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「大神と藤枝姉妹のセクシー旅行記〜ダブル・ハネムーン編〜」

〜2日目・午前
(あやめとデート編)・その3〜





あやめさんの要望通り、俺達は『Heaven`s Gate』に到着した。先程の店とは違い、ここは正統派の人気店が並ぶショッピングモールなので、道案内の看板も多く、すぐに辿り着くことができた。〜〜違う通りに似た名前のSMショップがあるなんて、思いもしないよな…。

「うふふっ、ほら、大神君、こっちよ…!」

お洒落な服や雑貨など、女性が好きそうな店がたくさん並んでいるので、あやめさんもどこから見ていいのか迷っているようだ。俺と手を繋ぎ、楽しそうに色々な店を見て回っている。

――お、あそこがフードコートみたいだな。昼飯時とあって、どこも満席だ。時間が惜しいので、俺達は歩きながら食べられるホットドッグを買って、店を見て回ることにした。

「ホットドッグって初めて食べたわ。特にこのウィンナー、うふぅ…んっ、すごく大きい…っ!」

あやめさんは、ジャンボサイズのウィンナーを口いっぱいに頬張り、舌を這わせてしゃぶりながら、潤んだ瞳を細め、何故か俺を見つめてくる…。

〜〜きっと、グミキャンディーの逆バージョンで俺を興奮させようとしているんだな…?

「〜〜勘弁して下さいよ…」

「ふふっ、あら、何のこと?私はただホットドッグを食べているだけよ?」


そう言うと、あやめさんはウィンナーを思い切りかじった。パリッとジューシーな音が響き、俺は思わず、うっと呻き、前屈みになってしまった…。

「もう、大神君ったら…。ふふっ、エッチな子ね」

俺の反応に、あやめさんはご満悦らしく、そのままホットドッグを食べ進めた。

「――ねぇねぇ、あれ買って〜!」

腕を組んで歩いていると、両親に服をねだる外国人の女の子が目に入った。

「ふふっ、もう、しょうがないわねぇ」

「よ〜し、旅行の記念にパパがプレゼントしてやろう!」

「わ〜い!ありがと〜、パパ…!」


あやめさんは、じっとその女の子を見つめている。きっと、なでしことひまわりのことを考えているんだろうな…。

「――なでしことひまわりも、もう少し大きくなったら、高い服とかねだってくるんでしょうね…」

「ふふっ、そうね。女の子はお洒落に敏感ですもの。――そのうち、好きな子ができて、それを着てデートに行くようになって…」

「〜〜いぃっ!?デ、デートなんてまだまだ先ですよ…!」

「あら、わからないわよ?最近の子は早熟みたいだし…。ふふっ、やっぱりショックかしら?お父さん?」


あやめさんは肩を落とす俺を見て、いたずらっ子のように笑った。

そうだよな…。なでしこもひまわりも、いずれ俺達の元から巣立って、結婚していくんだよな…。〜〜嬉しいような、悲しいような…。これが父親の心理というものなのか…。

「ふふっ、その頃には孫ができて、私達もおじいちゃんとおばあちゃんになってるんでしょうね…。それまで帝都がずっと平和でいてほしいけど…」

「そうですね…。その為にも、俺達が帝都を…、そして、この世界を守っていかないと…!」


愛する者を守る為に戦う…。帝撃に着任した頃より、今は守りたいものがこんなにたくさん増えた。これもあやめさんとかえでさんのお陰だ。二人には本当に感謝している。

「次はどの店に行きましょうか?」

「そうねぇ…、ふふっ、たくさんあるから、迷っちゃうわ。――あ…、ねぇ、これ、可愛いと思わない?」


と、あやめさんはカボチャと魔女の陶器製ランプを手に取った。

「可愛いですが…、カボチャと魔女なんて珍しいデザインですね…」

「あら、だって、今日はハロウィンですもの」

「ハロウィン…?」


聞き覚えがあるぞ…。そういえば、新次郎が手紙で書いていたっけ…。

確かアメリカでは、10月31日に子供や大人達がお化けやモンスターの仮装をして、近所の家をまわり、『Trick or treat!』と言って、お菓子をもらうという。グロテスクな仮装をするのは、なんでも、人間に取り憑こうとする悪霊を追い払う為だとか…。

そうか、確か今日は10月31日だったな…!だから、街中でカボチャを多く見かけるのか…。日本ではまだ珍しいが、英語圏のこの島では、馴染みのある恒例行事なのだろう。

「ハロウィンはね、『万聖節』っていう日本のお盆にあたる頃にやるお祭りなのよ。元々は亡くなった人達を偲んで、秋の収穫を祈るケルト人の宗教的行事だったの。このカボチャは『ジャック・オー・ランタン』って呼ばれててね、悪行を働き、働きもせずに飲んだくれの日々を過ごしていたジャックという男がモデルだそうよ。ジャックは飲み代を払えなくなって、残り10年という寿命と引き換えに契約した悪魔を銀貨に変えたの。10年後、魂を奪いに来た悪魔をジャックは騙し、契約を破ってしまった。そのせいで、ジャックは死後、生前の悪行と悪魔の呪いで天国にも地獄にも逝けず、罪を償う為に石炭を灯したカボチャを持って、この世とあの世の暗い狭間を今も永遠にさまよい歩き続けているんですって」

「永遠にさまよい続ける…か。自業自得だけど、〜〜飲み代が払えないくらいで悪魔に魂を売るなんて、すごいな…」

「ふふっ、そうよね。まぁ、こういう人間になったらいけませんよっていう戒めのおとぎ話なんでしょうけど…」


俺達が話していると、黒人の大柄の警備員が近づいてきた。

「――すみません。あなた方は日本人ですか?」

「え…?えぇ、そうですが…?」

「あなた方は夫婦ですか?」

「は…、はぁ…」


すると、突然、あやめさんが頭を押さえ、苦しみ始めた。

「あやめさん…!?大丈夫ですか…!?」

「〜〜またこの感じ…。英雄姉妹の幽霊が出てきた時と同じだわ…」

「え…?」

「あなた方…、――大神一郎さんとあやめさんですね?」

「――!?」


警備員は俺の手首を掴むと、軽々持ち上げ、背中から床に叩きつけた。

「〜〜大神君…っ!!――!?」

気づくと、俺達は虚ろな瞳の警備員達に囲まれていた。

「そのご婦人を丁重にお連れしろ」

リーダー格の黒人の警備員に命令され、他の警備員達は一斉にあやめさんに掴みかかった。

「〜〜いや…っ、放して…!」

「〜〜あやめさん…っ!!」


あやめさんは得意の合気道で屈強な男達を投げ飛ばした。

さすがはあやめさんだ…!俺が心配するまでもなかったな。

「〜〜待てぇ…っ!!」

あやめさんは、先程買った鞭で叩いて威嚇して、リーダー格の警備員を足止めすると、俺の手を引っ張って走り始めた。

「大丈夫だった…!?」

「はい、すみませんでした…!〜〜それにしても、一体何なんだ…!?」


逃げる俺達の前に、今度は一般の観光客と思われる男が立ちはだかり、近くの店の立て看板を振り下ろしてきた。

「〜〜きゃ…っ!?」

俺はあやめさんを抱きしめながら、看板をよけ、その男を蹴り倒した。だが、俺達を狙っているのはその男だけではなかった。

俺達を無表情で見つめてくるカップル、親子、店員、お年寄り、女性、子供…。そのフロアにいる全員が俺とあやめさんを生気がない瞳で見つめ、ゆっくり近づいてきた。

「〜〜ど…、どうなってるんだ…!?」

「〜〜皆、何者かに操られているのよ…。それに、何故か私を狙っているみたいね…」


彼らは普通の人間だ。悔しいが、うかつに攻撃できない…。

俺はあやめさんの手を引っ張り、人気の少ない非常階段を目指す…!

俺達が走る通路の様々な場所に置かれているカボチャの『ジャック・オー・ランタン』。どれも俺達を監視しているみたいで、気味が悪い…。

「――!?きゃああああっ!!」

あやめさんの悲鳴に俺は振り返った。あやめさんの手首を先程のリーダー格の警備員が掴んだのだ。

「〜〜あやめさん…っ!!」

地面から足が離れ、宙ぶらりんになったあやめさんを警備員は羽がい絞めにすると、俺を吹き抜けの下のフロアへ突き落とした。

「うわああああああ…!!」

「〜〜大神くぅ…んっ!!」


あやめさんは警備員の男に肘鉄を食らわせると、必死に手を伸ばし、俺の腕を掴んだ。だが、いくら男顔負けの強さを誇るあやめさんも女性だ。男の俺を引っ張り上げることはもちろん、この状態を維持するのも腕力的に無理な話だろう…。

「〜〜あやめさん、離して下さい…!このままだとあなたまで…」

「〜〜何言ってるの…っ!?あなたは降魔になっていく私を決して見捨てなかった…。敵となった私を変わらず愛してくれた…!だから、私も大神君を絶対に見捨てたりしないわ…!」

「あやめさん…」

「『ヒッヒッヒ…、バカップルとはお前らのことだなぁ…!』」


リーダー格の警備員は突然、狂ったように笑い出し、背後からあやめさんの体を触り始めた。

「ふあああああ…っ!?」

「『ヒッヒッヒ…、どうだぁ?そんな男なんて捨てちまって、俺とイイコトしようぜ、ベイビー?』」

「〜〜いやああっ!!そこは…っ、大神君だけが触っていい場所なの…に…っ!〜〜あはぁん…っ」


警備員にパンティーの中を太い指で弄られ、あやめさんは悲鳴をあげながら、腰をくねらせた。反撃したいのだろうが、あやめさんは俺の手を離さないことに精一杯だ。

だが、事態は悪化する一方だ。そいつだけでなく、他の警備員や観光客、店員の男達までもが徐々にあやめさんに群がってきたのだ…!

「『ヒヒヒッ、ホレホレ、いつまで持ちこたえられるかな〜?』」

「あぁっ、あっ、あぁん…っ!〜〜あくぅっ…!もう…やめてぇ…っ」


あやめさんの涙と涎が俺の頬に落ちてくる。〜〜このままでは、あやめさんが犯されてしまう…!

〜〜くそっ、一体どうすれば…!?俺は中途半端にぶら下がったまま、頭をフル回転させ、辺りを見回した。

俺達を不気味に見つめてくるジャック・オー・ランタン達…。その中に目が光っているものがあった。

「『へへっ、いい女だぜ…。ホレホレ、さっさとイッちまいな…!』」

リーダー格の警備員が話をすると、そのカボチャの目も同じタイミングで光る。まさか、あれが彼らを操っているのか…!?

――考えている暇はない。こうしている間にも、あやめさんは苦しんでいるんだ…!俺は可能性に懸け、懐から護身用の銃を出し、そのカボチャを撃った。

ズギューン…!!幸い、弾は命中し、目が光るジャック・オー・ランタンは粉々に砕けた。そして、何故かそのカボチャから不気味な笑い声と共に黒い霊魂みたいなものが抜けていくのが見えた。

「――あれ…?俺達は一体…?」

正気に戻った警備員達から解放され、あやめさんは気を失うように自分も落ちた。俺はあやめさんを抱きしめると、あやめさんの鞭を上のフロアの柱に飛ばしてくくりつけ、ターザンの要領で移動型店舗の柔らかい布地の屋根に降り立った。

「あやめさん、大丈夫ですか…!?」

「大神君…。〜〜う…っ…」


どうやら触られただけで、セックスまではされなかったらしい。俺は少しホッとして、弱々しく嗚咽を漏らすあやめさんを抱きしめた。

「辛い思いをさせてしまって、すみませんでした…。――それに…、ありがとうございました…。あなたの言葉、嬉しかったです…」

「大神君…。ふふっ、無事でよかった…!」


屋根の上で抱きしめ合う俺とあやめさんに、店員も客も驚いて見てきた。

俺達は『Heaven`s Gate』を出て、気分転換にメイン通りを散歩することにした。

「――あと1時間か…。時間が経つのってあっという間ですね…」

「そうね…。もう少しでデート、終わっちゃうのね…」


あやめさんはぎゅっと腕を組む力を入れ、暗くうつむいた…。

さっきの事件での精神的苦痛もあるのだろうが、俺とのデートが終わってしまうことを寂しく思ってくれているようだ。

〜〜そうだよな…。俺はいいけど、あやめさんはやっぱり寂しいよな…。タイムリミットギリギリまで、何とかもう一つ思い出を作ってやりたいものだが…。

辺りを探していると、ハートでたくさん囲まれた看板の建物を見つけた。

人目につかない場所にこっそり建っているが、カップルがたくさん入っていってるから、きっと、ここもデートスポットに違いないぞ…!

「『ラブ・タイム』か…。あそこに行ってみましょうか」

「え…?〜〜あ、あそこって…」

「嫌ですか…?なら、違う店にしますが…」

「う、ううん…!実は私も一度入ってみたかったのよね…」

「ここの店、ご存知なんですか?どんな店なんです?」

「え?それは…、――ふふっ、入ってみたらわかるわよ」


あやめさんに言われて入ってみると、少し狭いが、ホテルのフロントらしき場所に出た。

「へぇ、宿泊施設なのか…」

「宿泊もできるけど、休憩だけでも利用できるらしいわよ」

「そうなんですか?あやめさん、詳しいですね」

「花組の隊員探しで飛び回ってた頃によく見かけたのよ…。まだ日本にはあまりないから、知らなくて当然だわ」

「へぇ、外国ってやっぱり進んでるんだな…。でしたら、一時間休憩して、話でもしてましょうか?」

「ふふっ、話…ね」


あやめさんは恥ずかしそうに笑った。

「――すみません。1時間ほど休憩したいんですが…」

「いらっしゃいませ。では、こちらからお好きな部屋をお選び下さい」


全面鏡貼りの部屋にピンクの照明の部屋、大きくて丸いベッドが回転する部屋…。〜〜な、何だか変わった部屋ばかりだな…。外国人はこういう部屋を好むのだろうか…?

「あやめさんはどの部屋がいいですか?」

「そうねぇ…。――じゃあ、ここがいいわ…!」


と、あやめさんは、17番の部屋のボタンを押した。

メリーゴーランドや観覧車のミニチュアが置いてある遊園地のような部屋だ。さすが花やしき支部長だな。

「それでは、ごゆっくりどうぞ」

受付の人から部屋の鍵をもらい、俺達は廊下を進んでいく。

「ほとんど部屋が埋まってるみたいですね…。やっぱり、人気のデートスポットなんですね」

「〜〜う〜ん…、デートスポットと言えばデートスポットなんでしょうけど…」

「えっと、17番は…――あ、ここだな」


俺は鍵を使って、部屋を開けた。メリーゴーランドと観覧車が回っており、本物の遊園地のような楽しい音色を奏でている。

「へぇ、面白い部屋だなぁ。子供達も連れてきてやったら、喜びそうですね…!」

「〜〜そ、それはちょっと無理かもしれないわね…。多分、子供は入れないと思うから…」

「そうなんですか…?――おっ、シャワールームと蒸気テレビジョンまであるんですね…!何だか一時間で出ていくのがもったいないな…――!?」


俺はテーブルに置いてあるものを見て、目が飛び出そうになった。コンドームと消毒された大人のおもちゃが仲良く並んで置いてあったのだ。

〜〜な、何故、休憩室にこんなものが…!?前に使った客が置いていったのを清掃員が処分し忘れたのか…!?

「――OH!OHHHH〜!!」

すると、隣の部屋から外国人の嬌声が聞こえてきて、壁がガタガタ揺れ出した…!〜〜しかも、何て大声で叫んでるんだ…!?

「〜〜テ、テレビでも見ましょうか…?まだ、こっち来てから、あまり見てなかったわよね――?」

あやめさんは気を利かせて、隣から漏れる嬌声をかき消そうと、テレビのスイッチを入れてくれた。が…、

「――Yes!Come o〜n…!!」

「〜〜いぃっ!?」


成人向けのお色気ビデオが流れてきたので、俺は慌ててスイッチを切った。

「〜〜な…、何なんだ、ここは…?」

「うふふっ、大神君って未だにウブなとこ、あるのよね。ふふっ、そんなところが可愛いんだけど…」


俺の戸惑う様子を楽しみ、誘うようにあやめさんは体を寄せてきた。

「照れなくていいのよ?ラブホテルってそういうことする場所なんだから」

「ラ、ラブホテル…っていうんですか、ここ…?」

「ふふっ、そうよ。カップルが個室で休憩する場所なんて、こういうことする所に決まってるじゃない。話だけで終わらせるカップルなんて、滅多にいないんだから…」

「そ、そうだったんですか…」


――だったら、遠慮することはない…!ラスト1時間、思う存分あやめさんと愛し合えばいいだけだ。

俺はあやめさんにキスすると、ベッドに押し倒し、太ももに触ろうとした。が…、あやめさんは怯えるように体をこわばらせ、目をそらした。

「あやめさん…?」

「〜〜あ…、ごめんなさい…。私も初めて来たから、緊張しちゃって…」


あやめさんは苦笑し、髪をかき上げた。……あやめさんは嘘をつく時、髪をかき上げる癖がある…。

〜〜そうだ…。俺は何て無神経なことをしてしまったんだろう…!?あやめさんは見ず知らずの男達から性的暴行を受けて、怖い思いをしたばかりなのに…。〜〜なのに、俺は…!

俺は自分が情けなくなって、すがるようにあやめさんを強く抱きしめた。

「〜〜すみません…。俺…、あなたの気持ち、ちっとも考えなくて…」

「大神君は悪くないわ。さっきだって、一生懸命私を助けてくれたんですもの…」

「〜〜しかし――!」


あやめさんは俺の唇にそっと指を添えると、優しく口づけし、微笑んだ。

「私ね、似たようなことを士官学校時代にされたことがあるの…。私の成績を妬んだクラスの男の子達にね、レイプされたのよ…。『女のくせに生意気だ』『どうせ教官に体でも売ってるんだろう』って、散々嫌み言われながら…ね…」

「〜〜そ、そんなことが…?」

「ふふっ、知らなくて当然よ。今まで誰にも話したことないもの…。もちろん、かえでにもね…。その男の子達は皆、上位階級の軍人の子供だったから、結局、泣き寝入りするしかなかったの…。だから、私の初めてはその子達に奪われちゃった…。山崎少佐と関係を持ったのはその後よ…」

「〜〜そうだったんですか…。彼らは今も陸軍に…?」

「まぁ…ね…。今も私を妬んでるみたいだけど、接点がないから、よく知らないわ…。だからね、さっき襲われた時もそのことを思い出しちゃって…。〜〜それで…、ちょっと怖くなっちゃったの…」

「あやめさん…」

「――でもね…、大神君、さっき、必死に私を助けてくれたでしょう?それが昔と大きく違う所。あの頃は、どんなに泣き叫んでも、助けを求めても、誰も助けに来てくれなかった…。けど、今日はあなたが助けてくれた。とっても嬉しかったわ…。いざとなったら、私のこと助けてくれる王子様がいるんだって…」

「はは、俺が王子ですか?」

「ふふっ、そうよ。私だって女の子なのよ?大好きな王子様に守られたいって思うの、変かしら…?」

「そ、そんなことは――!」


あやめさん頬を紅潮させ、俺の手を自分の胸に触れさせた。

「だから…、これからもその王子様だけに愛されていたいの…。大神君、あなたが傍にいてくれるだけで…、優しく抱きしめてくれるだけで、嫌なことは忘れられるから…」

「……よろしいんですか…?」

「えぇ、お願い、大神君…!かえでのことも、事件のことも今は全部忘れて、私だけを見ていてくれる…?」

「あやめさん…」


俺はYESの代わりにあやめさんの胸を揉んでやった。あやめさんは赤くなり、満足気に口元を緩ませた。

「シャワー浴びた方がいいんじゃないですか?」

「ふふっ、いいのよ。もう時間ないんだから…!」


あやめさんは俺の頭に手を回し、夢中でキスしながら、俺をベッドに押し倒した。女性の方から積極的にされるのも、たまにはいいものだ。

俺は仰向けのまま、あやめさんのブラウスのボタンを外した。すると、ぽよん…っ!と、あやめさんの豊満な胸が俺の顔の上に乗っかってきた。窒息しそうだが、良い香りがする。まさに天国だ…!

「ふふっ、新しい服なんだから、丁寧に脱がせてね?」

「了解しました」


俺が耳にふぅっと息を吹きかけると、ぞくぞくぞくっとあやめさんは小刻みに震え、真っ赤になった。

「ふふっ、ラスト1時間、精一杯愛し合いましょ!」

隣の部屋のカップルに対抗心を燃やしているのか、あやめさんはいつもより激しく俺を求めてきて、可愛らしい喘ぎ声を大声で披露してくれる。メリーゴーランドの可愛らしいメロディーに、あやめさんが卑猥な喘ぎ声でハーモニーをつける。

「ふふっ、やっぱり大神君が一番上手よ…」

男達に触られた部分に俺は吸いつき、キスマークをつけて浄化していく。

さっきの男達より、俺一人のテクに感じてくれている…。そんなあやめさんが愛しくて、俺はベッドにくくりつけてあった遊園地で入場制限の時に使うチェーンをあやめさんの両手に縛って、ベッドから離れられないようにした。

「SMショップではやられっぱなしでしたけど、ここではそうはいきませんからね」

「ふふっ、いいわよ。あなたの好きなようにして頂戴…!」


俺とあやめさんは最後の1時間、本能の赴くままに深く愛し合った。

「――ありがとう、大神君。優しく抱いてくれて…」

ベッドに横になり、シーツにくるまりながら、あやめさんは俺に涙目で微笑んだ。そんなあやめさんを俺は抱きしめ、頭を撫でてやる。そして、もう一度キスを交わす。

あやめさんはいつもし終わった後、濃厚なキスをプレゼントしてくれる。お礼の意味があるのだろうが、逆にお礼を言いたいのはこちらの方だ。

「気分はいかがですか…?」

「えぇ、もう大丈夫みたい。――大神君も大丈夫…?何だか元気がないみたいだけど…」

「はは…、あやめさんと二人っきりでいられる時間がもうすぐ終わってしまうと思うと、寂しくなって…」

「ふふっ、嬉しいわ。私も同じ気持ちですもの。できるなら、もっと大神君と一緒にいたいわ」

「……あやめさんが襲われた時、目が光るジャック・オー・ランタンを見つけたんです…」

「え…?」

「それを壊したら、操られていた人達も元に戻りました。それに、その壊れたジャック・オー・ランタンから黒い霊魂のようなものが抜け出したみたいに見えて…。遠くだったから、俺の見間違いかもしれませんが…」

「そう…。なら、そのジャック・オー・ランタンに悪霊が取り憑いていたってことになるわね…」

「はい…。ハロウィンは亡くなった人達の霊魂を慰める祭りなんですよね?その時期と重なって出てきた英雄姉妹の幽霊と何か関係があるんでしょうか…?」

「う〜ん…、もっと詳しく調べてみないとわからないわね…。ふふっ、いいわ。あなたとかえでが楽しんでいる間、もう少し調べてみるから」

「一人で大丈夫ですか…?〜〜俺、心配なんです…!もし、またさっきみたいな奴らに襲われたりしたら…」

「ふふっ、こぉら、私を誰だと思ってるの?帝国華撃団の副司令は、そんな簡単にやられるほどヤワじゃないわ」

「〜〜しかし…」

「ありがとう、大神君。その気持ちだけで十分よ。私なら大丈夫。暗い気持ちでいたら、せっかくのハネムーンが台無しになっちゃうでしょ?」

「あやめさん…」

「――ほら、そろそろ行った方がいいんじゃない?かえでを待たせると、後が怖いわよ?うふふっ!」

「はは、そうですね」

「かえでのこともしっかり守ってあげてね?私みたいにいつ襲われるかわからないから…」

「――了解しました…!」

「ふふっ、よろしい!」


あやめさんは満足そうに微笑んで、俺の頭を撫でてくれた。

昼に連絡した時、かえでさんは元気そうだったが、少し心配だな…。あやめさんの言う通り、早く行ってあげた方が良さそうだ。

「そろそろ行きますね。あやめさんもお気をつけて…!」

「えぇ、ありがとう。待ち合わせの7時まで調査しながら、さっきの『Hell`s Gate』で時間潰すことにするわ。――ふふっ、今夜は覚悟しなさいね、下僕君…?」


先程までの可憐な様子とは反対に、再び女王様モードになりつつあるようだ…。〜〜また豹変しないうちに、早くかえでさんの元へ行ってしまおう…!

俺はあやめさんと別れ、かえでさんのいるビーチへと向かった。

2日目・午後(かえでとデート編)に続く


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