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「太正戦隊・サクラレンジャー」その1



時は太正。恵まれた自然と豊富な資源、そして、蒸気のエネルギーで繁栄した惑星・地球。その星の中枢機関が集まる日本最大の都市・帝都。

その帝都の平和を謎の宇宙人・オオガミ星人が脅かし、崩壊しようと企てていた。

「――ハッハッハッハ…!聞いて下さい、愚かな地球人達よ!!この帝都は今日から僕ら・オオガミ星人のものです!!」

「〜〜きゃ〜っ!!オオガミ星人が攻めてきたわ〜!!」

「〜〜逃げろ〜っ!!」


シンジローと手下の雑魚兵士・ジャッカー軍団が襲ってきたので、帝都に住む地球人達はパニックになりながら、我先にと逃げ惑う。

だが、シンジローが四方八方に放った無数の衝撃波によって、破壊されたビルの瓦礫が落ち、逃げ道を塞がれてしまった。

「あ〜っははは…!!逃げても無駄ですよ!この僕・シンジローが粉骨砕身の覚悟で皆さんを支配しちゃいますからね!!」

「きゃああっ!!」

「〜〜かすみっち…!!」


倒れてきた壁に若い女性・かすみさんの足が挟まれてしまい、恋人の加山さんは助けようと壁を起こそうとする。

「〜〜私のことはいいですから、加山さんは早く逃げて下さい!」

「〜〜何を言うんだ、かすみっち!?俺は君を置いて逃げたりなんてしない…!!――君のことは俺が絶対に守るよ、ハニー…♪」

「加山さん…!――マイダーリン…♪」

「〜〜こっ、こんな非常時に何イチャついてるんですか…っ!?――僕はもう怒ったぞ…!二人とも、死んでしまえ〜っ!!」

「〜〜きゃああ〜っ!!」

「〜〜くそ…っ」


シンジローが衝撃波を撃とうと構えて、加山さんが恋人のかすみさんを抱きしめて身構えたその時だった。

「――サクラ・ブロッサム・ビーム!!」

どこからか桜色のレーザー光線が放たれ、シンジローに命中した。

「うわああ〜っ!!〜〜な、何者だ…!?」

「――これ以上、あなたの好きにはさせないわ!」


戦隊ヒーロー物の戦闘スーツを身に纏った9人の乙女達が崩壊したビルの上から飛び降りて、決めポーズを取った。

「サクラレンジャー・ホワイト!藤枝あやめ!!」

「サクラレンジャー・レッド!桐島カンナ!!」

「サクラレンジャー・ブルー!レニ・ミルヒシュトラーセ!!」

「サクラレンジャー・イエロー!アイリスで〜っす!!」

「サクラレンジャー・グリーン!李紅蘭!!」

「サクラレンジャー・ローズ!ソレッタ・織姫!!」

「サクラレンジャー・ピンク!真宮寺さくら!!」

「サクラレンジャー・パープル!神崎すみれ!!」

「サクラレンジャー・ブラック!マリア・タチバナ!!」

「――太正戦隊・サクラレンジャー、参上!」


「〜〜くっそ〜、サクラレンジャーめ…!また邪魔しに来たんですね!?」

「とりゃあああっ!!」


かすみさんの足を挟んでいた瓦礫をカンナが拳をぶつけて破壊した。

「す、すごい…!」

「ここは私達に任せて、早く安全な場所へ…!」

「ありがとうございます…!――さぁ、かすみっち…!」

「えぇ…!」


かすみさんは頭を下げると、加山さんに支えながら、逃げていった。

「フフン、これで思う存分戦えマ〜スネ!」

「〜〜くっそ〜…!――行っけ〜!ジャッカー軍団!!」

「キィ〜ッ!」

「皆、行くわよ!」

「了解!」


雑魚のジャッカー軍団には必殺技を使うまでもなく、私達はパンチとキックだけであっという間に全滅させた。

ふふっ、この雑魚戦は戦隊ヒーローの格好良さを見せつけられる良い前哨戦よね!

「さぁ、おとなしく観念なさいな…!」

「〜〜うぅ…、僕一人に9人がかりはひどいですよぉ…。ひっく、うっ…」

「〜〜わ…、悪者のくせに泣くなよ〜…!」

「…これじゃ、僕達の方が悪者みたいだね?」

「〜〜もういいですっ!こうなったら、僕の方も応援をいっぱい呼んじゃいますからね!?――出でよ、怪人・薔薇組!生意気なサクラレンジャーを倒しちゃって下さい…!!」


と、シンジローは魔法陣から怪人を3匹も召喚した。

「了解よ〜ん」

「〜〜く…っ、オカマの怪人が3匹も…!」

「〜〜き〜っ!!オカマって言ったわねぇっ!?」

「〜〜うっわ〜、しかも絡みづらそうやわ〜…」

「ちょっとシンちゃ〜ん、戦隊ヒーローのくせに男が一人もいないじゃないのよ〜」

「え…っ!?〜〜そ、そんなこと僕に言われましても…」

「何だかやる気なくなっちゃいましたね〜、琴音さん、斧彦さん」

「そうね〜、菊ちゃん。……つまんないから、帰りましょっか」

「〜〜えぇっ!?ちょ、ちょっとぉっ!!真面目に戦ってって下さいよぉ〜っ!!」


な、何だかよくわからないけど…、チャンス…よね?

「――今よ、皆!」

「了解!」

「〜〜あ…、し、しまった…!!」

「皆の心を一つに…!――カンナ!」

「おう!――ほらよ、すみれ!」

「〜〜しっかりパスして下さいな、カンナさん…!――アイリス!」

「は〜い!――行っくよ〜、レニ!」

「了解。――織姫…!」

「OKデ〜ス!――紅蘭〜♪」

「受け取ったでぇ!――ほい、マリアはん!」

「ナイスパスよ!――さくら、決めて…!」

「わかりました!――サクラレンジャー・ピンク、参ります!!はあああっ!!」


私達がパスし合い、各々の霊力を蓄えた桜色のボールをさくらがオーバーヘッドシュートを決めた。

「サクラ・ブロッサム・ボンバー!!」

「うわああああ〜っ!!」


9色の光を纏ったボールが見事、シンジローに命中した。

「〜〜あうぅ…、また負けちゃいました…。――けど、僕は諦めないぞ…!この借りは必ず返しますからね…!!」

と、ボロボロになったシンジローはマントを翻し、消えていった。

「ふふっ、今日も大勝利ね!――それじゃあ、いくわよ!せーの…、――勝利のポーズ、決めっ!」

地球の繁栄都市・帝都にあるサクラレンジャーの秘密基地に私達は戦いを終えて、帰還した。

あら、基地がどこにあるかですって?それはひ・み・つ!ふふっ、だから、秘密基地なんでしょ?

「――皆、ご苦労だったな。お前たちの活躍で、今日も地球の平和は守られたぞ!」

「疲れただろう?ゆっくり休んでくれたまえ」

「はい!」


お酒が大好きで陽気な米田長官と、頭脳明晰でいつも冷静な山崎副長官。二人ともとても優秀で頼りになる私達の自慢の上官なの。

「えへへっ、ただいま〜、ジャンポ〜ル!」

「くま!」


と、サクラレンジャーの最年少隊員・イエローことアイリスは、作戦指令室のマスコットキャラ・ジャンポールに抱きついた。

「いつも思うのですけれど、この大きなクマ、何なんですの?」

「ぬいぐるみだよ。アイリスが霊力で動かしてるんだ」

「〜〜む〜っ、ぬいぐるみじゃないもん!アイリスのお友達だも〜ん!!――ね〜、ジャンポール♪」

「くまくま!」


ふふっ、アイリスったら…。

出動が無事に終わったから、皆、はしゃいでるみたいね。

「――今日も見事な戦いぶりだったぞ、あやめ。さすがはサクラレンジャーの隊長だな」

「ふふっ、いいえ、山崎副長官の的確なご指示のお陰ですわ」


実は私、山崎副長官とお付き合いしているのよね。ふふっ!

「あの…、副長官、今夜は一緒にディナーする約束でしたわよね?」

「え?あぁ、そのことなんだが…」

「――山崎副長官、準備ができましてよ」

「あぁ、弥勒君か。待たせて悪かったな」

「ふふっ、いいえ」

「え…?ふ、副長官…」

「すまない、まだ仕事が残っててな…」

「そ、そうですか…。〜〜お仕事なら…、仕方ありませんものね…」

「すまない。この埋め合わせは必ずするよ」

「うふふっ、失礼するね、隊長さん♪」


……ふ〜ん…、今度の浮気相手は研究員の細川弥勒さんってわけね…。〜〜ほんっと、元気な人っ!

私はロッカールームで着替えながらムカついて、ロッカーを強く閉めた。

「あれ…?あやめさん、今日は山崎副長官とデートのはずじゃ…?」

「〜〜残業ですって!……研究所で一番セクシーな研究員と一緒にね」

「あはははっ!ま〜た浮気されてるんデスカ〜?そんな男、さっさと捨てちゃえばいいのに〜」

「まぁ、仕方ありませんわね。副長官には基地で働くほとんどの女性が憧れておりますもの」

「確かに、山崎はんは顔がいいだけやのうて、マシーンの優れた技術と知識をお持ちですからなぁ〜」

「ったく、どいつもこいつも…。少しは隊長の気持ちも考えろってーの!」

「ふふっ、いいのよ、カンナ。ありがとう」

「…織姫の言う通り、早く別れた方がいいんじゃない?ストレスがたまって、戦闘に影響が及んでも困る」

「そうね…。〜〜けど…」

「あやめお姉ちゃんは、浮気されても山崎のおじちゃんが好きなの?」

「そ、それは…」

「〜〜アイリス…、浮気なんて言葉、どこで覚えたの?」

「えへへ〜!ドラマで〜♪」

「そうね…。どんなに浮気されても、デートをすっぽかされても、通信機の電源を切られても、私は山崎副長官のことが好きよ…。〜〜ハァ…、言っているうちに腹立たしくなってきたけど…」

「だったら、こっちも浮気してやればいいじゃありませんか!『目には目を、歯には歯を』って昔から言うでしょ?」

「ひっひっひ…、さくらはんも可愛い顔して、人が悪いですなぁ〜」

「だって、あやめさんが可哀想なんですもの…!たまにはガツンとおしおきしてやった方がいいんですよ…!!」

「ふふっ、そうね…。……浮気…しちゃおっかな〜」

「おぉっ、やる気満々やな…!」

「きゃははっ!頑張れ〜、あやめお姉ちゃん!」


〜〜でも、周りに他にイイ男がいないのよね…。山崎副長官が悔しがるような相手が…。

一人寂しく自宅のマンションに帰った私は、シャワーを浴び終え、バスローブを着て、謎の宇宙人「オオガミ星人」の資料を手に取った。

私達のことを『地球人』と呼んでいるし、『オオガミ星人』っていうんだから、オオガミ星という星から来た宇宙人みたいだけど、見た目は私達と変わらないわね…。

今日、攻めてきたのは『シンジロー』という少年。その母親と名乗る女王『フタバーヌ』も一度、姿を見せたことがある。そして、調査隊を派遣して撮影させた写真には、彼らの他にあともう一人、青年らしき人影が写っていた。今のところ、首領はフタバーヌ、幹部はシンジローとその男の2人ってわけね…。

米田長官達も調査して下さっているみたいだけど、詳細はまだ謎のまま…。彼らが地球を狙う目的も、彼らの星がどこにあるのもわからない…。

〜〜はぁ…、これ以上、資料とにらめっこしてても仕方ないわね…。疲れたし、もう休もう――。

「――フフフ…、こんな時間まで敵の調査とは、仕事熱心よの〜」

女の声が耳元で囁かれた直後、部屋の窓ガラスが一斉に割れた。

「きゃああーっ!!」

慌ててソファーの陰に避難した私の前に、オオガミ星人の女王・フタバーヌとシンジローが現れた。

「あ〜っははは…!お前がサクラレンジャー隊長の藤枝あやめだな?」

「〜〜く…っ、どうしてここが…!?」

「フフン、お前の霊力を探知すれば簡単なことだ!〜〜さっきは、よくも私の可愛いシン君を痛めつけてくれたな…!?」

「〜〜うっうっ…、痛いよ、母さ〜ん…」

「あ〜、よしよし…!〜〜貴様ぁっ、うちのシン君に何すんだぁっ!?こんな可愛い子供を甚振るなんて、貴様達は鬼だ!!悪魔だぁ〜っ!!」


〜〜フ、フタバーヌって親バカだったのね…。ちょっと意外…。

「フン、だが、お前一人に女王の私がわざわざ出るまでもないな。――イチロー、可愛い甥っ子の仇を取っておやりっ!」

「――了解、姉さん」


フタバーヌに呼ばれ、『イチロー』と呼ばれる幹部の青年が現れた。どうやら、彼が写真に写っていたもう一人の幹部みたいね…。

「シンジローの仇、取らせてもらうぞ…!」

〜〜この二刀流の構え…。なかなか強敵みたいね…。

けど、負けるわけには――!

「――狼虎滅却・快刀乱麻ぁぁぁっ!!」

「きゃああああああっ!!」


イチローが2本の刀を振っただけですさまじい風が巻き起こり、部屋の中がめちゃめちゃになった。〜〜あんなのをまともに食らったら、怪我だけじゃ済まされないわ…。

「ククッ、どうした?隊長のホワイトも一人ではこの程度か…!」

「きゃあああああっ!!」


刀を受け止めるだけで精一杯だわ…。つ、強い…!私一人じゃとても…。

「お〜っほっほっほ…!いいぞ、イチロー!もっと存分に痛めつけてやるがいい…!!」

「頑張って下さい、イチロー叔父!」


〜〜くっ、サクラレンジャーに変身しなきゃ、とても敵わないわ…!早く変身しなきゃ…!

すると、イチローは私が胸元に隠しておいた変身ペンに気づいたらしい。念力で私を壁に押さえつけて動けなくすると、私のバスローブに手を入れて、胸をまさぐった。

「あっ、ああ〜んっ!やめてぇ…!!」

イチローは変身ペンを探り当て、ニヤッと笑った。

「これが変身ペンか…」

「フフッ、よくやったぞ、イチロー!サクラレンジャーに変身などさせるものか…!お前は今から私達の捕虜となるのだ…!!」

「そ、そんな…!〜〜いやああ〜っ!!誰か助けてぇ〜っ!!」

「フハハハ…!無駄だぁっ!!」

「――!!きゃあああああ…!!」


通信機で助けを求める間もなく、私はイチローが放った衝撃波を受けた。目の前が真っ白になって、そのまま意識を失っていく…。

浮気されて、デートすっぽかされて、その上、敵に囚われて…。〜〜今日は厄日みたいね…。

「――う…ん…」

気がつくと、私はシャンデリアがさがっている豪華な寝室のベッドに横たわっていた。深紅のベッドカバーがかけられた、ダブルベッドよりもさらに大きなベッドに…。

〜〜バ…、バスローブだったし…、まさか…、私、イチローに…!?

「――安心しろ。手は出していない」

私の心を見透かしたように返答して、イチローが部屋に入ってきた。

「〜〜変身ペンを返しなさい!!どこにやったの!?」

「それは無理だ。姉さんからの命令なんでね」

「〜〜く…っ、でも、残念だったわね。もうすぐ他のサクラレンジャーが駆けつけるわ。あの変身ペンには、GPS機能が内蔵されているもの…!」

「そうか…。だが、それも無理だな。いくらサクラレンジャーといえども、宇宙船がなければ、ここまで来れまい」

「え…?う…、宇宙船って…」


私は窓の外を見た。大きな岩が転がり、砂嵐が舞うだけの荒れ果てた大地がどこまでも続いている…。ここ…、地球じゃないの…!?

「ようこそ、俺達の故郷『オオガミ星』へ」

「〜〜そ、そんな…」


へなへなと崩れ落ちた私にイチローは服を差し出した。

「…そんな格好では風邪引くぞ。地球人には、この環境は厳しいだろうからな」

「あら、捕虜をいたわってくれるの?フッ、随分優しいの…きゃあああっ!?」

「いいからさっさと着ろ…!」


イチローは私のバスローブを脱がせると、持ってきた黒いドレスを無理矢理着させた。

「まったく、世話の焼ける女だ――」

――パァン…!

私は涙目でイチローの頬を叩いた。

「〜〜私に触らないで…っ!」

「…フッ、それだけ元気があれば大丈夫だな。手加減したとはいえ、怪我してないか心配だったが…」

「え…?」

「そのドレスはくれてやる。――よく似合ってるぞ」


――ドキ…ッ!

〜〜やだわ…。私ったら、敵に褒められて、ときめいちゃった…。

……イチローって、もっと冷酷な奴かと思ってたけど、あんな優しそうな微笑みもできるのね…。

「あ〜っはははは…!!悪役って楽しいな〜、シン君♪」

「あははははっ!そうですね〜、母さん♪」

「憎きサクラレンジャーの隊長を人質にできるなんて、今日はツイてるなぁ〜!――お前ら、今日は宴だ!どんどん飲め!どんどん騒げ〜っ!!」

「キィ〜ッ!」


フタバーヌとシンジロー、そして、雑魚のジャッカー軍団がごちそうを食べて騒いでいた頃、私はだだっ広い寝室で質素な料理をイチローから出されていた。

肉のようだが、色は緑で、犬の餌を入れるような器に乗っている。それをイチローは、両手を縛られて足枷をつけられている私に差し出した。

「食え。晩飯だ」

「ふっ、そんなグロテスクなもの、ちっとも食欲をそそられないわね」

「…いいから食え!サクラレンジャーが来る前に飢え死にされても困るからな」

「ふふっ、あなた達の計画を潰せるのなら、尚更そうしてやるわよ。なんなら、ここで舌を噛んで死んでやるわ…!」

「〜〜チッ…、本当に世話の焼ける女だ…」


イチローは緑の肉の塊をナイフで切って、フォークで口に含むと、私にキスをして、舌で無理矢理肉を私の喉に押し込んだ。

「〜〜んぷっ、やぁ…っ!あむっ…」

見た目からは想像がつかない、とろけるような肉の柔らかさ…。あまり噛まなくても肉は舌の上で溶け、私の胃袋にすんなり入っていった。

「……結構…おいしいわね…」

「フフ、だろう?モギリマンモスからわずかしか取れない貴重な部位だからな」

「そ…、そんなごちそうを捕虜の私に食べさせちゃっていいの…?」

「さぁ…?姉さんが知ったら、怒るだろうな…」

「え?もしかして、黙って持ってきちゃったの…?」

「拘束されている上に空腹でいるのもきついだろうからな…。…肉は嫌いだったか?」

「い、いえ…。むしろ、気に入ったわ」

「そうか。なら、よかった」


またあの微笑み…。〜〜この人…、本当に悪役なのよね…?

「ぷっ、うふふふっ…!」

「な、何がおかしい…!?」


「ふふっ、ごめんなさい。面白い悪者さんだなと思って――」

――ぐぅ〜…!

その時、私のお腹の虫が部屋に響き渡った。

〜〜は、恥ずかしい…。そういえば、夕飯まだ食べてなかったっけ…。

「フフッ、体は正直だな。遠慮せず食うといい。スープも飲むか?モギリオオクツワムシのエキスを絞り出した美味なものだ」

〜〜モ…、モギリオオ…なんとかって何かしら…?

……けど、この際、贅沢は言ってられないわね…。

「……お願いするわ…。けど、このままじゃ食べづらいんだけど…?」

「それもそうだな…。――なら、俺が食わせてやる」

「え…?」

「ほら、口を開けろ」


イチローは先程のモギリマンモスの肉を一口サイズにナイフで切った物をフォークで刺して、私の口に入れてくれた。

「あ、ありがとう…」

「…勘違いするな。お前に餓死されては、見張り役の俺が責任に問われるからだ」


ふふっ、もしかして、照れてるのかしら…?

「そのお肉…、見た目は悪いけど、味は牛肉に似ているわ」

「ぎゅうにく…?何だ、それは?」

「牛のお肉よ。地球では、お肉の中で一番高級品とされているの」

「牛…。そういえば、書物で読んだことがあるぞ。地球に生息する生物で、胃袋が4つもあるんだよな?」

「えぇ、そうよ。よく知ってるわね…!」

「大学では動植物を研究する専攻を取っていたからな」

「あら、侵略者のくせに大学に通ってたの?」

「……俺だって最初から侵略者だったわけではない…。ある日、何もかも突然奪われた…。〜〜大学での勉強も、仲間も、普通の平穏な暮らしも…」

「え…?それってどういうことなの…?」

「…お前が知る必要はない。それより早く食え。姉さんに見つかったら、厄介だからな」

「わ、わかったわ…」


突然奪われたって…。もしかして、オオガミ星が荒廃している理由と何か関係があるのかしら…?

「――それから…」

「ん…?なぁに?」

「――自ら命を断とうとするな。お前を大切に思ってくれる仲間がいるのに、そいつらを悲しませるようなことをするんじゃない」

「あ…、〜〜そうね…。ごめんなさい」

「…交渉が終わったら、すぐに仲間の元へ返してやる。だから、その前に絶対に死んだりするんじゃないぞ?いいな…?」


そう言ったあの人の瞳…、どこか悲しそうだった…。彼は何か大きな心の闇を抱えているのだろう…。できたら、相談に乗ってあげたいけど…。


「太正戦隊・サクラレンジャー」その2へ

あやめの部屋へ