美少女戦士セーラームーン 長編リメイク小説
ACT.6「月のプリンセス、覚醒!」その5



「〜〜ジェ…、ジェダイト…」

「…何を動揺している?裏切り者は命を奪われて当然だろう?」

「〜〜し、しかし…、何も本当に殺すことは…――っ!」


ベリルを制止し、ムーン達に剣先を向けるエンディミオン。

「プリンセスを返してもらおう」

キッとエンディミオンを睨みながらプルートを囲むように守るムーン達。

「誰がお前らなんかに渡すかよっ!」

「…そうか。――ならば全員、消えるがいい…!!」


剣を構えるエンディミオンに構えるマーキュリー達。

「まもちゃん…。〜〜お願いだから元に戻って!これ以上、せつな先生を悲しませないでよ…っ!!」

「うさぎちゃん…」


衛からもらったオルゴールを出し、エンディミオンに見せながら近づいていくムーン。

「思い出して、まもちゃん…!闇の力なんかに負けちゃ駄目だよ…っ!!」

「――黙れ!!」

「きゃああっ!!」

「〜〜セーラームーンっ!!」


エンディミオンにダーク・パワーをかけられてよろけながらも、オルゴールを持って立ち続けるムーン。

「……その冷たい瞳…、ただクイン・ベリルに操られてるだけなんだよね?私にはわかるわ!〜〜だって、いつものあなたは…っ」

衛を思い出し、涙を流すムーン。ムーンの涙がオルゴールに落ち、オルゴールが動いて音色が聞こえ始める。

「オルゴールが…」

「――っ!?」


オルゴールの音色を聞いて、頭を押さえてうずくまるエンディミオン。

「エンディミオン様…!?」

「〜〜う…っ、くぅ…うぅ…っ」

『――うふふっ、エンディミオ〜ン!』

「こ…れは…」


前世がフラッシュバックし、うさぎがセレニティと重なって見えるエンディミオン。

「まもちゃん…!?」

『エンディミオン…!』

「まもちゃん、大丈夫!?」

『愛してるわ、エンディミオン』

(――やっと思い出した…。セーラームーン…、君は…俺の大切な…)


エンディミオンの胸の中の黒水晶が消え、タキシード仮面の姿に戻る衛。

「タキシード仮面様…!」

「衛さん…!」


よろめくタキシード仮面を抱き留めるムーンとプルート。

「ば、馬鹿な…!?〜〜この私の術が解けるなど、ありえん…っ!」

(――何故…、あなたはいつもそうなの…?)


タキシード仮面を抱き起こし、必死に呼びかけるムーンとプルート。

「タキシード仮面様…!」

「衛さん、しっかりして…!」

(〜〜どうすれば私を見てくれるの…?)


怒りで徐々に闇のオーラを全身から放ち、髪を逆立てるベリル。

「ハ…ッ!?〜〜いけない…!」

「今…、全て思い出した…。私の…セレニティは――!」

「〜〜死ねぇぇぇぇ――っ!!」


ベリルが杖を使い、ムーン達の周りに黒い雷を無数に落とす。

「きゃあああっ!!」

すさまじい闇のオーラを放ち、プルートとタキシード仮面を睨みながら、ゆっくり近づいていくベリル。

「エンディミオンは私の許嫁だ…。私の夫となるお方なのだ…!〜〜なのに、お前はまたこの女王から奪い去るつもりかぁ…っ!?」

「〜〜く…っ!やめろ、クイン・ベリル!!」

「黙れぇっ!!〜〜エンディミオンは誰にも渡さあああああ――んっ!!」

「きゃ…!?」


セーラームーンが立っている場所にひときわ大きな黒い雷が落ちてくる。

「セーラームーン!!」

「〜〜うさぁぁ…っ!!」


ムーンをかばって雷に打たれ、スローモーションで倒れるタキシード仮面。目を見開くムーン。ショックを受けるプルート達と狂乱するベリル。

「あ…、〜〜あぁ…!エンディミオン…!私のエンディミオンがぁ…っ!!」

『――セーラームーン、私と強く念じるんだ!』

『――俺は…、愛する君を守りたいんだ。大切な君の傍で永遠に…』

『――負けるな、うさ…!』


衛との思い出を思い出しながら、倒れているタキシード仮面の顔に恐る恐る触れるムーン。

「まも…ちゃん…?」

『〜〜いやああああ〜っ!!エンディミオ――ンッ!!』


ベリルに刺されて殺されたエンディミオンに泣き叫ぶ自分の前世がフラッシュバックするムーン。

「〜〜いやああああああ〜っ!!」

タキシード仮面を抱きしめ、泣き叫ぶムーンの額のティアラが消え、月のマークが浮かび上がる。

「あのマークは…!?」

「セーラームーン…?」


ムーンが流した涙が光り、銀水晶に変わる。

「セーラームーンの涙が…!」

「もしかして、あれが…!?」

「幻の…銀水晶…」


銀水晶を掌で包み、セレニティの姿へと変わるムーン。

「…間違いない。セーラームーンが月のプリンセス…、セレニティの生まれ変わりだったんだ」

「でも、どうして?プリンセスはせつな先生のはずじゃ…!?」

「――っ!?」

「…!せつな…!?」

「せつな先生、大丈夫ですか…!?」


前世がフラッシュバックし、頭を押さえるプルート。

(――そうだ…。私はかつて月の王国を裏切った…〜〜反逆者……)

「真のプリンセスがセーラームーンだと…?クク…ッ、アッハハハハハ…!そんなこと、もうどうでもよい!銀水晶を奪い、エンディミオンを生き返らせてやるぅっ!!」


セレニティに襲いかかるベリル。

「――プリンセス!」

セレニティの前に出て、ベリルの杖をロッドで防ぐプルート。

「私達のプリンセスに指一本触れさせはしない…!――皆、プリンセスを守るのよ!!」

「はいっ!」


プルートと並び、ベリルと対峙して構えるマーキュリー達。

「〜〜おのれぇ…っ!!」

銀水晶がムーン・スティックにはまり、立ち上がってスティックを掲げるセレニティ。銀水晶から放たれた銀色の月光がベリルを包む。

「こ、この光は…!〜〜ぎゃああああああっ!!」

苦しみ、たまらず離れるベリル。

「すごい…!これが銀水晶の力…?」

「なんて強い輝きなんだ…」


気がつき、ゆっくり目を開けるタキシード仮面。

「――セーラー…ムーン…?」

「ハ…ッ!?まもちゃん…!生きてたのね!?」

「フッ、あぁ…。やっと会えたな、セレニティ」


セレニティの涙を指で拭い、微笑むタキシード仮面。

「初めて会った時から…、ずっと感じていたんだ。もしかしたら、俺の探している女の子は君じゃないかと…」

「エンディミオン様…」


タキシード仮面の手を握り、笑顔で涙を流すセレニティ。

「フフ、…だから驚いたよ。セーラームーンとして覚醒させるよう命じられた子が…あのおだんご頭だったんだからな…」

「命じられたって誰に…?」

「それは…、〜〜う…っ!」

「まもちゃん…っ!?」


オルゴールがやみ、元のムーンの姿に戻るセレニティ。

「〜〜せつな先生!まもちゃんが…っ!!」

気絶したタキシード仮面の脈を診て、微笑むプルート。

「大丈夫よ、うさぎちゃん。肉体的にも精神的にも大きな負荷がかかっていたところに急に前世の記憶を思い出したから、疲れちゃったのね」

「眠ってるだけなのね?よかったぁ…」


ムーンの頭を優しく撫でて立ち上がり、マーキュリー達と一緒にベリルと対峙するプルート。

「クイン・ベリル、覚悟するんだな!」

「銀水晶もプリンセスも絶対に渡さないわよ!?」

「〜〜邪魔をするなぁっ!!私は…私はただ…エンディミオンと結婚して、地球国の女王として幸せに暮らしたかっただけなのだ…。〜〜なのに、お前達は何故邪魔をする!?愛する男と結ばれることのどこが悪いのだぁっ!?」

「クイン・ベリル…」

「だとしても、地球の平和を脅かしていいってことにはならないでしょ?」

「――行くぞ!」

「〜〜待って…!!」

「セーラー・プラネット・アターック!!」


七色の光がベリルに当たる寸前で、黒い雷に打ち消される。

「え…!?」

「――だらしがないぞ、クイン・ベリル」


瞬間移動して、ベリルの元へやって来るクンツァイトとゾイサイト。

「お前達…?」

マーズが持っているジェダイトの石を見て、眉を顰めるクンツァイト。

「〜〜く…っ、ジェダイト、間に合わなかったか…」

「フフ、やはり、しくじりましたか…。――そんなことよりもベリル様、あれほど痛めつけていたプリンセスがまさか違う女だったとは…、クククッ!とんだお笑い種ですねぇ♪」

「〜〜ゾイサイト!女王に対して、その口のきき方は何だ!?」

「女王?…フフッ、さっきまでは確かにね。――だが、もう貴様に用はない!」

「ダーク・キングダムの新たな女王よ!ここに…!!」


黒い稲妻で光る夜空。雷をバックに黒水晶の像の体のメタリアが降りてくる。

「な、何あれ…!?」

「まさかあ奴は…!〜〜クイン・メタリア…!?」

「クイン・メタリア…?」

『――久しいのぅ、クイン・ベリル』

「〜〜像が動いて喋ってる…っ!?」

「〜〜一体どういうつもりだ…っ!?ダーク・キングダムの女王はこの私だ!!お前は私に召喚されなければ、この世に降りることもできなかった、ただの悪魔ではないか!!」

『いかにも…。――だが、一たび召喚されれば…』

「う…っ!?」


メタリアに黒い光線を放たれ、膝をつくベリル。

『見ての通り、お前よりはるかに有能だ。――のう、クンツァイトにゾイサイト?』

「はっ!」

「おっしゃる通りでございます」


ひざまずき、メタリアの両手の甲にそれぞれキスするクンツァイトとゾイサイト。

「〜〜そ…、そ…んな…」

「…仲間割れ…かな?」

「〜〜あいつら、自分の主人を裏切りやがったのかよ…っ?」

『フフフ…、この者どもは生まれながらにして、わらわの下僕。お前に忠誠を誓っていると本気で思っていたか?所詮そなたは、わらわの復活と銀水晶を見つける為に甦らせた仮初めの女王に過ぎぬ。クククッ、こやつらはお前のご機嫌を伺いながら馬鹿げた復讐劇に嫌々付き合わされていたのじゃよ…!』

「〜〜くぅ…っ」

『――全ては我らが女王の為に…』


従っていた四天王を思い出して失笑するベリル。

「フ…ッ、フフフフ…、……私は…部下にも裏切られる運命なのだな…」

「〜〜クイン・ベリル…」

「……何か…、ちょっと可哀想かも…」

「――ちょっと、あんたっ!」


立ち上がり、怒りながらメタリアを指差すムーンに驚くベリル。

「いきなり出てきて何さ、偉そうにっ!?確かに、クイン・ベリルの復讐はちょっと度が過ぎちゃったところもあったかもしれないけど…、そういう女心が悪魔のあんたにはわかんないでしょっ!?」

「セーラームーン…」


ベリルに振り返り、苦笑するムーン。

「――ごめんなさい…。さっき全部思い出したんだ。私…、馬鹿だから何て言ったらいいかわかんないけど…、あなたのこと、ずっと苦しめてきちゃったんだよね?でもね、もし…私の愛するまもちゃんが他の人を好きになっちゃったら、許せると思うんだ…。だって、まもちゃんには本当に好きな人と幸せになってもらいたいから…。そうしないと私の愛が嘘になっちゃうでしょ?」

「プリンセス…」


驚き、うつむくプルートとベリル。

『――フフフッ、演説は終わったかのぅ?』

振り返り、メタリアを睨むムーン達。

「あなただけは絶対に許さない…っ!!」

『ほぉ、威勢の良い小娘どもじゃ。――その心臓の強さなら、あちらの世界でも、しばらくは生き残れるかもしれんのぅ…♪』

「あちらの世界ですって…?」


メタリアに目で合図され、剣を掲げ、地面に刺すクンツァイトとゾイサイト。

時空が歪み、空港が消えて、真っ暗な異空間になる。

「〜〜じ、時空が歪んでいる…!?」

「貴様達には今から異次元へ飛んでもらおう」

「安心しろ、こちらにはお前達以外にも生き物はいるからな。といっても、人間を主食とするアンデッドどもだが♪」

「〜〜ア…ッ、アンデッドぉ〜っ!?」

「〜〜冗談じゃないわよっ!!そんな物騒な場所に女の子を置いていくなんて〜っ!!」

「フフフッ、お前達はまた話題になるぞ?『街の平和を脅かしたセーラー戦士、いたたまれなくなり、遂に失踪』とな」

「〜〜く…っ、誤解されたままで引き下がるものですか…っ!」

『ククッ、本当にセーラー戦士というのは活きが良いのが多いのぅ』

「〜〜やめろ、メタリア!」


強力なダーク・パワーを放ち、吹き飛ばされるムーン達。

「きゃあああああ――っ!!」

拍子にムーンの手から銀水晶がはまったムーン・スティックが離れる。

「〜〜銀水晶が…!!」

「もらったぁっ!!」


スティックに手を伸ばしたクンツァイトだが、銀水晶が光り、目が眩んで離す。

「何…っ!?〜〜ぐあああっ!!」

銀水晶がスティックから離れ、タキシード仮面の体内へ消える。

「しまった…!」

『フッ、まぁよい。丁度、伴侶を探しておったところじゃからのぅ♪』


眠っているタキシード仮面を浮かび上がらせ、自分の元へ連れてくるメタリア。

「まもちゃん…!〜〜まもちゃあああ〜ん…っ!!」

タキシード仮面に手を伸ばすが届かず、マーキュリー達と共に異次元へ飛ばされるムーン。

★               ★


目の前が白くなり、しばらくして、ゆっくり目を覚ますムーン。心配そうに自分を覗き込んでいるマーキュリー達が見えてくる。

「セーラームーン…!」

「気がついたのね…!」

「皆…」


目の前に広がる殺風景を見渡しながら、ゆっくり立ち上がるムーン。

「……ここは…?」

「さぁね?砂漠の割には暑くないし…」

「――ここは『月』よ」

「えっ?」


驚き、プルートを見るムーン。

黙って廃墟になった王宮を見つめているプルート。

「つ、月だって…!?」

「ま…、またまたぁ〜♪」

「でも、あれって…!?」

「…へ?」

「〜〜地球〜っ!?ウッソ〜ッ!?」


大きな地球を見下ろすように近くで見て、呆然とするマーキュリー達。

「でも、この窪みは文献で見たクレーターそのものだわ…!」

「じゃあ、本当にここは月なの?奴らは異次元に飛ばすとは言っていたけど…」

「…ま、アンデッドが見当たらないだけいいけどな」

「でも、何で息が出来るのかしら…?」

「月には、かつてたくさんの緑があったから、今もまだそれなりに空気が残ってるんだと思うわ。――月の王国『シルバー・ミレニアム』…。……うさぎちゃん、前世の記憶を取り戻したあなたなら、わかるわよね?何故、この月の王国は滅びてしまったのか…」

「……うん…」


苦笑し、瞳を潤ませながら地球を見つめるムーン。

「――待っていたわ、プリンセス」

ムーンに近づいてくる猫のルナとアルテミス。

「〜〜ね…っ、猫が喋ったぁ〜っ!?」

「…失礼な。僕達はただの猫じゃないぞ?」

「うわぁ〜、こっちの猫さんも喋った〜♪」

「やぁだ、可愛いじゃ〜ん♪」

「〜〜コ…ッ、コラ!肉球を触るなぁ〜っ!!」

『――ふふふっ、ようこそ、『月』へ』


銀色の月光を全身から放ちながら現れ、足元に来たルナとアルテミスを撫でる女性の亡霊に目を見開くムーン。

「あ…、あなたは…?」

「私はクィーン・セレニティ。――セーラームーン、…いえ、プリンセス・セレニティ、あなたの前世の母親です」

「お…、お母…さ…ま……?」


ACT.6、終わり


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