藤枝あやめ誕生日記念・特別短編小説2013
「君偲ぶ日に」その6
「藤倉教官が二人…!?」
傍にいるだけで心がポカポカしてくる、優しい霊力の光…。
子供の頃、辛いことがあっても梨子さんが頭を撫でて抱きしめてくれたような…、いつも梨子さんの傍で感じていた温もりと同じだ…!
「梨子さん…。もしかして、あなたが本物の…?」
『――あやめちゃん、素敵な指輪をありがとう』
ニコッと笑った梨子さんの右手の薬指には、私が今日お供えした青と紫色のビーズの指輪がはめられていた。
あぁ、間違いないわ!この人が私のよく知る、本物の梨子姉さんだ…!
『…聞いているのでしょう、クロノス?もう私の家族を苦しめるのはやめて下さい!』
『邪魔をしないで!この女を殺せば、あなたはこの世界に復活できるのよ!?』
『たとえこの世界が神のご意思で歴史を歪められたものだとしても、彼らのように幸せに暮らす者も大勢いるのです!その者達の平穏を奪っても、あなたは良いと言うのですか!?私と桃花は既に天上界に召された身…。もうこの世に未練などございません。今さら、あやめちゃんとかえでちゃんの…、〜〜私の大切な妹達の幸せな運命が変えられていくのを見過ごすなんて、私にはできません…!!』
「〜〜梨子姉さん…」
『フフフッ、あなたみたいなお人好しが違う世界線の自分だなんて嫌になるわねぇ。どんなに大きな犠牲が出ようとも、裏御三家の誇りを捨てずに魔の種を潰す!それが藤倉の巫女の使命でしょうが…っ!!』
梨子さんは高笑いしながら、くわっと目を見開くと、尻尾に神剣白羽鳥を巻きつけた化け猫の姿に再びなり、息もつかせず私達に襲いかかってきた!!
『フギャアアアアッ!!』
――ガリッ!!
『きゃあああ…!!』
「梨子さん…っ!!〜〜きゃああっ!!」
化け猫が梨子姉さんの肩を肉球で押し倒すと、化け猫が纏う闇のオーラが濃霧みたいに境内全体に発生して、梨子さんと化け猫の姿を隠した!
「この霧は…!?」
「〜〜吸っては駄目よ、一郎君!」
〜〜駄目…。霧の中に立ってるだけで吐き気をもよおしてきて、化け猫の気配を掴むのに集中力を割くことができない…!
「〜〜ごほっごほ…っ!どこにいるの、一郎君…!?」
「はぁはぁ…、俺はここです…!」
「はぁはぁはぁ…、私から…離れちゃ駄目よ…?」
「はい…。〜〜ごほっごほっごほ…っ!!」
『オーッホホホホ…!!どこを見てるのかしら!?』
――ガリッ!!
「うわああああっ!!」「きゃああああっ!!」
『そこをどきなさい、大神君!!先生の言うことが聞けないのっ!?』
――ガリガリガリッ!!
「ぐあああああ…!!」
「〜〜一郎君っ!!」
仰向けに倒れている私に覆いかぶさり、化け猫に背中を向けて守ってくれている一郎君。
彼の背中に手を回すと、どろっとした血の感触が手に染み込んでくる…。
「ハァハァ…、あやめさんは…俺が守ります…。もう二度と…、あなたを失いたくありませんから……」
「一郎君…っ!〜〜いやあああああ〜っ!!」
『フフフ…、先生に反抗する悪〜い子は、おしおきしちゃうわよ〜♪』
〜〜駄目…っ!私達はこんな所で死ぬわけにはいかないのよ…!!
可愛い娘のなでしことひまわりに、かえでと誠一郎君…、そして、花組の皆が私と一郎君の帰りを待っててくれてるんですもの!
かつて降魔として敵対した私を前と変わらずに受け入れてくれた家族が待つ場所へ…、私の居場所へ一郎君と帰るんだもの…っ!!
『――あやめちゃん、私の霊力を使って…!』
その時、梨子さんの優しい声が聞こえてくると、提灯にまた薄い桃色・明るい緑色・深い青色の綺麗な灯りが灯り、真っ暗だった神社の境内を幻想的に照らし出した。
『――いつまでも大切な家族と共にありたい…と。あなたの心に宿る意思、確かに賜りました…!』
梨子さんは提灯に灯っているのと同じ光を全身から発しながら私を抱きしめるように体を合わせてきて、その強い輝きの霊力を私の体の中へ送り込んできた。
私の中に流れ込んでくる温かい光…。――あぁ、そうだったのね。何故この明かりを見るだけで穏やかな気持ちになれるのか、ようやくわかったわ。
梨子姉さんは夢の中でクロノスに襲われる私をずっと傍で守っててくれたのね…!
『――受け取りなさい、藤堂の光を…!』
梨子さんの霊力が私の手の平に向かって集中的に流れ込んできて熱くなってくると、私の手に神剣白羽鳥とは違う造形の剣が藤堂家の強い光を放ちながら収まった!
「この剣は…!?」
『――その剣は天上界を守護する天使だけが使える聖剣…。ミカエルの加護を受けるあなたなら使いこなせるはずよ!』
「天使の…聖剣…」
『馬鹿もいいところだわ!白羽鳥にさえ見限られたあなたに天上界の聖剣が使えるわけないじゃないのっ!!』
〜〜く…っ、確かに柄を握るだけで手が焼けるようだわ…。
でも、私は負けるわけには…、――この世界から消えるわけにはいかない…っ!!
「あやめさん、俺の霊力も使って下さい!」
「一郎君…!」
重ね合わせた唇と絡み合わせた指から隼人の光の霊力と、一郎君のいっぱいの愛情が私の中に流れ込んできて、力をくれる…!
「あやめさんの存在をこの世界から消させたりしませんから…!」
「ふふっ、頼りにしてるわよ、私の隊長さん…♪」
『死ねぇぇぇぇぇ――っ!!』
「今です!」
「――藤枝流奥義・白鳥聖炎斬!!」
『な…っ!?〜〜ま、まさかこの力は…!――ギャアアアアアアアアア…!!』
一郎君と一緒に握っている聖剣から白い炎の衝撃波が放たれ、飛びかかってきた化け猫の体を綺麗に一刀両断した!
『フ…フフフ…、敗れは…せぬぅ…!私は…藤堂を統べる藤倉の当主…!世界を…繁栄へ導く者なりぃ…っ!!』
「――安らかにお眠りなさい、転生を迎えるその日まで…」
聖剣の刀身についた黒い血を払うと、化け猫は梨子さんの姿に戻って断末魔の叫びをあげながら光の炎に焼き尽くされ、灰になって消えていった。
「お見事でした、あやめさん!」
「ふふっ、一郎君が力を貸してくれたお陰よ…♪」
尻尾に巻かれていた神剣白羽鳥が私の手元に戻ってきた瞬間、黒コゲに焼けた紙切れが足元に落ちてきた。
「お札…?」
「それは召喚符だわ…!藤倉家が召喚術を行う際に使用していたお札よ」
「召喚術って、活動写真なんかでよく陰陽師が使う…!?」
「えぇ。藤倉家は剣術を得意とする藤枝家と違ってね、高い霊力を駆使して異界から魔物や精霊を召喚し、使役することを得意としていたの」
「では、藤倉教官に化けていたあの化け猫は召喚獣だと…?」
『――いいえ、あれは別の世界線から来た、もう一人の私です…』
そこへ、梨子さんが再び姿を現すと、私が手にしていた聖剣は光輝きながら霊力に還元されて、梨子さんの体へ戻っていった。
「梨子さん…!」
「別の世界線というのは…?」
『私達のいるこの世界はね、地球が誕生してから現在に至るまで、何千億通り以上もの分岐点を通って辿り着いた世界の一つでしかないの。さっきの化け猫は私があやめちゃんの犠牲のうえで事故に巻き込まれずに生き続け、大神さん…、あなたと結婚して巫女を継いだ世界の一つで暮らしていた私なのです』
「〜〜お…っ、俺があなたと結婚…っ!?」
『えぇ。そこからさらに召喚に失敗という分岐を辿り、召喚獣である化け猫に殺されて体を奪われたあの世界の私は、正気を失って一族の者を皆殺しにし、この時神神社に住まう妖怪として怖れられながら生きていく運命だったの…』
「ちょ、ちょっと待って下さい!ということは、あの化け猫は俺達の世界とは別の世界から来たんですか!?」
「クロノスは無数に存在する私達の世界から、化け猫に取り憑かれる運命の世界線上に存在する世界の梨子さんをピックアップして協力させ、ここまでおびき寄せた私を襲わせたってことね?」
『そういうことよ。彼女の世界はここと大して変わらないように見えるけど、一部の人間にとっては全く異なる運命の世界になっているの。人生というのは選択の連続よ。事故や天災や伝染病から生き延びたか否かなどという大きな分岐点から、どんな職業を選び、どんな人と結婚したか…、小さなものでは、その日のお昼にどんな物を食べたかという選択をしただけで、その人の世界線が異動してしまうことだってあるわ』
「なんというか…、話が壮大過ぎて今一つピンとこないけど、その説明ならつじつまが合うことは確かだわ」
「あの…、あなたは俺達と同じ世界の梨子さんでいいんですよね?」
『そうよ。大神さん…と呼べばいいかしらね?あやめちゃんを助けてくれてありがとう』
「い、いえ!それで…、あなたと俺は初対面…でいいんですよね?」
『えぇ。クロノスがこの世界の世界線と別の世界線を交らわせたせいで今は記憶が混乱しているでしょうけど、化け猫がこの世界から消えたことで、すぐに違和感はなくなるはずよ。そしたら、あなたの頭を占める私との記憶も消滅するはずだから…』
「梨子さん…」
「教えて、梨子さん!天上界では今、何が起こっているの!?」
『…気をつけて。天上界ではミカエルを巡る神々の抗争が起こっているわ』
「ミカエルが…、あやめさんとかえでさんのお母様が神に頼んで、あやめさんとかえでさんの運命を変えさせたというのは本当なんですか?」
『…本当よ。神がクロノスにあなた達姉妹を殺させ、この世界を破滅から救おうとしていることもね。そうしないと、他の世界線に存在する世界も全て消えてしまうから…』
「世界が破滅するって…、一体どうして!?」
『……ごめんなさい。天上界の規則で、未来に起こることは生きている人間には言えないことになってるものだから…』
「…クロノスって黒頭巾を被った、あの男のことよね?顔はよく見えなかったけど、とても怖ろしい…、だけど、梨子さんによく似た…奇妙な力を感じたわ。〜〜あれが神の力なの…?」
『ふふっ、…さすがはあやめちゃんね』
「えっ?」
『…いいえ、こちらの話よ。とにかく、クロノスには気をつけて。奴は神のゴキゲンをとる為なら手段を選ばない…。きっとまたあなた達を狙って、この世界に刺客を送ってくることでしょう…」
「お任せ下さい!あなたの代わりに俺があやめさんとかえでさんを守ってみせます!」
『フフ、それを聞いて安心したわ。頼もしいパートナーができてよかったわね、あやめちゃん』
「ふふっ、でしょう?私の自慢の旦那様なの…♪」
『旦那様…か。ふふっ、大きくなったわね、あやめちゃん。今いくつ?私と同じくらいにはなったのかな…?』
「梨子さん…。〜〜ごめんなさい。本当ならここにいるべきなのは梨子姉さんのはずなのに…」
『ほぉら!いつまでもうじうじしないの!』
と梨子さんは言うと、ピンッ!と、いつも私やかえでが一郎君にやるみたいに私のおでこにデコピンした。
『私の分まで、大神さんとお幸せにね。せっかく素敵な家族ができたんだから、いつまでも仲良しでいなきゃ駄目よ?』
「……梨子姉さん…っ」
私が梨子さんの胸に飛び込んで、子供の頃に戻ったように泣きじゃくると、梨子姉さんはあの頃と同じように優しく私の体を抱きしめて、頭を撫でてくれた。
『運命に負けないで…!大好きよ、私の可愛い妹…』
「私も大好きよ。会えて本当によかった…!」
「お陰で助かりました。ありがとうございました」
『これからもあやめちゃんとかえでちゃんをよろしくね、大神さん』
「はい!」
梨子さんは天使のように背中から羽根を生やすと、淡い光を放ちながら空高く舞い上がった。
「梨子さん…っ!」
『――強く生きるのよ、あやめちゃん。あなたは私達一族の希望の光なんだから…!』
梨子さんはあの頃と同じ笑顔で頷くと、フッと提灯の明かりが一斉に消え…、
――バシャァ…ッ!!
「――ハ…ッ!?」「――ハ…ッ!?」
転がっていった風船ヨーヨーが割れて石階段に水が飛び散ると、私と一郎君は夢から醒めたようにハッと我に返って、思わず顔を見合わせた。
「ここは…?」
耳を澄ますと、笛と太鼓の愉快な音と、祭りを楽しむ人達の明るい笑い声が聞こえてくる。
戦いで汚れ、ボロボロになっていたはずの浴衣も元の綺麗な状態に戻っていた。
「無事に戻ってこられたみたいね」
「えぇ。まるで長い夢から覚めたように頭がボーッとしてますが…」
「――『運命に逆らいし哀れな子』…か。フフッ、まるで殺女に戻ったみたいだわ」
「あやめさん…」
「……ごめんなさい。梨子さんが言ってたことがどうしても気になるのよ…。〜〜私とかえでのせいで世界が滅んでしまうって、どういうことなのかしら…?」
「そうですね…。俺達の時代より、はるか未来の話と言ってましたが…」
命ある物はいつか必ず滅びを迎える…。
それは世界も例外ではないかもしれないけど、私達の子孫が生きる未来に向けて私に何ができることがあったとしたら…。
「あやめさん…、――この先何があっても…、たとえ神を敵に回しても、俺はあなたの味方ですからね…!」
「一郎君…」
「あなたからしたら俺なんてまだまだ頼りない男なんでしょうけど…、それでも今日みたいに頼りにしてくれると嬉しいかな…って」
「ふふっ、そうね。――ありがとう、お父さん。頼りにしてるわ…♪」
「ハハ…、愛するお母さんの為ですから…♪」
私と一郎君が手を握り、おでことおでこをくっつけて笑い合っていると…、
「――かえで叔母ちゃ〜ん!こっち、こっち〜!!」
「――お父さんとお母さんを見つけたわ〜!!」
忙しない下駄の足音と共に、なでしこ、ひまわり、誠一郎君の後を追って、かえでが石階段を駆け上がってきた!
「かえで…!」
「ここにいたのね?二人して急にいなくなるんだもの、ビックリしたわよ」
「すみません…。色々あったもので、何から話していいやら…」
「そうだわ…!――ねぇ、かえで!変なことを聞くかもしれないけど、真面目に答えてくれる!?」
「な、何よ、いきなり…?」
「梨子姉さんが亡くなったのは去年じゃないわよね…!?子供達をお葬式に連れて行ってないわよね!?ここへ連れて来るのは今日が初めてよね…っ!?」
「…?当たり前でしょ?梨子さんと桃花さんは私達が子供の頃に事故で亡くなったって昨日も話したじゃない」
「お葬式って誰のー?」
「さぁ…?」
「そ、そうだったわね。ごめんなさい…」
「――かえでさんと子供達の記憶、元に戻ったみたいですね」
「――そうね。クロノスの件は追々説明するとして、ひとまずは一件落着かしら…?」
「…何コソコソ話してるのよ?私だけ除け者にする気?」
「ふふっ、こっちの話よ。ねぇ、一郎君♪」
「どうせ話しても、俺とあやめさんにしかわからない話ですし…♪」
「〜〜ふぅん、そう…」
「そういえば父さんとあやめ叔母ちゃん、こんな暗い所で何してたのさ?」
「まぁ、話せば長くなるんだけどな…」
「そうね、ふふふふ…っ♪」
ニコニコしながら目と目で会話する私と一郎君の間にムッとしたかえでがズイッと割って入ってきた!
「〜〜ちょっと一郎君っ!?私には話せないようなことをあやめ姉さんにはしてあげてたってことっ!?」
「〜〜ち、違いますよ、かえでさん!別にそういう意味じゃ――!」
「もう一郎君ったら…、かえでには内緒にしてねって言ったのに…♪」
「〜〜いぃっ!?あ、あやめさんも何言い出すんですかっ!?」
「野外なのに一郎君ってば大胆でね、どうせ誰も来ませんからって、欲望むき出しで私の浴衣を無理矢理…♪でも、すっごくよかったぁ…♪」
「〜〜ふぅ〜ん…。神様の前で罰当たりなことねぇ…?なんなら、私が代わりに天罰を下してあげてもいいんだけど〜!?」
「〜〜うわあああっ!?かっ、かえでさん!!子供達が見てますから〜っ!!」
「〜〜問答無用っ!!」
「あははは…!」「あははは…!」「あははは…!」
――大切な家族と過ごす、幸せのひと時…。一日一日増えていく、素敵な思い出…。
ずっと続くのが当たり前だと思っていた、こんな何でもない時間が今は以前よりとても愛しい…。
これからもこの幸せを守っていきたい。この先もずっと…、私達の子孫が暮らす遥か未来まで…!
「――イェ〜イッ!両手花火〜♪」
「ひまわり!振り回したら危ないわよー!?」
「あはははは…!」
お祭りから戻り、私達・家族は夜の浜辺で線香花火を楽しむことにした。
ふふっ、子供達も楽しそう!なでしことひまわりとした約束を守ることができて本当によかったわ…!
「綺麗ねぇ…」
「去年みたいな花火大会の打ち上げ花火もいいですけど、線香花火も風流ですよね」
「そうね。惜しまれながら儚く散る様がより美しさを引き立てるのかもしれないけれど…」
「もう一本いかがですか?今度は違う色のやつ」
「ふふっ、ありがとう」
一郎君は自分の花火から新しい花火に火をつけると、隣で屈んでいる私に渡してくれた。
「わぁ、綺麗…!」
華でいられる時間は短いけれど、それでも線香花火はこうして一生懸命花を咲かせて私達を楽しませてくれる…。
私の一生もこの線香花火のように、長い長い地球の歴史からしたら瞬きぐらいの短さでしかないかもしれない…。
だけど、私も生きてる間は精一杯人生の花を咲かせて、大切な人達に見守られながら美しい笑顔のまま燃え尽きたいものだわ…。
「……終わっちゃいましたね…」
「そうね…。急に暗くなるせいか、寂しくなってきちゃう…」
「もう一本やりますか?今、火を――!」
新しい線香花火にマッチで火を点けようとした一郎君の無防備な唇が目に入ってきたので、私は不意打ちでキスしてやった。
「あ…!」
その直後に花火が点火して、私と一郎君のキスしている顔が闇夜に浮かび上がった。
「あ、あやめさん…♪」
「ふふふっ、ごめんなさいね。一郎君を旦那様に選んでよかったなぁって思ってたら、つい…♪これが俗に言う『体が勝手に』っていうのかしらね♪」
「…ゴホン!――子供達を寝かせたら、浜辺で散歩でもしませんか?誕生日プレゼントはその時に…♪」
「ふふっ、いいわよ。今度も、かえでには内緒でね――♪」
「――誰に内緒ですって〜っ!?」
「〜〜うわあっ!?危ねぇっ!!」
と、お約束のように、かえでが一郎君と私に花火を向けて、また間に割り込んできた!
「んもう、かえで!?子供達が真似したら、どうするの!?」
「それはこっちの台詞よ!…ふふっ、まぁでも、今日は姉さんの誕生日だから大目に見てあげるわ」
「本当ですか?ありがとうございま――!」
「――その代わり!子供達が寝つく時間になるまでは良いパパとママでいてもらいますからね?男と女に戻るのはそれからにして頂戴っ!」
「ふふっ、もちろんよ」
「では、今夜またここで…♪」
「えぇ…♪」
「――お父さ〜ん、お母さ〜ん!」
「新しい花火開けよ〜、ニョロニョロの〜!」
「ヘビ花火ね?今持って行くわー!」
「終わった花火は、ちゃんとバケツに入れるのよー?」
「はーい!」「はーい!」
「ねーねー父さん、明日は海に入れるといいねー!」
「そうだな。帰りの汽車の時間まで明日も思いっきり遊ぼうな!」
「わ〜い!」「わ〜い!」「わ〜い!」
仲良く花火を楽しむ私達・家族のそんな団欒を忌々しそうに見つめている男がいた。
黒頭巾を被り、闇に紛れている男…、クロノスだった…!
『――焦ることはない…。神の力さえあれば、あんな偽巫女姉妹など…!』
本拠地とみられる異空間にクロノスが戻ってくると、雰囲気がかえでにそっくりな女性が彼を出迎えた。
「――お帰りなさいませ、『お父様』」
『――ただいま、我が愛しの桃花よ…』
『桃花』と呼ばれるその女性は、色気たっぷりにクロノスに身を寄せて不敵に笑った。
彼女は一体何者なの…?それにクロノスもまたいつ私達を狙ってくるかわからないし、今後も油断はできないわね…!
というわけで、この物語は今年のかえでのお誕生日記念小説に続くわよ!
あとがき
もう秋も深まって参りましたが…(汗)、今年のあやめさんのお誕生日記念小説が今回でようやく完成しました!
今年の三部作はどんな話にしようかと悩んだ結果、こんな感じになりましたが、いかがでしたでしょうか?
アメリカ最大の都市伝説・タイムトラベラーの「ジョン・タイター」と、セーラープルートの「クロノス」にインスパイアされて描いてみました!
「夏目友人帳」っぽい雰囲気も出してみたかったのですが、途中から「シュタインズ・ゲート」っぽくなっちゃいましたね…。すみません(笑)
今回参考にさせて頂いたリクエストは、最後の家族皆での線香花火のシーンです。ボノボ30様、素晴らしいリクエストありがとうございました!
頂いたリクエストは「大神とあやめの二人で」だったのですが、話の流れ上、すみません…(汗)
子供達の前でもラブラブ仲良しな大神さんとあやめさん夫婦に萌えて頂けたら幸いです♪
あまりここでたくさん書いてしまうとブログで書くことがなくなるので、この辺で…(汗)
次回は今回の続編であります、かえでさんのお誕生日小説を予定しておりますので、お楽しみに!
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