「太正戦隊・サクラレンジャー」その5



薔薇組は城の壁に魔法陣を描くと、フタバーヌとシンジロー君の隠れている玉座の間への隠し通路を出現させて、私達を案内してくれた。

「こちらです…」

扉を開くと、護衛のジャッカー軍団に囲まれたフタバーヌが傷ついたシンジロー君を抱き起こしているのが目に入った。

「姉さん…!シンジロー…!」

「イチロー…!?〜〜馬鹿…!何故、戻ってきた…!?」

「決まってるだろう!?姉さんとシンジローは俺の大事な家族だからだ…!」

「な…っ!?」

「イチロー君、ここに来るまでの間、ずっとあなた達を心配してたのよ?」

「今は内輪もめしている場合じゃない。力を合わせて、この城を…俺達の家を守るんだ…!」

「イチロー…」

「えへへ…、よかったぁ…。母さんとイチロー叔父、仲直りしたんですね」

「〜〜シンジロー、大丈夫か…!?」

「〜〜走って逃げているうちに傷口が開いちまってさ…」

「大丈夫よ、この救急スプレーを使えば…!」


私が戦闘スーツに収納しておいた高性能の救急スプレーを噴射すると、シンジロー君の傷口がみるみるうちに塞がっていった。

「すごいや…!もう痛くありません!」

「本当か…!?――礼を言うよ、あやめ…!」

「ふふっ、困った時はお互い様ですものね!」

「……フン、確かに地球人の高度な文明は認めるがな…」

「――見つけたわよ、フタバーヌ!」


扉を破壊して、サクラレンジャーに変身したさくら達が現れた。

「太正戦隊・サクラレンジャー、参上!」

「〜〜わひゃあ!!見つかっちゃいました〜!!」

「お前が悪の女王・フタバーヌだな…!?」

「おとなしく観念なさい!!」

「〜〜皆、やめて…!」

「あやめさん…!それにイチローさんまで…!」

「〜〜今はフタバーヌと争っている場合じゃないのよ…!山崎が――!」

「――私がどうかしたかな、藤枝隊長?」


山崎がほくそ笑みながら、特殊部隊を連れて、玉座の間に入ってきた。

「〜〜山崎…!」

「上官を呼び捨てにするとは、何と無礼な…。お前にサクラレンジャー除隊命令を命ずる…!」

「〜〜お、おい…!何もクビにしなくったって…」

「ふふっ、あんなに刺客を送ったのに、私達がまだ生きてるものだから焦ってるんでしょう?そこまでして排除したいなんて、よっぽど私達に野望を阻まれるのが怖いみたいね」

「野望って…?」

「皆、聞いて…!山崎はね、出世したい一心で今回の出撃を正当化して企てたのよ。そして、特殊部隊に邪魔な私達と米田長官の抹殺を命令してね」

「えぇっ!?ほ、本当なんですか、それ…!?」

「フッ、戯言を…。反逆罪でブタ箱に送ってやってもいいんだぞ?」

「ブタ箱に行くのはお前の方だ…!!〜〜あやめだけでなく、姉さんとシンジローまで傷つけやがって…!」

「それだけじゃない…。米田長官だって、あなたが殺したも同然よ…!!」

「〜〜何やて…!?」

「ほぉ、長官はお亡くなりになったのか…。それは残念だ…。だが、軍人の彼も戦いの中で死ねて本望だろうな」

「〜〜ふざけないで!!あなたという人は、どこまで性根が腐っているの…!?」

「た、隊長…、米田長官が亡くなったって…本当なんですの…!?」

「えぇ、ここに来る途中、山崎の刺客に宇宙船を襲われてね…。〜〜私達を逃がす為に宇宙船を自爆させて…」

「〜〜そ、そんな…」

「フッ、世話になった上官を陥れようとは、なんと恐ろしい女だ…。――構わん!あやめ共々、皆殺しにしてしまえ…!!」

「〜〜せ、せやけど…」

「〜〜何をボサッとしている!?悪を滅ぼすのがお前らの務めだろう…!?」

「皆、騙されちゃ駄目よ!本当の悪人はこの山崎副長官の方よ…!!」

「〜〜あ〜ん、どっちが本当のこと言ってるデ〜スカ〜!?」

「今の指揮権が誰にあるのか忘れたか?命令に背けば、全員処罰するぞ!?」

「〜〜すみません、あやめさん…!」


さくら達は私とイチロー君を取り囲み、レーザー銃を向けた。

「〜〜皆、やめて…!!お願い!私達を信じて…!!」

「お前達はあやめの仲間だろう!?何故、仲間の言うことを信じようとしない!?俺達の野望を邪魔してきたサクラレンジャーの絆とは、そんなもろいものだったのか…!?」

「イチロー君…」

「〜〜そ、それは…」

「――あやめお姉ちゃんの方が正しい…っ!!」

「え…?」

「山崎のおじちゃん、嘘ついてる!アイリス、心が読めるから、わかるもん!」

「〜〜お、おじちゃんだと…!?」

「心が読めるって…、本当なの、アイリス?」

「…アイリスの霊力は僕らより上だ。他人の心が読めても不思議じゃないと思う」

「フッ、子供のくだらん嘘に翻弄される気か?まぁ、本当ならば米田長官本人に聞ければはっきりするだろうが、亡くなったのであれば、それも無理――」

「――アイリスの言うことは正しいぞ」


まさかの声に、憎らしいほど冷静だった山崎が動揺した。

「へへっ、可愛い子供達を残して、まだ死ねるかよ…!」

亡くなったはずの米田長官が入ってきて、陽気にピースサインしたのだ。

「〜〜な…っ、何故…!?」

「米田長官…!」

「生きてたんだな…!」

「へへっ、自爆スイッチを押した途端、床が抜けちまってよ。まっさかさまに落ちていって、運良くモギリマンモスの背中に落ちてな。けど、そのマンモスが俺を餌にしようとしたからよ、急いで逃げたんだ。そんで、気づいたら、知らねぇうちに城に着いてたってわけだ」

「すっげ〜!漫画みたいな話だな…!」

「ご無事で何よりでした…!」

「おう、お前らもな」

「〜〜ちっ…、しぶといじじいめ…」

「――山崎、お前の悪事もここまでだ。監視カメラの映像と肉声は椿と由里が全宇宙に配信してくれたぜ…!」


と、米田長官は通信機の小型モニターで、配信中の映像を見せた。

特殊部隊に命令して米田長官を襲撃させている様子や、優れた機械の技術で防犯カメラや警報装置を操作している様子…。

山崎の悪事全てが記録されていた。

「〜〜馬鹿な…!?防犯カメラは全て誤作動させたはず…」

「残念だったな。お前のような内部での裏切り者が現れた時の為に、あらかじめジャンポールの目に小型カメラを設置しておいたんだ。まぁ、仕方ねぇか。これは長官である俺しか知らねぇ機密事項だからな」

「〜〜ま、まさか…、あんなバカぬいぐるみにそんな物が…」

「わ〜い!ジャンポール、えら〜い!!」

「殺人未遂だけじゃねぇ。オオガミ星の資源奪取計画にもお前さんは携わっていたそうじゃねぇか」

「〜〜何…!?」

「フッ、こんな辺境のちっぽけな星、好きにして何が悪い?力のある星に従うのが弱い星の宿命だろう?人間の世界と同じさ」

「〜〜だからって、その星の人達を皆殺しにしていいんですか…!?」

「〜〜貴様ぁっ、絶対に許さんぞ…!!」

「ふふっ、四面楚歌ね、山崎副長官」

「これでブタ箱行きは決定的だな…!おとなしく投降するんだ…!」

「〜〜認めん…!認めんぞ!!〜〜私が負けることなど、ありえんのだぁっ!!」


山崎は壊れたように笑いながら、懐に隠し持っていたスイッチを押した。すると、オオガミ星の上空に、全てを飲み込む宇宙の黒い渦が出現した。

「あれは…、まさかブラックホール…!?」

「〜〜地球人の技術って、あんなものまで作り出せるんですか…!?」

「ふははは…!私の技術なら、人工的に作り出すことなど造作もないわ」

「〜〜山崎はん、優れた機械の技術をなしてこんなことに使うんや…!?」

「ククッ、己の力を私利私欲の為に使って何が悪い?それが優秀な才能を持って生まれてきた者の特権というものだ…!」


ブラックホールはオオガミ星に転がっていた100s以上ある巨大な岩をいとも簡単に舞い上げて吸いこんでいく。フタバーヌ城も少しずつブラックホールに吸い込まれ、動き始めた。

「〜〜し、城が…!」

「クククッ、全員城もろとも吸い込まれるがいい…!サクラレンジャー諸君よ、命を捨てて、オオガミ星人を葬った、その犠牲と偉業は後世まで語り継がれることだろう。そして、お前らの指揮を執った私は英雄として、地球…いや、全宇宙の者達から崇められるのだ…!」

「〜〜てめぇ…、人の命を何だと思ってるんだ…!?」

「〜〜日本の男、やっぱり最低デ〜ス!!」

「何とでも言うがいい。やはり、最後に笑うのはこの私なのだ…!」

「〜〜待ちなさい…!」


山崎はマリアのレーザー銃の光線をよけ、窓から飛び降りた。そんな彼を手下の特殊部隊が操縦する小型宇宙船が受け止め、乗せた。

私達は追いかけようとしたが、ズズズズ…と城がブラックホールに吸い込まれるスピードがアップし、バランスを崩して転倒した。

「〜〜く…っ、このままでは、吸いこまれるのも時間の問題ですわ…」

「アイリス達もお城から避難すればいいんじゃない…!?」

「あかん…!こんなどでかい城でさえ吸いこまれそうになってるくらいや。人間のうちらなんて一瞬で吸いこまれてしまうさかい…!」

「〜〜じゃあ、どうするデスカ〜っ!?塵になるまで宇宙をさまよい続けるなんて、私の死に方としてふさわしくないデ〜ス!!」

「とにかく、何とかして、あのブラックホールを消さないと…!」


こうしている間にも、城は吸いこまれていく。山崎は逃げていく…。

「皆を…この城を…、――失くしてたまるものですか…っ!!」

「あやめ…!!」


私は大切なもの全てを守りたい一心で窓から飛び降り、逃げようとしていた山崎の宇宙船の窓を割って、侵入した。

「〜〜しつこい女だ…!やってしまえ!!」

「はあああああっ!!」


私はサクラレンジャーのソードとレーザー銃で特殊部隊の隊員達を倒し、宇宙船の操縦装置を破壊した。コントロール不能になった宇宙船は激しく揺れ、私と山崎を振り落とすと、ブラックホールに吸いこまれていった。

「〜〜ちっ、どこまでも邪魔しやがって…!」

「あなただけは許さない…!私の命に代えても、あなたを倒してみせる!!」


私が逃げようとした山崎にタックルすると、私達の体が舞い上がった。そして、そのまま私達はブラックホールに吸い込まれていく。

「〜〜放せぇっ!!フフッ、このままでは、お前まで死ぬことになるんだぞ!?」

「〜〜あなたと無理心中なんて嫌だけど、地球とオオガミ星の為ですもの…」

「〜〜やめろぉぉっ!!放せ、貴様ぁっ!!」


〜〜ごめんね、イチロー君…。ずっと一緒にいるって約束、守ってあげられなくて…。

――パシッ!

その時、大きくて力強い手が私の腕を掴んだ。

「諦めるな、あやめ…!!俺がついているぞ…!!」

イチロー君が窓から身を乗り出し、ブラックホールに吸い込まれないよう、私の腕を引っ張っていたのだ。

「〜〜駄目よ、イチロー君…!放しなさい…っ!!」

「〜〜く…っ、絶対に放すものか…!だって、俺達は夫婦じゃないか…!」

「イチロー君…」


ブラックホールに近づくにつれて、いっそう引力が強くなる。一瞬でも気を抜けば、すぐに吸い込まれてしまうだろう。

だが、イチロー君の腕も自然の力の前には限界があった。

「〜〜く…っ!うわあああ…!!」

「きゃあああ…!!」


一緒に舞い上がっていく私とイチロー君の腕を、今度はフタバーヌとシンジロー君がそれぞれ窓から身を乗り出して、掴んでくれた。

「イチロー叔父、絶対に放しませんからね…!!」

「イチローと無理心中なんてさせないよ…っ!!」

「姉さん…、シンジロー…」

「〜〜くっ、城の方もそろそろ限界みたいね…」

「――そうだ…!サクラロボで城を止めるんだよ!!」

「はぁ!?ここは地球じゃありませんのよ!?来るはずないではありませんか」

「そんなの、やってみねぇとわからねぇだろ!?――なぁ、長官!?」

「カンナの言う通りだ。どうせ死ぬなら、やれることはやって死のうぜ!」

「そうですよね…!――サクラロボ、発進!!」


さくら達が変身ペンを掲げると、地球のサクラレンジャーの基地から白、ピンク、紫、黒、黄、緑、赤、ローズピンク、青の9機のジャンポールの小型ロボットがジェット噴射で飛んできた。

「お〜、よう来たな〜!こっちやで〜!!」

「ほらみろ、やっぱり来たじゃねぇか!」

「〜〜フン…、運が良かっただけですわ」

「――合体!サクラロボ!!」


9機の可愛いジャンポール達が合体して、格好良いロボットに変形した。

「わぁ〜、何度見ても格好良いですね〜!実は僕、サクラレンジャーのファンなんですよね〜、えへへっ!」

「〜〜ガーン…!!ひどいぞ、シン君!!母のロボットだって格好良いだろう!?」

「〜〜あ、ご、ごめんなさい、母さん…!」

「――皆、行くわよ!」

「了解!」


さくら達が乗り込んだサクラロボがブラックホールに吸い込まれそうになった城にタックルして、壁となって動くのを止めた。

「〜〜ふぅ〜、なんとか止まりま〜したネェ〜…」

「時間稼ぎにはなるけど、根本的な解決にはなってないね…」


〜〜やっぱり、あのブラックホールを消さないと駄目みたいね…。

「――皆、ありったけの霊力をブラックホールにぶつけるのよ!大きなエネルギー同士が反発し合えば、周辺のエネルギーの動きが変わって、ブラックホールが閉じるかもしれないわ!」

「そうか…!さすがあやめさんだぜ!」

「〜〜けど、アイリス達、お城を押さえているだけで精一杯だよぉ…!」


すると、サクラロボが押さえていた城の重みが少し和らいだ。隣でフタバーヌの女性型の黒い巨大ロボが押さえるのを手伝ってくれていたのだ。

「代わりに私のロボが押さえている!お前達は早くブラックホールを…!!」

「ありがとう、フタバーヌ…!」

「――行くわよ、皆!」

「了解!」


サクラロボの操縦席に座っているさくら達は瞳を閉じ、波長を合わせながら、それぞれ霊力を操縦パネルに込めていく。

「今だ…!」

「――サクラ・ブロッサム・アターック!!」


8色のそれぞれの衝撃波が一つに重なり、ブラックホールにぶつかった。隊員達の霊力エネルギーが注ぎ込まれ、ブラックホールが塞がっていく。

「その調子よ、皆!」

「〜〜そんな馬鹿な…!?科学理論上、ブラックホールを消滅させるには膨大なエネルギーが必要のはず…。それをあんな小娘達だけで出せるはず…」

「あの娘達なら、私はやってくれると信じてたわ。自分の部下達も信用してあげられない人が偉そうに上官ぶらないでもらいたいわね…っ!」


私に蹴られて、山崎は手を放したが、すぐに私の足首にしがみついた。

「〜〜貴様ぁっ!!――ぐわあああっ!!」

私にナイフを刺そうとした山崎にイチロー君が衝撃波を放った。

「宇宙をさまよって、頭を冷やせ…!!」

「孤独なあなたには、地球でもオオガミ星でもない、ブラックホールがお似合いだわ…!!」


私とイチロー君が引き金を引いたレーザー銃がとどめとなり、山崎は私のアンクレットをちぎりながら、足から手を放した。

「〜〜そ、そんな…!うわああああああ…!!」

山崎が吸いこまれた直後にブラックホールは完全に閉じ、消えていった。

「やったわ…!!」

「わ〜い!やりましたね〜、母さん!!」

「あはははっ!やったな〜、シン君!!」

「〜〜きゃああっ!?」


抱き合って喜んだフタバーヌとシンジロー君に手を離され、私とイチロー君は城の庭に落ちた。

――ドサ…ッ!

イチロー君は私を抱きしめ、下に先に落ちてかばってくれた。

「だ…、大丈夫、イチロー君…!?」

「はは、これくらい大したことないよ。それより、君が無事でよかった」

「イチロー君…。〜〜けど、せっかくくれたアンクレットが…」

「そんなもの、またいつでも作ってやるさ。そして、ちゃんとプロポーズし直すよ」

「イチロー君…」


私とイチロー君がキスすると、星のかけらがキラキラ輝きながら、私達が寝ている城の庭に舞い降りてきた。

「きれ〜い…!」

すると、不思議なことに燃えて灰になってしまった花達が一本だけ残った花を中心に同心円状に蘇っていき、全ての花が元通り綺麗に返り咲いた。

「これは…!もしかして、星のかけらの力なのか…?」

「ふふっ、私達の愛が奇跡を起こしたのかもね…!」

「はは…、そうだな」


星のかけらに降り注がれながら、私とイチロー君はもう一度唇を重ねた。

「ヒュ〜♪みせつけてくれるねぇ〜、お二人さん!」

「ヒュ〜ヒュ〜♪きゃはははっ!」

「――あっ、見て…!」


ブラックホールがあった場所から太陽の光が差し込んで、オオガミ星の荒れた大地を照らし始めた。

「きっと、山崎はんが無理矢理ブラックホールを作ったせいで、宇宙エネルギーのバランスが変わって、この星の軌道も変わったんや…!」

「なるほど。それで、太陽の光が届くようになったのね…!」

「ふふっ、あの男も一つだけ良いことしていきましたネ〜」

「これで、この星も地球と同じように自然と動物が共存できる環境になるね」

「太陽…か。フフ…、こんなに心地良い、温かな光だったとは…」

「フタバーヌさん、先程はありがとうございました…!あなたの助けがなかったら、きっと…」

「そ、そうかい?いや〜、地球人にしては、あんた達もよくやったと思うよ!ハッハッハ〜♪」

「ハハハ…、母さん、おだてに弱いからなぁ…。――けど、皆さんも格好良かったですよ!さすがサクラレンジャーですね…!!」

「あははっ、そうか?いや〜、照れるな〜!」

「後で、サクラロボに乗らせてもらってもいいですか…!?」

「おう、もちろんだぜ!」

「〜〜ちょいと、カンナさん…!?勝手にそんなこと――」

「堅苦しいこと言うなよ!――な〜、シンジロー♪」

「ね〜、カンナさん♪」

「ふふっ、それじゃあ、後で操縦の仕方、教えてあげますね!」

「本当ですか!?ありがとうございます、さくらさん…!」

「あ〜ん、シン君が乗るんだったら、母も乗りたいぞ〜!!」

「〜〜こ…、この人達、本当に悪役なんでしょうか…?」

「ハハハ…!まぁ、いいじゃねぇか。仲良きことは美しき哉。――そんじゃあ、仲良くなったところで、いつものやつ、やるぞ〜!」

「あっ、あれですね!?僕、前から一度やってみたかったんですよね〜!」

「あやめさ〜ん、イチローさ〜ん、いつものやつ、やりますって〜!」

「いつものやつ…って何だ?」

「ふふっ、私の真似をすればいいわ。――それじゃ、いくわよ!せーの…――勝利のポーズ、決めっ!」

「〜〜き…、決めっ!」

「ふふふっ!イチロー君ったら、照れちゃって可愛い!」

「〜〜こ、こんなポーズ取らされたら、誰でも照れるだろう…!?」

「あはははは…!」


こうして、フタバーヌ達オオガミ星人の地球侵略の日々は終わりを告げた。

その後、地球とオオガミ星の親交は徐々に深まっていった。地球から派遣された植林事業のボランティアと太陽の恵みによって、オオガミ星が再び緑溢れる美しい星に戻れる日もそう遠くはないだろう。

地球人もオオガミ星人達との交流を最初は拒絶する者が多かったが、イチロー君達の人柄の良さをだんだん理解して、興味を持ってくれるようになったみたいで、少しずつだが、着実に彼らを受け入れてくれる人達が増えているという。近い将来、もっと科学技術が発達したら、一般市民達もオオガミ星へ簡単に行けるようになるだろう。

そうそう、それから一つビッグニュースがあったのよ!

「――この子がシンジロー…だね?」

「母さん…、この人が僕のお父さん…なんですか…!?」

「あぁ、私達親子を捨てた最低な…な。……今さら何の用だい?シン君を認知しないつもりなら、慰謝料をうんと請求してやるよ…!?」

「その必要はない。――結婚しよう…!それを言いに来たんだ」

「え…?」

「資源奪取計画を引き上げる時、オオガミ星を死の星にしてしまった僕は君に合わせる顔がなくて、黙って帰ってきてしまった…。でも、あれから僕は、ずっと君とシンジローのことを考えて、後悔してたんだ。それで、もし、もう一度会えることがあったら、その時、改めて結婚を申し込もうって…」

「あんた…」

「よかったですね、母さん…!」

「〜〜もう…勝手にいなくなるなよ…?」

「あぁ、わかってるよ…」


悪の女王・フタバーヌと地球人の研究員の電撃入籍は世間を騒がせた。『ビビビ婚』ならぬ『ピピピ婚』なんて流行語もできてしまったくらいにね!

ふふっ、もちろん、私とイチロー君も負けてないわよ…!

「――太正戦隊・サクラレンジャー、参上!」

私はイチロー君と結婚後も、サクラレンジャー・ホワイトとして隊長任務を続けることになった。

「――ご苦労様。今日も見事な戦いぶりだったよ」

「ふふっ、オオガミ副長官の的確な指示のお陰ですわ」


イチロー君は高い戦闘・指揮能力を米田長官にかわれて、副長官に就任した。ふふっ、本当は寿除隊してもよかったんだけど、旦那様と一緒の職場だと、一緒にいられる時間が増えるしね…!

そして、任務が終わると、一緒にオオガミ星のフタバーヌ城に帰宅する。

フタバーヌお義姉様は結婚して、シンジロー君と一緒に地球の旦那様の家で暮らすようになったから、今はこの広い城に私とイチロー君二人っきりで暮らしているの。

ふふっ、ジャッカー軍団が家事全般をしてくれるから、とても助かってるのよね♪

「〜〜キ〜ッ!何よ、あの女っ!!」

「〜〜私達のイチローちゃんを独り占めするなんて、許せないわ〜っ!!」


〜〜時々、薔薇組から妙な殺気も感じるけど、毎日がとても楽しくて、幸せよ!

「――あやめ、これを…」

イチロー君は星のかけらでできた指輪を私の左手の薬指にはめてくれた。

「緑が増えてから、星のかけらが採掘しやすくなったんだ」

「ふふっ、綺麗ね…。どうもありがとう…!とっても嬉しいわ」


星のかけらのアクセサリーは、オオガミ星人にとって、永遠の愛を誓う証…。イチロー君は片膝をついて、私にはめてくれた指輪にキスをした。

「これからも君のこと、そして、地球のこと、もっと色々教えてほしい」

「ふふっ、もちろんよ…!私もあなたのこと、オオガミ星のこと、もっともっと知りたいわ」


ずっとずっと彼の傍にいたい。

もっともっとお互いのこと、お互いの星のことを知りたい。

「――愛してるよ、あやめ…!」

「――愛してるわ、イチロー君…!」


そして、もっともっとキスして、ぎゅってハグして、愛し合っていきたい。

一緒に笑って、一緒に泣いて、一緒に戦いながら、ずっとずっと二人で…ね!

終わり


あとがき

あやめさんヒロインの短編新作は、帝國軍人様からリクエストを頂きました「あやめさんヒロインでの戦隊ヒーロー物」です!

「大神さんの悪役が見てみたい」(よっぴ様より)「セクシーな拷問をされているあやめさんが見たい」(ボッチャマ様より)などのリクエストとミックスさせてみたのですが、いかがでしたでしょうか?

大神さんとあやめさんがちょっとキャラ崩壊してますね…(笑)

まぁ、Sな大神さんとMなあやめさんのラブシーンもたまにはいいかな〜と思いまして☆

それから、今回は宇宙とエコもテーマに取り入れて、ストーリーをSFっぽく、ちょっと壮大にしてみました!

また、『太正浪漫グラフ』に書かれていた、「あやめさんが花組の隊長だった」という設定と、「ミロクが叉丹に恋愛感情を持っていた」という、ゲーム本編ではボツになってしまった設定を今回、用いてみました。

この設定も魅力的なんですよね〜!あやめさんの戦闘服姿が素敵で萌えます…!!

機会があったら、話が作り替えられる前の設定での『真・サクラ大戦』の小説も書いてみようかなと思います!

それから、お待たせして申し訳ありません!大神さんの女装編の短編もあと少しで完成するので、もうしばらくお待ち下さいね…!


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