?少し休憩でも――」

「〜〜ダメよ…!これ以上ここに留まったら…、〜〜くぅ…ん…っ」


かえでさんは甘美なため息を漏らして、必死にロープをたぐっていくが、俺より少しペースが遅れ気味だ。俺の一歩後ろを進んでいるといったところだろうか。しかし、ただ疲れたからだけとは思えないな…。

「――本当に大丈夫ですか…?」

気になって振り返ってみると、二人を繋ぐ縄が俺の方に引っ張られ、かえでさんは前のめりになった。

「――!!〜〜ぎゃああああああっ!!」

前のめりになって股間にロープの結び目が食い込んだ瞬間、かえでさんの口から獣のような悲鳴が発せられた。

「か、かえでさん…!?どうしたんですか…!?」

「〜〜や…め…、はう…っ、結び目が…うんんっ、食い込…んでっ、〜〜あはぁっ!大神君、動いちゃダメぇぇ…っ!!」


かえでさんはイヤイヤをしながら、絶叫した。よく見ると、股間に食いこんでいる結び目がかえでさんの下半身の敏感な部分を刺激しているみたいだ。動揺して俺が動く度に、かえでさんは手首の縄に引っ張られ、結び目の上で股間を絶妙な加減で擦られてしまう。

「あっ、あっ、か、体が勝手に動いて…!〜〜ひぃぃっ、落ちちゃうぅ…!!でも、止まらないのぉ…っ!!」

かえでさんは遂に自ら股間を結び目に擦りつけ始めた。

「あぁっ、こ、こっちの結び目、効くぅ…っ!!〜〜ひああっ、後ろの結び目も当たってるぅぅっ!!きっ、気持ちいい〜っ!!ひひひっ…!」

かえでさんは自我が崩壊したように笑いながら、ロープに寝そべるようにして、股間を思い切り結び目に擦りつけ続ける。

「か、かえでさん…」

「〜〜み、見ないで、大神君…。はぁはぁ…、私の…こんな恥ずかしい姿…」


女性はこんな結び目にあれほど感じるのか…?いや、だとしても、あれは異常だ…。〜〜まさかこの緑色のスライムは媚薬なのか…!?だとしたら、説明がつく。

きっと、ノーマは生贄の女性達が逃げ出さないよう、唯一の移動手段であるロープに媚薬入りのスライムを塗り込んでおいたのだろう。そして、追い打ちの結び目…。女の弱点を的確に刺激する構造らしい。媚薬なしの女性にとっても天敵のはずだ。ここでどれだけの女性が逃げようとして、足止めを食らって、ノーマに捕まった、あるいは奈落の底に落ちたことだろう。

男の俺には何てことないが、女のかえでさん…、しかも媚薬が効いた状態なら、ただの結び目も地獄の責め苦と化してしまうのだ。

「〜〜ダメぇ…、これ以上渡れないわ…。はぁはぁ…、もう限界よ…」

「諦めないで下さいよ…!ほら、前を見て下さい!もう少しですから、俺の後に続いて…!」

「わ、わかったわ…。〜〜くふぅっ…!」


少し動くだけで、かえでさんから甘美と諦めのため息が漏れてしまう。

「〜〜はぁはぁ…、もういやぁ…!何で私がこんな目に…っ」

プライドをズタズタにされ、かえでさんは背中を丸くして、うずくまるように泣き喚いた。

先程の湖の魚も、そしてこのロープも…、男なら何でもないトラップも、女性ならその快感から逃れられない…。だから、生贄の女性達は皆、逃げることを諦め、ノーマに従わざるを得なかったんだ…。

「――この縄を見て下さい」

「え…?」

「俺達は今、この細い縄で繋がっています。一心同体…、生きるも死ぬも一緒です。かえでさんが諦めるなら、俺も一緒に奈落に飛び込みます。安心して下さい、一人で死なせはしませんから」

「大神君…」

「…でも、冷静に考えてみて下さい。メイミさんはかえでさんに助けを求めて、ここに来させたのでしょう?幽霊になった自分達ではどうすることもできない何かを成し遂げる為に、俺達を頼って…。……彼女達の期待を裏切ってもいいんですか?」

「……」

「女性を弄ぶことしか能のないノーマのトラップです。辛いのはよくわかります。しかし、ここで俺達が諦めたら、島はどうなるんです…!?それに帝撃はどうするんですか…!?あやめさんや花組も悲しむでしょうし、何より誠一郎達はどうするんですか!?俺達両親の帰りを心待ちにしてくれているはずですよ…!?」

「〜〜それは…」

「……飛び降りて下さい。向こうに着くまで俺が引っ張りますから」

「〜〜そんなの無茶だわ…!」

「俺を信じて、全て任せて下さい…!かえでさんがどんなに無理と言い張っても、俺が絶対に諦めさせやしませんから…!」

「大神君…。――わかったわ…。あなたを信じてるから…!」


かえでさんは微笑むと、横に倒れて、ロープから落ちた。

――ぐん…っ!!かえでさんの全体重が俺の右腕にかかる。〜〜バランスがうまく取れない…。だが、前に進まなければ…!

「〜〜大神君、大丈夫…!?」

左手首に巻かれた縄一本で俺と命を繋いでいるかえでさんは、ぶら下がったまま心配そうに見上げてくる。

「――絶対に放しませんからね…!」

「大神君…」


かえでさんは涙をポロポロ流し、強く頷いた。

右、左、右…とロープをたぐり、少しずつだが、着実に前へと進んでいく。だが、そうのんびりもしていられない。俺達を繋ぐ縄が切れてしまったら、かえでさんは奈落の底にまっさかさまだ…。

俺とかえでさんの命と絆を繋ぐ縄…。絶対に切らせるものか…!絶対にかえでさんを死なせるものか…!必ず二人で生き延びてみせる…!!

「――うおおおおおっ!!」

向こう側の崖に手をかけ、倒れ込むように足を踏み込むと、残った力を振り絞って、俺はかえでさんを引っ張り上げた。

「大神君、大丈夫…!?」

「はぁはぁ…、ははは…、少し危なかったですけどね。でも、かえでさんを助けるのに必死でしたから…。――ありがとうございました、俺を信じてくれて」

「〜〜バカ…!無茶ばっかりして…」


かえでさんは俺に抱きつき、嗚咽を漏らした。そんなかえでさんの頭を優しく撫で、抱きしめ返す。愛する人の無事を確認できて、ホッとした。

「大神君だから信じたのよ?あなたなら助けてくれるって信じてたから…」

「俺も少しは司令らしくなってきたでしょう?」

「ふふっ、調子に乗らないの!」

『――ケケケケ…!まさかノーマの罠を突破する女がいたとはなぁ』

「――!!誰だ…!?」


奇妙な笑い声がした方を振り返ると、カボチャのお化け…ジャック・オー・ランタンが目を光らせて、フワフワ浮かんでいた。

「〜〜また気様か…!お前は一体何者なんだ…!?」

『ケケケケ〜!おっかねぇ、おっかねぇ。悔しかったら退治してみな〜』

「あっ、待ちなさい…!」


宙に浮かんで逃げるジャック・オー・ランタンを俺とかえでさんが追う。あれは秘術か…!?動かしている奴はどこにいるんだ…!?

「――!危ない…っ!!」

かえでさんが横に手を伸ばし、俺の追跡を阻止した。その直後、俺が踏もうとしていた地面が落とし穴のように抜け落ち、天井から大量の矢が降ってきた。落とし穴の中には、先の鋭い竹が落ちてくる者を八つ裂きにしようと、何本も生えていた。

〜〜危なかった…。あのまま追いかけていたら、今頃、俺は罠の餌食になっていただろう。

「随分、古典的な罠ね…。きっと、キュピピ族の罠だわ」

「しかし、どうしてキュピピ族の罠がノーマの洞窟に…?」

「さぁね…?当時流行っていた方法なのかしら…?」


俺達は壁に背中を預けて慎重に罠をよけ、ランプをかざして進み始める。


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