サクラ大戦 奏組〜薫風のセレナーデ〜開催記念・特別短編小説
「私の夢」
その3



「――人魔と思われる魔音を見つけました!8丁目まで来て下さい…!!」

『了解した!』

『すぐに向かいます…!』


これでヒューゴさん達への連絡はよしっと…!

「はぁはぁはぁはぁ…っ」

現場に近づくにつれて、魔音の色がどんどん濃くなっていく…。〜〜怖い…!

…けど、私は奏組の隊長だもん!帝都を守る為に頑張らないと…!!

それに、この任務が終われば帝劇のスポットライトを浴びられるんだから…!ガンバよ、音子っ!!

「――きゃあああ〜っ!!」

「…!!女性の悲鳴が…!?」

「あそこよ…!」


私達が駆けつけると、写真で見たのと同じ降魔がぐったりしている女性の上に馬乗りになっていた!

間違いない!あれが人魔なんだ…!!

「た…助けてぇ、吾平さん…」

「〜〜ひ…、ひぃぃっ!来るなぁっ、化け物ぉぉっ!!」

「あれは歌舞伎俳優の工藤吾平と料理研究家の林原郁恵…!?」


わぁ…!この二人が付き合ってるって噂、本当だったんだー!

街を歩いてるだけで芸能人カップルに会えるなんて、さっすが帝都っ♪

〜〜って、呑気なこと考えてる場合じゃないよね!?早く助けなくちゃ…!!

「大丈夫ですか!?あの、お怪我は…!?」

「な…、何だ、お前らは…!?〜〜どけぇっ!!」


――ドン…ッ!!

「きゃ…っ!?」

「音子…っ!!」


吾平さんが私を突き飛ばし、恋人の郁恵さんを見捨てて逃げようとした為、大神さんがすぐに追いかけて吾平さんの腕を掴んだ!

「待て!恋人が襲われてるのに一人で逃げるつもりか!?」

「〜〜あ…、あんな女知るもんかっ!てめぇの命の方が大事だってぇんだよ…っ!!」

「あ…っ!おい、待て…!!」

「〜〜ご…、吾平…さ…ん…」


吾平さんは大神さんの手を払うと、舞台や蒸気テレビで見る普段の姿からは想像もつかないような醜態をさらしながら、一人で逃げていってしまった…。

「…うっわ、最悪ー」

「あの男、昔から女遊びが激しくて有名ですものね…」

「悪口は後よ!」


あやめさんが刀を一閃すると、人魔の両腕が同時に綺麗に斬り落とされた!

「ギャアアアアアアッ!!」

人魔は鳴いて苦しみながら郁恵さんの体から後ずさると、邪魔するなとばかりに牙が生えた大きな口を開け、翼を広げて私達を威嚇してきた…!

「おい!大丈夫か、あんた…!?」

「〜〜う…っ、腕がぁ…っ」


源二君に抱き起こされた郁恵さんだったけど、彼女の二の腕から下は、すでにどどめ色に変色していた…!

「こ、これは…!?」

郁恵さんの腕が腐っていくように変色し出した直後、斬り落とされたばかりの人魔の両腕の切り口から、にょきっと人間の腕とよく似た腕が生えてきて、人魔はその手から生えている10本の長い爪を不気味な月光で光らせた…!!

「人間の腕になった…!?」

「…なるほど。今度は器用な料理研究家の手を自分の物にしたってわけ?」

「君達は下がって、郁恵さんを守っててくれ!」

「何でだよ!?俺達だって戦える…っ!!」

「そ、そうです!ここは奏組の私達に任――!」

「奴はあなた達の霊力じゃ浄化できないわ!これは命令よ!?」

「…っ!!」

「大神君、かえで、行くわよ!」

「はい!」「えぇ!」


二本の刀を二刀流に構えた大神さんが、それぞれ一本ずつ刀を構えているあやめさんとかえでさんの真ん中に入って柄を握り直した瞬間、不思議なことに並んでいるお三方の体と持っている刀が強い光を放ち、共鳴し始めた…!!

「あの光は…!?」

「まさか、あれが真刀滅却、光刀無形、神剣白羽鳥と呼ばれる二剣二刀…!?」

「二剣二刀って…?」

「詳しくは知らないけど、裏御三家といって、破邪の力という特殊な霊力を持つ名家の血を引いてないと扱えない聖剣があるって聞いたことある…!」

「おぉ〜っ!何かわかんねぇけど、格好良いぜ〜っ!!」

「――行きます!帝国華撃団、出撃!!」

「了解!」「了解!」


大神さんの指示で、あやめさんとかえでさんは息を合わせて人魔との間合いを一気に詰めると、華麗に斬りかかった…!!

「は、速い…!」

「――今よ、大神君!」

「私達でフォローするわ!」

「お願いします!――うおおおおおおおっ!!」

「はあああああああっ!!」「はあああああああっ!!」


――ドォォォォン…!!

「ギエエエエエエ〜ッ!!」

すごい!3人の息がピッタリ…!!

まるで、これまで何度も一緒に激戦を潜り抜けてきたような…!

「――藤枝流奥義・白鳥散華斬!!」「――藤枝流奥義・白鳥散華斬!!」

大神さんがいちいち指示しなくても、あやめさんとかえでさんがその時その時で戦況を判断して、敵の動きを先読みして動いているお陰で、大神さんも戦いやすそう…!

「――狼虎滅却・天地一矢!!」

時折、あやめさんとかえでさんを狙って繰り出される人魔の攻撃を、大神さんがちゃんと前衛で防いでる!

あんな手強そうな敵を相手にするだけでも普通の人なら大変なのに、仲間のことまで気遣ってあげられてるなんて、すごいなぁ…!!

「すっげぇ…!」

「あのもぎり…、トロそうに見えたけど、結構やるじゃん」

「あやめさんとかえでさんも格好良いよね〜っ!さっすが副司令〜っ♪」


もぎりさんと副支配人姉妹さんがそんなすごい力を持ってたなんて…!!

尊敬しちゃうよ〜♪

「――キエエエエエエッ!!」

「ハ…ッ!?――音子さん、危ない…!!」

「え…?〜〜きゃあああっ!?」


この3人相手じゃ太刀打ちできないと思ったのか、人魔は後方に控えて郁恵さんを守っていた私に狙いを定め、空中から襲いかかってきた…!!

「音子ぉっ!!――うわああああっ!!」

「源二君…っ!!」


〜〜私をかばって、源二君が肩を爪で裂かれちゃった…!

「〜〜兄さん…っ!!」

「へへ…、こんなのかすり傷だっつーの」

「――消えろぉぉぉ…っ!!」


大事なお兄さんに怪我を負わせた人魔に向かって、源三郎君は怒りを込めた矢を放ったけど…、〜〜心臓を貫かれても、人魔は全然平気そう…!

「〜〜そんな…!?」

「キエエエエエエエッ!!」


人魔が雄叫びをあげながら、私達の方へと突進してくる…!!

「きゃあああああっ!!」

「〜〜音子さん…っ!!」

「――狼虎滅却・三刃成虎!!」

「ギャアアアアアア…!!」


大神さんの必殺技に人魔は体をバラバラに引き裂かれて膝から崩れると、そのままうつ伏せに倒れて動かなくなってしまった…。

「た、倒しちゃった…」

「大丈夫だったかい、音子君?」

「は、はいっ!あの…、ありがとうございました…」

「よかった、怪我はないみたいだね?」

「は、はい…♪」


ど、どうしよう…?私ったら大神さんに助けてもらった挙句、お姫様抱っこされちゃってる…♪

……大神さんって、もぎりさんってこともあるけど、普段は真面目で人当たりが良いってだけで、あまり目立たないイメージなんだよね…。

――でも、こうやって近くで見ると…、結構格好良いんだよなぁ…♪

帝撃じゃ高嶺の花って言われてる、あやめさんとかえでさん姉妹が揃ってお熱を上げてるのもわかる気がするよぉ…♪

あ〜もうっ♪本当に帝都って、どうしてこう王子様の出現率が高いのかしら?…えへへっ、なんちゃって〜♪

「〜〜ムッ!?」「〜〜ムッ!?」「〜〜ムッ!?」「〜〜ムッ!?」

見つめ合う私と大神さんを見て、あやめさん&かえでさん姉妹と源二君&源三郎君兄弟は不機嫌そうに顔をしかめると、すぐに私達を引き離しにかかった!

「…え?」

「うわああっ!?」

「〜〜お・お・が・み・く〜ん?いつまで音子さんを抱っこしてるつもり?」

「〜〜私達だって危険な目に遭ってたのに、若い娘の方を優先して助けちゃうとはねぇ〜?」

「〜〜いででででっ!!す…、すみません、すみませんっ!!音子君は、お二人みたいに戦いに慣れてなさそうでしたので…っ!!」

「んもう、大神君ったら…。ふふふっ♪」

「罰として、今夜は朝までず〜っと私とあやめ姉さんが満足するまで頑張ってもらうわよ?覚悟しなさいね、大神君♪」

「ははは…、了解です♪」


あやめさんとかえでさんの二人から同時におでこを指で小突かれて、大神さんたら嬉しそう…。

男の人って、女の人にああいうことされたら喜ぶのかぁ…!

さすが先輩方!勉強になります…っ!!

「…フンッ、バッカみたい!あーんなもぎりに助けられたぐらいで、いつまでデレデレしてんのさっ!?」

「え?」

「〜〜やいやい、大神一郎っ!ちょっと音子に褒められたからって、いい気になんなよなっ!?どうしても音子のキネマトロンの番号を知りたけりゃ、俺達と勝負するこった!!いいなっ!?」

「は、はぁ…?」


…?源二君も源三郎君も何をそんなに怒ってるんだろう…?

助けてもらったんだから、ちゃんとお礼言わなきゃ失礼なのに…。

「――あ、あのぉ…」

…あ。そういえば郁恵さんのこと、すっかり忘れてた…!

「だ、大丈夫でしたか!?腕の方は…!?」

「まだ痺れて動きませんけれど、お陰様で大した怪我は負わずに済みましたわ。本当にありがとうございました…!」

「いえ、そんな…」

「これから付き合う男はよく考えた方がいいですよ?」

「フフ、そうですわね。では、私はこれで失礼致します」

「あ…、夜道は危険ですから送っていきますよ」

「平気です。さっき蒸気携帯電話で連絡しておいたので…」

「――郁恵〜!」

「あっ、初吉さーん!こっち、こっち〜♪」


郁恵さんの名前を呼んで駆け寄ってきたのは…!

「〜〜き…っ、木之本初吉〜っ!?」

「…って誰だ?」

「蒸気テレビジョンで何本も番組を掛け持ちしてる、超売れっ子放送作家。ただの料理研究家だった郁恵さんをタレントに押し上げたのも彼らしいよ?」

「源三郎君、よく知ってるね〜。…ひょっとしてミーハー?」

「〜〜う、うるさいっ!」

「フフ、私の本命はこっち♪お金持ちで才能もありますしねぇ〜」

「ん?本命がどうしたって?」

「〜〜ああん、何でもないのよ!ささ、帰りましょ〜♪」

「あぁ。ところで、腕を怪我したんだって?大丈夫かい?」

「平気よ〜ん。初吉さんの顔見たら、すっかり元気になっちゃった〜♪」


初吉さんとラブラブに帰っていく郁恵さんを私達は呆然と見送った…。

「〜〜男が男なら、女も女だったわね…」

「ふふっ、まぁいいじゃないの。尊い帝都市民の命は守られたんだから」

「人魔も倒せましたし、これで一件落着ですね」

「あんた達、ひょっとして人魔のこと知ってたのか!?」

「えぇ。実は私達も米田司令から命令を受けて、人魔のパトロールをしていたところだったのよ」

「最近は夜間に起こる犯罪も増えてきたから、その見回りも兼ねてね」

「なーんだ。それならそうと最初から言えばいいじゃーん」

「極秘任務だったからね。誤解させてしまって申し訳なく思ってるよ」

「――で・も…、これで任務は終わったわけだし…♪」

「劇場に帰って、ゆっくりくつろげるわねぇ、大神君…♪」

「あ、あやめさん、かえでさん…♪奏組の皆が見てますから…」

「あらん、気にすることないわよ。私達が付き合ってること、この娘達も知ってるんだし…♪」

「ふふふっ、おうちまで我慢できないようなら本当に休憩処に寄ってってもいいけど…♪どうする?」

「ゴク…ッ♪そ、そうですね。では、2時間ほど寄ってから帰りましょうか…♪」

「んふふっ、了解♪」

「頑張ったご褒美に、私とかえででいっぱい可愛がってあげるわね、大神君…♪」

「は、はい…♪」


ハ、ハートの霊音がすっごいいっぱい…。

「〜〜もう僕達のこと、アウト・オブ・眼中みたいだよ?」

「な、何か3人でってすごいよね!すっごいテクニックとか色々必要そう…♪」

「休憩しなきゃ帰れないほど疲れたんなら、素直に俺達の助けを借りればよかったのになぁ?」

「〜〜だから源二君、そういう意味じゃないんだってば…」


そういえば大神さんって、あやめさんとかえでさんの姉妹両方と付き合ってるんだよね!

すごいなぁ、マニアックに3人で交際中とか!

さっすが都会に住んでる人は違うな〜♪

「――あ…!その前に人魔の死体を回収しないと…」

「花やしき支部に送って、風組と夢組に解剖してもらわないとね…!」


かえでさんがバラバラになった人魔の死体に近づいて観察しようとしたその時だった…!

――バサァッ!!

「え…っ?」

死んだはずの人魔の翼が大きく広がると、人魔の下半身がピクッと動き、臀部から降魔特有のしっぽが伸びてきて、かえでさんの足首に巻きついた…!

「きゃあああああっ!!」

「かえでさん…!!」


人魔に足をすくわれ、転倒した拍子に神剣を手放してしまったかえでさん!

その隙を逃さんとばかりに人魔は、かえでさんの上に馬乗りになり、全身の傷と切れ目を繋ぎ合わせながら肉体を徐々に修復させていく…!!

「人魔が…!?」

「〜〜アイツ、まだ生きてたのかよ…っ!?」

「キエエエエエエッ!!」

「くっ、離しなさい…っ!」


人魔は手に入れたばかりの郁恵さんの腕を宙に浮かすと、その両手でおもむろにかえでさんの両目を覆って、掌から闇の霊力を送り込んだ…!!

「ひぃっ!?〜〜いやああああああああ〜っ!!」

「〜〜かえでさん…!!」「〜〜かえでぇっ!!」


大神さんとあやめさんが真刀と神剣で、とっさに薙ぎ払ったお陰で人魔はかえでさんから離れたものの、かえでさんの両目は瞳孔が開ききっていて、体も激しく痙攣していた…!

「〜〜かえで、しっかりして…!!」

「〜〜よくもかえでさんを――っ!」

「――大神君…、どこ…?〜〜どこに…いるの…?」

「え…っ?」

「目が…、〜〜目が…見えない…っ!」

「かえで…!?〜〜まさか目を奪われて…!?」

「そんな…!?〜〜かえでさん…っ!!」

「キエエエエエエエッ!!」


かえでさんが視力を失ったとほぼ同時に人魔の顔に目の縁が浮かび上がり、そこからグリンッと2個の人間の目玉を出現させると、大きく見開いたその瞳で私達を見渡した。

「〜〜く…っ、なんてこと…」

「安心して下さい、かえでさん!ほら…!俺は傍にいますから…!!」


大神さんはかえでさんの手を両手で強く握ると、自分の頬にあてがわせて言い聞かせてやった。

「大神君…」

すると、かえでさんもいつも感じている大神さんの温もりを感じたのか、怯えた表情から一変して、安堵した顔つきになった。

だけど、視力を手に入れた人魔はまだ闇の中から私達を狙っていた…!

「〜〜くそ…っ、どこにいやがる…!?」

「雅、魔音がどこで見えるかわからないの!?」

「〜〜それが無理なの…。まるで空気に紛れるように、ここら辺一帯が全部魔音に侵食されていて…」

「〜〜な、何だよ、それ…!?」

「――キエエエエエッ!!」

「ハ…ッ!――あそこ…っ!!」

「任せろ!うおりゃああああああっ!!」


霊力を込めた源二君の拳は人魔のお腹に命中したけど…!

――ジュ…ッ!!

「うあああああっ!!」

「源二君…!?」「兄さん…!!」


倒すどころか、逆に源二君の拳は強い魔音によって硫酸をかけられたみたいにひどい火傷を負うことになってしまった…!

「〜〜くっそぉ…っ」

「大丈夫、源二君…!?今、手当てを――!」

「――!!雅!後ろ…!!」

「え…っ?」

「〜〜早く下がれっ!!」


人魔は源三郎君の放った矢をよけながら飛行を続け、鋭い爪を輝かせながら私に一瞬のうちに向かってきた…!!

「きゃああああああっ!!」

「〜〜音子…っ!!」「〜〜雅…っ!!」


――ギリギリギリィ…ッ!!

〜〜うぅ…っ、人魔に首を締め上げられて…息が…できない…っ!

『――邪魔ヲシナイデェ…ッ!!』

「え…?」

『私ハ…夢ヲ叶エタイダケナノォ…ッ!!』


――ゆ…め…?

よくわからないけど、人魔のそんな心の声を聞いたような気がした…。

その瞬間、人魔はかえでさんから奪った目を見開いて私をギョロッと睨みつけると、降魔らしく激しい咆哮をあげた…!!

「〜〜ひあ…っ!?」

〜〜な、何…!?人魔の手から出てきた黒いもやが首にまとわりついて…!?

「いやあああああああ――っ!!」

〜〜怖い…!誰か助けて…っ!!

「雅…っ!!」

「〜〜音子を離せぇぇっ!!」


源二君・源三郎君兄弟の攻撃から逃れようと、人魔が翼をはためかせようとしたその時…!

――キィィィン…ッ!!

「ギャアアアアアッ!!」

ルイスさんの霊力が込められたチャクラムが飛んできて、人魔の首を切りつけた!

「無事か、音子君!?」

ジオさんも来てくれたんだ…!

「――っ!?」

え…っ?〜〜何で…?声が出ない…!?

「どうした、音子君…!?」

「音子さん…!?」

「――っ!――っ…っ!!」


〜〜何で…!?どうして声を出せないの…っ!?

まるで声帯を握り潰されてても痛みは感じないような…、〜〜そんな変な感覚が喉にまとわりついて離れない…っ!

「まさか雅…、人魔に声を奪われたんじゃ…!?」

「〜〜何だって…!?」

「……っ!!」


ヒューゴさんは怒りを押し殺した顔で二本の短刀を振り回したけど、人魔の動きは速くて、なかなか当たらない…!

かえでさんの目と私の声を奪い取ることができて満足なのか、人魔はニタァッと笑うと翼を広げて夜空へ高く飛び、逃げていってしまった…。

「〜〜くっ、間に合わなかったか…」

「音子さん…」

「……」


ヒューゴさんは怒りと悲哀に満ちた瞳で私を見つめている…。

〜〜当然だよね…、言うことを聞かなかったから罰が当たったのかな…?

「……とりあえず、大帝国劇場へ帰還しましょう」

「〜〜そうですね…」


大神さんとあやめさんは、目が見えなくなったかえでさんを支えながら一緒に立ち上がった。

「雅…」

「音子…。〜〜ゴメン…ッ!俺達がついていながら…」


ううん、源二君と源三郎君のせいじゃないよ。二人とも私を守る為に一生懸命戦ってくれたんだから…。

……そう言葉を掛けたくても、声が出ない…。

〜〜私の声…、本当に人魔に盗まれちゃったんだ…。


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